X(旧Twitter)が広告主に対してプラットフォームへの広告支出を強制しようとする法的措置に対して多くの批判がある。だが、どうやらそれは一定程度の効果が出ているようだ。
Xは最近、広告主企業による非営利団体のGARM(責任あるメディアのための世界同盟)に対する訴訟で名指ししたブランドの一つであるUnileverと、新たな広告パートナーシップに関する合意に達したことを発表した。これにより、Unileverは事実上、訴追対象から外れたことになる。
つまり、Xは現在もGARMおよびいくつかの大手ブランドを相手に訴訟を進めているものの、Unileverに対しては訴訟を緩和しつつ、同社からの広告支出を確保したことになる。
Xは次のようにポスト(外部リンク/英語)している。
Xは、Unileverとの合意に至り、プラットフォーム上でのパートナーシップを継続できることを大変喜ばしく思っています。本日のニュースは、エコシステム全体のソリューションの第一歩であり、業界全体のさらなる解決策を期待しています。
Xが広告主を訴える行動を取ったことを多くの人は笑うが、どうやら一定の効果はあったようだ。
振り返ると、2024年の8月にXは、GARMおよびその調整機関であるWFA(世界広告主連盟)と、GARMに参加するいくつかの企業を相手に法的措置を講じた(関連記事:「Xに訴えられた広告主団体が活動休止 イーロン・マスク氏の“戦争”の行方は?」)。Xの主張によれば、「米国で最も人気のあるソーシャルメディアプラットフォームの一つに対する敵対的な広告主の集団ボイコット」が行われているという。
Xは、GARMがブランドに対して広告を出さないように助言したのはブランドセーフティーを理由としたものではなく、政治的イデオロギーに基づくものであるというものだと考えている。そして、GARMのメンバーは米国の広告支出の90%を占めており、GARMが影響力を持ち、プラットフォームをボイコットするように促すことで、事実上どんな言論でも沈黙させることができるというのがXの主張だ。
そう断定するだけの証拠はない(GARMは、その勧告はアプリの変更されたモデレーション基準に関する懸念に基づいていたと主張するだろう)。GARMは長年、ヘイトスピーチなどの問題に対してプラットフォームを適切に管理するよう促してきた組織とみなされてきた。しかし、XはGARMが最も強力なメンバーの意向に基づいて行動しており、外部に公表しているブランド安全性の目標に基づいていないとする訴訟を進めている。
Xの訴状で名前が挙げられた他の大手ブランドには、MarsやCVS Health、Orstedがある。
UnileverがXとの新たな契約を締結したという事実は、大手ブランドの間でこの訴訟に対する一定の懸念があることを示唆している。また、Xの訴状では、オンライン広告プラットフォームの成否を左右する市場原理について、いくつかの関連する指摘がなされている(言い換えれば、ブランドセーフティーを提供しないプラットフォームは、GARMが存在するかどうかにかかわらず失敗するということだ)。
陪審員がこの訴訟をどのように判断するかはまだ分からないが、GARMは判決が出るまで全ての活動を停止し、マスク氏とXに対する弁護費用を集めることに専念している。
最終的な結果によっては、多くのヘイトスピーチや虐待がアプリ内に残ることを許しているとされるXのモデレーションアプローチへのさらなる挑戦が制限される可能性がある。しかし、広告がいい結果を出すにしろ、攻撃的なコンテンツに隣り合って表示されているにしろ、それを見てXのプロモーションに支出するかどうかの決定を下すことができるのは広告主だ。
現在、Xの広告収入はマスク氏による買収前と比べて約50%減少しており、ユーザー数も減少し続けている。これは、マスク氏がX上で対立的な政治的意見を拡散し続けていることが主な原因だ。広告主団体の勧告を訴訟によって抑えることは、Xの広告ビジネスを立て直すための重要な一歩となるかもしれない。だが同時に、それがXの大逆転への道を開くことになるというなら、驚くべきことだ。
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