Liquid Death幹部が語る カオス過ぎる新興ブランドが大手に潰されないための戦い方Marketing Dive

「缶入りのただの水」を大ヒットさせた気鋭の飲料ブランドLiquid Death。同ブランドでクリエイティブ担当バイスプレジデントを務めるアンディ・ピアソン氏が、拡大するハイドレーション市場において消費者の喉の渇きをどのように"殺害"しているかを語った。

» 2024年09月23日 08時00分 公開
[Chris KellyMarketing Dive]
Marketing Dive

 「渇きを殺せ(Murder Your Thirst)」という過激なメッセージにエッジの利いた商品デザイン、そしてライバルを煽る斬新なマーケティング手法によって、ただの缶入り天然水を大ヒット商品に育てたLiquid Death。クリエイティブ担当バイスプレジデントを務めるアンディ・ピアソン氏は、評価額14億ドルになった同ブランドが、競争が激しくなる市場の中でどのように戦っているかを語った。

本稿は「『缶入りのただの水』を評価額14億ドルのビジネスに育てたLiquid Deathのヤバいマーケティング戦略」の続きです。

バカ高い広告に頼らないでも、売る方法はある

 以下のインタビューは、内容を明確かつ簡潔に伝えるため、編集を施している。

―― 最近では、大手炭酸飲料ブランドも含めて多くの企業がハイドレーション(水分補給)市場に参入してきています。このことがLiquid Deathのマーケティングや差別化戦略にどう影響すしているのでしょうか。

アンディ・ピアソン(以下、ピアソン) 私たちのマーケティングは実際の消費者の声に基づくものです。最初は皆「アルコールの代わりとして素晴らしい」と話していたのが、今では、「高校生の息子がエナジードリンクに中毒していましたが、今はLiquid Deathを愛用しています」といったメールをもらうようなことが増えました。本当に素晴らしいことです。

 特に、わずか20カロリーのフレーバー付き炭酸水を発売してからは「毎日炭酸飲料を缶で何本も飲んでいたが、これなら砂糖が4グラムしか入っていないし、はるかに健康的だ」という声をよく聞くようになりました。

 (一般的な炭酸飲料に含まれる)砂糖の量を可視化した動画を公開した際、多くの人々が強い反応を示しました。派手に宣伝されている製品やが私たちにどのように押し付けられているのか、立ち止まって見直すことに対する需要が高まっているのです。

 私は1990年代に育ちましたが、当時一番クールだったのは炭酸飲料ブランドでした。私たちは人々が消費するもの、そしてマーケティング全般に対する考え方を変えようとしています。この業界に関わる私たちも多少なりともその責任を感じており、それを背景に、より広い会話をするための方法を模索しています。

―― Liquid Deathは常に新しい動画やプロモーション手法を展開しています。戦闘機をプレゼントしたり、オジー・オズボーンとコラボしたこともありました。言葉遊びになるかもしれませんが、市場に情報をあふれさせるながら市場を飽和させてしまわないよう、どのようにバランスを取っているのでしょうか。

ピアソン 私たちはあまりメディアを購入しません。バスケットボールやフットボールの試合の中継では、同じ広告を大体3回は目にするでしょう。これは、広告主がメディアを購入して、あなたがそうするように仕向けているからです。

 そんなことよりも私たちはもっと面白いことをしたいと考えています。その日の中で一番面白いと思ってもらえるものを目指し、それで満足してもらいたいのです。Liquid Deathのことを一度考えたら、もうその日には考える必要はありません。私たちは、視聴者が見たいものを邪魔するつもりはないのです。同じメッセージを繰り返すのではなく、視聴者に喜びを与える何かを提供することを目指しています。

―― Liquid DeathはE.l.f. Cosmeticsと共同で実施した「死体ペイント」キャンペーン(外部リンク/英語)など、ブランドコラボを強化しています。双方のニーズをどのようにしてバランスさせていますか。

ピアソン 大抵の場合、とても面白くてユニークな機会はベン図の真ん中に存在します。E.l.f.は良い例です。話し合いの中で、「死体ペイント」というアイデアがすぐに浮かびました。これは、いかにもこの2つのブランドが一緒にやりそうなことだからです。

 多くのブランドとのコラボレーションでは、単独ではあまりしないことができるようになります。Liquid Deathにとっては、普段は立ち入らない場所に進出し、そのポップカルチャーの一部に自分たちの「カオス」を注入することができます。お互いが異なる利益を得ているのです。

 これらのコラボレーションは、風刺やパロディを取り入れ、ユーモアをもたらす新しいスペースを提供するための素晴らしい機会となるのです。

―― Liquid Deathはスーパーボウル広告に対抗し得るリーチを持つ広告スペースとしてLiquid Deathのケースへの広告掲載権をオークションにかけました。これはどういう狙いがあったのでしょう。また、大規模なスポーツイベントの広告やマーケティング全般についてどう考えているか教えてください。

ピアソン 毎年、少なくともクリエイティブな意味で“スーパーボウルCMの終焉”が叫ばれます。ところが、なぜかその年の5月には次の在庫は売り切れてしまいます。私はスーパーボウル広告を作りたいと思ったことは一度もありません。正直言って、退屈だと思います。そのお金と時間を使って、もっと面白いことができるでしょう。

 Liquid Deathの考え方は、全てのことにおいて「より良い方法がある」というものです。健康的なブランドを売り込むための方法にしても、水を持ち運びできる形にするにしても、従来のやり方にとらわれないことが私たちのアプローチです。単に30秒のコマーシャルを新しく作るというだけではなく、それ以上のことをするのです。

 物事に新しいアプローチを見つけることには本当に楽しさがあり、それを私たちは楽しんでいます。そして、それに参加して笑いを共有してもらいたいと考えています。

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