NTTドコモなど4社が、深刻な人手不足で売り場づくりに手が回らない小売業に向けて、生成AIを活用してコンテンツ作成を支援する仕組みを模索している。
NTTドコモは2024年5月8日から2024年6月28日にかけて、熊本県を中心にスーパーマーケット事業を展開する台信商店(以下、ダイノブ)およびDX支援を手掛ける今村商事、NTTドコモ傘下のインテージと「生成AIを活用した店舗内サイネージ向け広告配信に関する実証実験」を実施した。スーパーダイノブ城南店において、同店が販売強化を希望する商品の広告コンテンツをNTTドコモが生成AIを活用して作成し、店内3カ所に設置されたインテージのサイネージ端末およびデジタルサイネージ配信システムを通じて配信した。販売結果についてはID‐POSデータを今村商事が台信商店より取得・分析し、その効果を検証をした。
小売業では深刻な人手不足から、広告コンテンツ作成などの売り場づくりが困難な状況が続いている。これを解決するため、実証実験では、サイネージにおける広告コンテンツを誰でも簡単に作成・配信できる仕組みの導入を目指した。
今回作成した広告コンテンツでは、生成AIを活用することで作成手順のうち最大で3分の2の工程を半自動化し、通常外注すると1週間程度かかる作成時間について、画像・動画の作成を含めて最短で1時間以内に短縮した。
具体的には、JANコードと商品名を指定するだけで自動的に指示プロンプトを生成するツールを準備し、これを用いて15秒の動画コンテンツを作成。一部手動で対応することにはなるが、一般的なFMCG(日用消費財)であれば慣れると最短1時間程度で1コンテンツが作成できるという。NTTドコモの担当者によれば、作成されたコンテンツ数は実際に使用されたものだけで約60に及んだ。
作成した広告については表示期間(1商品当たり7日間)において平均で1.2倍、最大で3.3倍の売り上げ増加が確認された。
今後は2024年10月から第2期として、生成AIの追加や広告生成の品質向上、さらなる運用自動化に向けた実証実験を行う予定だ。
また、今回は店舗が希望するコンテンツのみを表示していたが、メーカーからの問い合わせもあったため、今後台信商店と相談してメーカーのコンテンツを生成・表示することも検討している。今後この座組で本格的に事業化する可能性について聞くと、決定事項ではないものの、NTTドコモやインテージとのシナジーを活用したリテールメディアソリューションとしてのビジネス可能性を検討していく。
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