モルガン・スタンレーのCMOが語る「セリーナ・ウィリアムズ推し」のマーケティング的背景Marketing Dive

Morgan StanleyのCMOであるアリス・ミリガン氏は、女性スポーツの普及を優先課題としてきた金融サービス企業にとって、この取り組みが自然な流れだったと説明した。

» 2024年08月19日 08時00分 公開
[Chris KellyMarketing Dive]

 金融大手Morgan Stanleyの女性スポーツやその他の文化的分野への進出は、創業約90年のブランドを新世代の投資家向けにモダナイズしようとする広範な取り組みを反映している。これらの取り組みを主導するのが、2021年にMorgan StanleyのCMOに就任したミリガン氏だ。彼女は、金融子会社であるE*TRADEでチーフカスタマーオフィサー(CCO)を2年間務めた後、現職に就いた。

 Marketing Diveは、ミリガン氏に「In The Arena」のスポンサーシップ、Morgan Stanleyのパーパス主導の取り組みへのアプローチ、そして2024年後半に注目している点について話を聞いた。

※本稿は「ディズニーと組んで番組制作 投資銀行大手はなぜ女性スポーツに注目するのか?」の続きです。

現在のマーケティング業界において注目している課題

 以下のインタビューは、明確さと簡潔さのために編集されている。

――DisneyとESPNとのパートナーシップは、御社のマーケティング優先事項をどのように反映しているのか?

ミリガン氏 2023年に「Old School Grit. New World Ideas(昔ながらの勇気。新しい世界のアイデア)」という企業向けのマーケティングキャンペーンを立ち上げた。セリーナは勇気とビジョンの生きた例だ。彼女は可能性への情熱を生かし、スポーツ界でキャリアを通じて障壁を打ち破ってきた。これは、ブランドマーケティングの観点からも、また女性や若い女の子たちへの還元、支援、サポートという私たちの核心的な価値観の観点からも、自然にフィットするものだった。

 テニスは、Women's Tennis Association(WTA)とのパートナーシップ、そのパートナーシップの一環として若い女の子たちのための「Come Play」イニシアチブ、そしてレイラ・フェルナンデスをブランドアンバサダーに起用するなど、本当に力を入れている分野だ。

――パーパス主導の取り組みは、Morgan Stanleyの大規模なマーケティング活動にどのように適合しているか?

ミリガン氏 企業としても、マーケターとしても、私たちは単に報道されるためやニュースになるためだけに何かを行うのではない。私たちは、核心的な価値観と一致し、マーケティングメッセージに合致することを行っている。

 CMOの役割を引き継いだ際、最初に行ったことの一つは、Morgan Stanleyがクライアントや見込み客の観点からどのような立場にあるか、そして成長目標やビジネス戦略の観点から何を達成したいかを把握することだった。E*TRADEやEaton Vanceのような企業の買収により、Morgan Stanleyは革新的な技術や能力を増強しただけでなく、以前よりもはるかに幅広い顧客層にアピールする機会も得たことが分かった。

 若い世代、多様なオーディエンス、女性への拡大は、マーケティング戦略を考える上で本当に重要だった。Morgan Stanleyのような企業と取引することのメリットを、限られた少数ではなく、全ての人に実感してもらうための方法を模索した。

 伝えようとしているメッセージと、その対象者が誰なのかを理解することが本当に重要だ。人気があるからとか、タイムリーだからという理由だけで物事を行うのではなく、企業として信じていることを本当に反映するものをどのように選択するかが重要だ。

――女性スポーツ以外に、関連する取り組みにはどのようなものがあるか?

ミリガン氏 「Creating Space」という取り組みを行った。これは、女性用宇宙服のパートナーシップを通じて、女性が宇宙経済に参入しやすくするためのものだ。また、デザイナーのレベッカ・ミンコフとパートナーシップを組み、ウォール街の新世代の女性向けにバンカーバッグをリフレッシュした。最近では、メトロポリタン美術館とパートナーシップを組み、「Women Dressing Women」イベントを後援した。このイベントでは、時代を超えた女性デザイナーとその歴史、ファッションへの貢献が紹介された。

 私たちはソーシャルメディアとソーシャルプレゼンスを全て刷新した。同時に革新的なテクノロジーの活用も検討した。2024年の「THE PLAYERS」ゴルフトーナメントでは、ジャスティン・ローズとのAR(拡張現実)体験、3Dビルボード、ファイナンシャルアドバイザーとのAI(人工知能)技術を使用した。Morgan Stanleyが現代的で最新であることを示すと同時に、複雑な市場環境下で時の試練に耐えられるレガシーと歴史を持っていることを示すために、多くの取り組みを行っている。

――現在、マーケティング業界のどのような課題に注目しているか?

ミリガン氏 プライバシーは常に最重要事項だ。特に金融サービス業界にいる私たちは、人々のデータと情報、その使用方法、保護方法、セキュリティ確保を非常に真剣に受け止めている。

 データと分析は、マーケターにとって常に重要な要素だ。特に厳しい経済状況下では、行った施策の結果と影響に関するより多くのデータと情報を得ることが本当に重要だ。私のチームは、マーケティング施策の成果を共有し、説明し、伝えることができるよう、多くの時間を費やしている。

 生成AIについては、その最適な活用方法を真剣に検討している。マーケティング組織全体で行っている初期の取り組みの多くは、内部向けのユースケースを試験的に検討している。マーケティング予算の使い方、コンテンツの開発と配信方法をより効率的かつ効果的にする方法を検討しているが、同時に、より大胆な取り組みを行っている事例、その内容と結果についても注目している。

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