KPMGジャパンは顧客体験価値を向上させる6つのテクノロジーについて調査を実施した。企業による取り組みの現状を明らかにし、消費者が求める水準との差分を見つけた上で、国内の小売企業が目指すべき購買支援の在り方を考察している。
KPMGジャパンは国内小売業の分野を対象に、顧客の体験価値を向上させる6つのテクノロジーについて、売り手である小売業者と、買い手である消費者の両方を対象にアンケートやインタビューによる調査を実施し、結果を公表した。
調査対象にしたテクノロジーは以下の6つである。
それぞれのテクノロジーを用いた購買支援ツールやサービスでは、企業側と消費者側で導入状況の水準に開きがあることが分かった。実店舗における購買の利便性を高めるテクノロジーのうち、企業の導入状況よりも消費者の活用状況が上回ったテクノロジーの1つが「セルフ化や無人店舗」だ。導入中の企業が35%なのに対し、活用済みの消費者が53%という結果だった。セルフレジや無人店舗はニーズが高い一方、初期費用の負担の大きさ導入の壁となっている。KPMGジャパンは、売り上げ増加、省人化、業務効率化の観点からも採算性の検証が重要だと指摘している。
一方、企業側の導入状況に比べて消費者への浸透が進まないテクノロジーの1つが「OMO(Online Merges with Offline)ロイヤルティプログラム」だ。OMOロイヤルティプログラムとは、会員登録に基づいて属性、購買、嗜好に関する情報を把握し、購買、関連行動へのインセンティブを提供よることでファンを増やす取り組みだ。その中の「店舗への来店や商品購入等でポイントが貯まる会員システム」は、導入済みの企業が34%だったのに対して、活用したことがあると回答した消費者は19%と大きく開きがある。消費者がポイント付与による単純な割引に以前ほど興味を示さなくなり、プログラムの差別化が難しくなっていることなど、市場トレンドの変化が背景にあるとKPMGジャパンは分析している。
顧客の好みや行動データをリアルタイムで収集し、顧客の要望やニーズに応じて製品、サービス、顧客体験をカスタマイズするハイパーパーソナライゼーションは、データの活用範囲の広がりにより着実に浸透している。一方で「パーソナライズド広告・販促」は63%の企業が取り組む一方で、監視されているような嫌悪感があることや精度に不満を感じることから、53%の消費者がネガティブな印象を抱いていることが分かった。KPMGジャパンはハイパーパーソナライゼーション実現へは、プライバシー保護のさまざまな観点からの配慮と、それらを対応するための人材や知識が必要不可欠だとコメントしている。
今回、企業へのアンケート調査は小売業および消費者への直販を行うメーカー売り上げ10億円以上の企業104社を対象に、郵送とインターネットを用いて2024年5月に実施した。企業へのインタビュー調査は国内大手小売業における経営企画またはIT企画部門に所属する専門家11人を対象としている。また、消費者アンケート調査は15歳から69歳までの消費者4000人を対象に、2024年3月にインターネットを通じて実施している。
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