日本はなぜ「世界の旅行者が再訪したい国・地域」のトップになったのか 5つの視点で理由を解き明かす今日のリサーチ

電通は独自調査で、日本が「観光目的で再訪したい国・地域」のトップとなった要因を「期待」「契機」「関心」「地方」「和食」の5つの視点で分析しました。

» 2024年07月12日 15時00分 公開
[ITmedia マーケティング]

 電通は、世界15の国・地域の20〜59歳の7460人を対象に「ジャパンブランド調査2024」を実施しました。これは2011年の東日本大震災で日本の農水産物や訪日観光に風評被害が発生したことを契機に始まった調査で、ジャパンブランドが世界でどのように評価されているかを多角的に分析しています。

 今回、世界の海外旅行経験者が観光目的で再訪したい国・地域で「日本」が34.6%でトップになりました。2位の「シンガポール」(14.7%)、3位の「米国」(13.0%)と約20ポイントの差があり、人気の高さがうかがえます。

観光目的で再訪したい国・地域で日本が1位に(出典:電通、以下同)

 とりわけアジア圏の回答者においては日本への再訪意向が高く、東アジアの回答者は58.3%、東南アジアの回答者は52.5%が再訪したいと回答しました。東アジアの回答者が再訪したい国2位の香港(13.1%)との差は45.2ポイント、同3位のシンガポール(28.7%)との差は23.8ポイントでした。なお、欧州では6.5%で10位、米国では16.3%で2位でした。

観光目的で再訪したい国・地域(リージョン別)

 以下では、電通が2024年7月3日に実施した同調査に関するオンライン説明会の内容を基に、5つの視点からジャパンブランドが受け入れられた理由を解説します。

訪日観光客が日本に「期待」していることは?

 今回の調査では、「観光目的で再訪したい国・地域」で日本がトップとなった要因を「期待」「契機」「関心」「地方」「和食」の5つの視点で読み解いています。まず、海外旅行において日本に期待することの上位3つは「多彩なグルメ」(28.6%)、「他国と異なる独自の文化」(27.9%)、「他国にない自然景観」(25.6%)でした。訪日観光には多種多様な期待があることが分かります。

他の海外旅行と比べ、特に日本に期待したいこと

 2023年に日本を観光目的で訪れた人の契機(きっかけ)を聞いたところ、「前回日本を訪れて楽しめたので、また行きたいと思ったから」が50.0%で最多。半数がリピーター2人に1人が過去の良き体験からリピーターになっていることが分かります。次いで「日本の製品が気に入って日本に行きたくなったから」(44.0%)、「自国で日本料理を食べて日本に行きたくなったから」(36.8%)と続きました。また、歴史的な円安も訪日の契機となっています。特に東アジアでは「円安が続いているうちに行くべきだと思ったから」が44.1%と他の地域より高い結果となりました。

訪日した契機

 訪日観光客が多彩な関心を持って日本を再訪していることも分かりました。「今後の来日時にお金を払って体験・利用したいもの」を尋ねたところ、「庶民的な和食レストラン」(41.4%)、「農泊体験」(40.0%)、「新幹線」(37.3%)、「高級な和食レストラン」(36.3%)、「日本の伝統工芸品の購入」(35.9%)が上位を占めました。和食人気の高さが目を引きます。また、「日本オリジナルのコンビニ食品」や「日本製のスナック菓子」なども一部の国・地域で支持されており、訪日観光における興味・関心事の一つとなっているようです。地域別の傾向を見ると、一部の国・地域では日本独自の観光資源が支持を集めていることが分かりました。例えば居酒屋やコンビニ食品、日本製の日用品(化粧品やOTC医薬品など)。そして、日本製のスナック菓子などはすでに国際的に認知されており、消費意欲を高める体験項目として要注目です。

今後来日する際に、お金を払って体験・利用したいと思うもの

 4つ目の視点は地方です。世界に日本の多種多様な魅力を知ってもらうため、またオーバーツーリズムの問題が顕在化する中で、地方観光の促進は観光業界における最重要テーマの一つとなっています。都道府県別の認知度では、東京都が55.6%でトップ、次いで大阪府が46.4%、京都府が43.3%、広島県が36.9%、北海道が35.1%でした。トップ5を構成する都道府県は、過去8年間で変化がありませんが、都市部と地方部の二極化が明らかに進んでいます。訪日外国人が感じる地方観光の障害要因の上位3つは「言語によるコミュニケーションの不安がある」(36.2%)、「東京や大阪、京都などの都会以外の地方観光地を知らない」(26.7%)、「地方観光地が持つアクティビティに関する情報源が足りない」(26.7%)と続き、訪日外国人の地方観光における「情報不足」が主な障害要因になっているようです。現在、さまざまな地域がPR施策を展開して訪日観光の誘致に取り組んでおり、地方部の認知度の伸びしろが今後の訪日観光の成熟につながると考えられます。

日本で知っている都道府県
日本の地方観光における障害

 最後の視点は和食。居住国における日本食の喫食頻度について調べたところ、月に1回以上の割合で和食を食べる割合は、東アジアが外食で77.6%、中食で75.4%、東南アジアが外食で77.8%、中食で78.0%とともに7割以上だったのに対して、欧米豪では6割未満でした。

どれくらいの頻度で日本料理を食べるか

 訪日経験者を対象に帰国した後も食べてみたい日本食は何かと質問したところ、約 40 品目のうち、喫食意向が最も高いのは「ラーメン」(26.5%)で、特にアジア圏での人気が顕著でした。2位以下にも「刺身」(19.4%)、や「てんぷら」(19.0%)など代表的な和食が挙がっています。

帰国後にまた食べてみたい日本食

 しかし、一方で地域差が大きい和食もありました。例えば「から揚げ」の喫食意向は中東で34.0%、欧米豪で20.1%と、いずれもトップですが、東アジアでは11.4%で25位、東南アジアでも17.5%で10位にとどまりました。

 調査結果を取りまとめた電通ジャパン ブランドプロジェクトチームの李春志氏は「現在、日本各地での食を通じた訪日観光促進の取り組みが進んでいますが、その土地の名産と訪日旅行者の居住地からさまざまな検討がなされるべきです」とコメントしています。

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