Brazeは、2024年9月24日に開催された「Forge 2024」において、大幅な製品アップデートを発表した。AIエージェント機能の強化で顧客エンゲージメントのさらなる強化とマーケターの業務効率化を同時に実現させる。
顧客エンゲージメントプラットフォーム「Braze」を提供するBrazeは、米ラスベガスで2024年9月23〜25日(米国時間)に開催した同社の年次カンファレンス「Forge 2024」において、データとAIによる製品アップデートを発表した。
「Be Absolutely Engaging」をモットーに掲げるBrazeは、マーケターがあらゆるデータソースからデータを収集し、リアルタイムで大量の顧客とクリエイティブにエンゲージメントを築くためのプラットフォームを提供する。いわば「ハイパーパーソナライゼーション」を具現化するためのソリューションと言えるだろう。
Brazeには、クロスチャネルのメッセージングを基軸に顧客一人一の行動に基づいたコミュニケーションを大規模に展開できる強みがあり、Gartnerの「2023 Magic Quadrant for Multichannel Marketing Hubs(2023年のマルチチャネルマーケティングハブ分野のマジッククアドラント)」でリーダーに選出されている。金融、メディア・エンターテインメント、小売業、旅行・ホテル、外食産業など世界中で数多くの成果を出しており、日本でもメルカリや楽天、DeNA、タイミー、YAMAPなど、続々と導入企業が増えている。
プラットフォームの核となるのは「Braze Canvas」だ。Canvasは一枚の紙に自由に書き込むような直感的なUIを備えており、ドラッグ&ドロップによってメッセージの作成、カスタマージャーニーのオーケストレーション、A/Bテストなどを単一画面上で行うことができる。これを使うことで、マーケターは実現したいキャンペーンシナリオをノーコードで作成できる。
作成したシナリオの最適化は独自の「BrazeAI」により支えられる。AIの意思決定の基点となる「Braze Data Platform」にはBraze内のデータが集約され、CDPなどに蓄えられた顧客データとも連携する。
今回発表されたBrazeの主なアップデートは以下の通りだ。
BrazeAIを使った新たなエージェント機能(コードネーム:Project Catalyst)を提供する。マーケターはキャンペーンの内容とターゲットオーディエンスおよび目標を設定すると、BrazeAIのエージェントがその体験に必要な各コンポーネント(件名やメッセージのトーン、提供内容、チャネルの組み合わせ、最適なタイミングなど)のバリエーションを生成し、消費者一人一人に個別の体験を作り出してくれる。Project Catalystの機能はBraze Canvasに統合される。
例えば、一定期間購入のない顧客に対して、AIはブランドガイドラインを理解しながら、個々の嗜好に合わせて目を引くコンテンツでログインを促すことができる。月々の購入量の減少に応じてオファーの内容を変えてメッセージを出すといったことも可能だ。
Project CatalystはCanvasと統合して利用可能になり、人の手で作ったジャーニーをAIで最適化させる。つまり、人とAIのコラボレーションを実現するということだ。Project Catalystは2026年の上半期にβ版の提供を予定している。
今回、Brazeは2つの新しいアシスタント機能として「Liquid Assistant」と「Message Template Assistant」を発表した。
Liquid Assistantはチャット形式でメッセージコンテンツをパーソナライズするために必要なLiquid(Shopifyの独自開発言語)を生成するツールだ。これまでβ版として提供されていたものがGA(一般公開)となる。これを使うことで、パーソナライゼーションのコンセプトを迅速かつ容易にLiquidのロジックに変換できるようになる。
Brazeは、Canvasでこれまでに生成されたカスタマージャーニーの既存の事例を活用して、カート放棄対策やユーザーの休眠防止などのテンプレートを素早く作成できる「Canvas Templates」を用意している。自由度の高いUIはCanvasの魅力だが、何もないところからジャーニーを設計するのはそれ自体ハードルが高い作業だ。シンプルなテキストプロンプトでテンプレートを簡単にセットアップできることで、マーケターの工数は大幅に減る。
また2025年度第3四半期にβ版提供を予定している「Message Template Assistant」は、BrazeAIがブランドに合ったメッセージテンプレートを素早く簡単に自動生成するものだ。まずはHTMLメール作成から始め、他のチャネルにも拡大していく予定だ。
Braze Data Platformは、データの統合、活用、配信を効率化してBrazeを活用しやすくするために設計された、コンポーザブルなデータ機能だ。マーケターがIT部門に大きく依存せずに自力でデータ活用できるよう支援する。
Braze自身がCDP(顧客データプラットフォーム)の機能を持つのではなく、主要なCDPやDWH(データウェアハウス)とリアルタイムかつダイレクトに統合することにより、ソースに関係なくファーストパーティーデータを集約するプロセスを簡素化するのがBraze Data Platformの特徴だ。これは2022年にBraze Cloud Data Ingestion(クラウドデータ取り込み:CDI)を立ち上げたことで実現した。
今回、これまでβ提供していた「AWS S3」統合のGAと「Microsoft Azure」統合を2025年度第4四半期にβ提供開始することを発表。また、SnowflakeやDatablicksなどのDWHパートナーと連携して、各社DWHを使用してゼロコピーで新しいセグメントを作成し、オーディエンスを構築することができるようになった。
データをより正確に管理する上で課題となりがちなプロファイルの重複を解消するための機能も発表された。Webサイトでゲストとしてチェックアウトした後にアカウントを作成したり、アカウントを持っているもののパスワードを忘れてしまい、再度ゲストとしてチェックアウトしたりした結果、プロファイルが重複してしまうことはよくある。これを放置し、一人の顧客が別人と認識されれば、顧客は難度も同じメッセージを受け取って体験を損ねることになるし、ブランドにとっても非効率だ。そこでBrazeは、プラットフォーム上で重複プロファイルを削除し、API経由で自動的にユーザープロファイルを統合できる「Identity Resolution」機能を年内にβ版提供する予定だ。消費者がさまざまなデジタル接点でブランドと関わる際に正確な顧客プロファイルを維持することで、各顧客により関連性の高い体験を提供することが可能になるだろう。
従来のメールやSMSなどに加えて連携可能なチャネルを拡大する。日本の消費者になじみの深いLINEにも対応する(2025年度第3四半期にGA予定)。RCSビジネスメッセージング(RBM)も使えるようになる(2024年度後半にβ版を提供予定)。この他、欧米で利用者の多いWhatsAppにおける動的画像、クリックトラッキング、コマースサポートなどの機能強化も発表した。
「マーケターとして成功するのに今ほど素晴らしい時代はない」
Brazeの共同創設者兼CEOであるビル・マグヌソン氏は「Forge 2024」オープニングのキーノートスピーチをそう切り出した。
進化するファーストパーティデータとさまざまなチャネルを利用して、マーケターはより価値のある顧客体験をリアルタイムに提供できるようになる。AIの力で実現するさまざまな刷新は、顧客の体験向上と同時にマーケターの体験向上にも寄与するものだ。エンパワーされ、クリエイティビティー(創造性)を開放されたマーケターの仕事がどう変わるのか、シリーズでレポートする。
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