Googleの次世代AIモデル「Gemini 1.5」を統合 コカ・コーラやロレアルにも信頼される「WPP Open」とは?AIを活用したマーケティングを次の段階へ

世界最大級の広告会社であるWPPはGoogle Cloudと協業を開始した。キャンペーンの最適化、反復作業の自動化、そして全く新しいアイデアの創出など、AIを活用したマーケティングをさらに発展させる狙いがある。

» 2024年04月18日 06時00分 公開
[ITmedia マーケティング]

 世界最大級の広告会社であるWPPは2024年4月9日(米国時間)、Google Cloudとの新たな協業を発表した。データ分析、生成AI技術、サイバーセキュリティにおけるGoogleの深い専門知識と、WPPのマーケティングおよびクリエイティブのケーパビリティ―、クライアントのブランドに関する知識を組み合わせることで、マーケティングの効率と効果を一段と高めることを目指す。

生成AIがマーケティングプロセス全体を最適化

GoogleのGemini 1.5 Proを使用してWPP Openで生成されたフォーミュラEの最新オール電化モデルGEN-3(画像提供:WPP)

 両社の協業は、Google Cloudが米ラスベガスで開催した年次イベント「Google Cloud Next '24」の基調講演で明らかになった。協業の一環として、WPPは自社で独自に開発・運用するAI搭載型のインテリジェントマーケティングオペレーティングシステム「WPP Open」にGoogleの生成AIの次世代モデル「Gemini 1.5」を統合する。これにより、WPPのクライアントは、生成 AIを使用してブランドや製品に特化したコンテンツを作成し、ターゲットオーディエンスに対するより深い洞察を得て、コンテンツの効果を正確に予測・説明し、継続的な適応プロセスでキャンペーンを最適化できるようになる。

 WPP Openには、クリエイティブ、アイディエーション、プロダクションからPR、コマース、メディアまで、マーケティングのさまざまな側面に合わせて構築された最先端のAIスタジオがある。全てカスタムAPIで設計され、クライアントデータを保護し、安全で効果的な運用を保証する。さまざまなデータソースとLLM(大規模言語モデル)でトレーニングされた独自のAI製品である「WPP Brains」を搭載しており、実際に3万5000人以上のWPP社員がこれをクライアントワークに使用している。Coca-ColaやL'Oreal、Nestleなどの主要クライアントからは高い評価を受けているという。

4つのユースケース

 Google Cloudとのパートナーシップの第一弾では、以下の4つのユースケースの開発に取り組む。

「WPP Open Creative Studio」でクリエイティビティーを強化

 GoogleのGemini 1.5 ProをWPP Openの一部である「Creative Studio」に統合。Creative Studioは見出しを書いたりスケッチを画像にしたりする作業を支援するAIアプリケーションだ。Gemini 1.5 Proの大きなコンテキストウィンドウは100万トークンの情報を一貫して実行できるため、ブランドのカラーパレット、フォント、音声、さらには過去のマーケティングキャンペーンなど、より多くのブランドコンテンツやガイドラインを使用することができる。これにより、リッチでダイナミックなユーザーインタフェースの開発が可能になり、よりブランドらしいコンテンツを開発できる。

よりスマートなコンテンツ最適化

 Gemini 1.5 Proを取り込むことで、AIを活用してマーケティングコンテンツのパフォーマンスを予測するサービス「AI Performance Brain」をアップグレードし、キャンペーン実施前にマーケティングコンテンツの成功を予測する方法を改良した。このアップグレードは、予測をより速く正確にし、予測の背後にある推論を可能にし、コンテンツを改善するための提案を行う。

AIナレーション

 説明とナレーションの両方のリアルタイムストリーミング機能を開拓することで、動画説明ソリューションをさらに上のレベルに引き上げる。このシステムは、Gemini 1.5 Proを使用して、カスタマイズ可能な動画ナレーションスクリプトを自動的に作成。これらのスクリプトは、WPPのパートナーである 音声生成AIスタートアップ企業のElevenLabsに送られ、ナレーション用のリアルな音声が生成される。このプロセスにより、動画作成がより迅速かつ効率的になり、パーソナライズされたコミュニケーションが実現する。

超リアルな商品表現

 より良い商品画像を作成するために、生成AIを使って商品表現を再定義する。このシステムは、Gemini 1.5 ProとUniversal Scene Description 3Dファイルフォーマットを使用し、ブランドのスタイルガイドライン(ロゴ、フォント、色など)を理解するだけでなく、実際の製品の形状、デザイン、パッケージも取り込みむ。その結果、マーケティングや広告に最適かつ、詳細な3Dでブランドに準拠した製品画像が完成する。

 WPPはAIやデータ、テクノロジーへ年間2億5000万ポンドの投資を継続的に行い、GoogleのようなAIの専門家と提携することによって、この分野の先駆者となる戦略を掲げている。

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