KARTEのプレイドが進出する「プロダクトアナリティクス」はSaaSの成長をどう支援するのか?長期リテンションの把握とn1分析による課題探索を手軽に

CXプラットフォーム「KARTE」を提供するプレイドが、日本発のプロダクトアナリティクス「Wicle」のβ版を提供開始した。これを使って実現できることについて解説する。

» 2024年09月06日 18時00分 公開
[織茂洋介ITmedia マーケティング]

 プレイドは2024年9月4日、これまでクローズドβ版として提供してきたプロダクトアナリティクスツール「Wicle(ウィクル)」に無料プランを追加し、オンラインでサインアップが可能なパブリックβ版として提供を開始したと発表した。

プロダクトアナリティクスとは?

 プロダクトアナリティクスとは文字通り、プロダクトのユーザー行動分析に特化したツールのことだ。

 プロダクト(製品・サービス)自体が主要な成長ドライバーとなるプロダクトレッドグロース(PLG)と呼ばれるビジネス戦略が注目されている。

 PLGは主にSaaSやWebサービスの世界で採用され、ユーザーがプロダクトを実際に使ってみてその使いやすさや機能といった価値を実感することで、自然に顧客となることを目指す。このアプローチにおいては、従来のマーケティングやセールスに代わってプロダクトがユーザーの満足度とエンゲージメントを高める役割を果たす。人手を介さないため顧客獲得コストを低く抑え、販売およびマーケティングの支出を削減するメリットもある。

 ユーザーが愛着を持って使い続けたくなるプロダクトとなるためには、ユーザーを理解し、改善につなげるための分析が必要であり、その役割を担うのがプロダクトアナリティクスということになる。代表的なツールとしては「Amplitude」「Mixpanel」「Contentsquare」「Pendo」などの海外製品があるが、Wicleは日本発でグローバルを目指す。

Wicleの特徴

 高度化・複雑化が進む従来ツールは使い始めるためのハードルや分析を続けていくために求められるスキルやコストが高まってきている。これに対してWicleは手軽に始めやすく、ユーザーの状態をシンプルに知ることができ、プロダクト改善活動を続けられるようになることを目指す。タグを設置するだけでさまざまなユーザー行動の自動計測、リテンションや機能利用状況の可視化ができ、クエリを書かずにユーザーの抽出や具体行動の深掘りが可能になる。

 また、プレイドが2015年より提供しているCXプラットフォーム「KARTE(カルテ)」と同じデータ基盤を利用しており、大量のユーザーデータの高速な解析や可視化を実現する。

 機能面での主な特徴は以下の通りだ。

  • 長期のリテンションを定量化:ユーザーのリテンションを「新規」「アクティブ」「ファン」「ドロップ」「休眠」のライフサイクルという形で可視化。ユーザーの全体像を知ることで、注力すべき課題の見極めを可能にする。
  • ユーザー群を深掘りして課題探索、比較:深掘りしたいユーザーをクエリなしで抽出し、特徴を深く理解できる。熱心なファンによく使われている機能を特定したり、ファンと休眠ユーザーを比較したりすることで、各フェーズの特徴を探索し、違いに応じた適切なアプローチを検討できるようにする。
  • ユーザーの実際の行動に基づく文脈把握と評価:従来のアクセス解析ツールでは深く見られなかった、一人一人のユーザーの閲覧行動や具体的な操作時の体験をタイムラインやセッションリプレイ(動画)形式で知ることができる。ユーザーがいつ、どの要素に注目し、どのようなアクションを起こしたかを追体験できるようになり、より深いレベルでのユーザー理解を促進する。
n1分析も簡単にできる(画像提供:プレイド)

 料金体系は無料で使い始められる「Freeプラン」に加え、最低価格1万円(税別)から利用できる「Growthプラン」、カスタマイズ可能な「Customプラン」を用意している。

 今後、ユーザー単位でなく企業単位での定着状況を可視化・分析できる機能の開発も予定している。これにより、B2B SaaSにおける企業のサクセス状況の可視化や解約リスクのある企業把握などへの活用を狙う。

Wicleの使い道

 主なユースケースとしては、リテンションに有効な機能を見つけてオンボーディングを改善したり、休眠増加の要因を探して復活施策につなげたり、長期ファンの認知のきっかけを知って広告やLPの改善につなげたりすることなどが挙げられる。

 Wicleはユーザー分析に特化しているプロダクトのため、ポップアップやA/Bテストなどのアクションやパーソナライズを行いたい場合はKARTEを利用することになる。ただ、解析基盤は共通しているため、今後の開発においてKARTEとのデータ連携によるさまざまな利用シーンへの対応も視野に入れているということだ。

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