ChatGPT対抗のAIチャットbotとしてX傘下のxAIが開発する「Grok」が、より広範なユーザーに提供されるようになる。Xとオーナーのイーロン・マスク氏は何を考えているのか。
X(旧Twitter)は、より多くの有料ユーザーを獲得するために、AIチャットbot「Grok」へのアクセスを、「Xプレミアム」最上位プランの「プレミアムプラス」ユーザーだけでなく「プレミアム」ユーザーにも拡大する。
X傘下のAI企業であるxAIが2023年11月に立ち上げたGrokは、OpenAIの「ChatGPT」に対するXからのアンサーだ。GrokのシステムはXの投稿データを学習してその応答を強化する。Xはこれによってリアルタイムで最新の情報に関連性が高いチャットbotになると考えている。
Grokの使用はこれまで月額16ドルのプレミアムプラスユーザーだけに限定されてきた。Xのユーザーのうち、月額8ドルのプレミアムプランに申し込んでいる人は1%にも満たない。プレミアムプラスに至ってはもっと利用者が少ない。従って、現時点では、実際にGrokにアクセスできるXユーザーはごくわずかである。つまり、Grokの実際の価値やXユーザーがチャットbotツールから実際の価値を得ることができるかどうかに関する洞察は制限されている。
しかし、Xのオーナーであるイーロン・マスク氏は2024年3月27日(米国時間)、Grokへのアクセス拡大を発表した。
マスク氏が引用した動画に見られるように、Grokの応答をポストで共有することもできるようになった。これは、実際の人間との関与を置き換えるというAIチャットbotツールの理想的な使用方法とは異なるかもしれない。しかし、XはAIを可能な限り統合したがっており、純粋なテキスト生成はそのための最もシンプルな形と言える。
Grokへのアクセスを拡大することは、より多くの人に利用を促し、XのAIチャットbotツールの実際の価値を見極めるための合理的なステップと考えられる。
しかし、そこにはリスクも伴う。プレミアムプラスの価値を下げかねないし、Grokを使用するためにこれまで付き16ドルを支払ってきたユーザーの不興を買う可能性もあるからだ。
現在、プレミアムプラスの特典は次の通りである。
最初のポイントがなければ、プレミアムの2倍の料金を払ってプレミアムプラスに申し込む価値があるかどうかを疑問視するユーザーも増えるだろう。しかし、これは使用状況と好みに大きく依存する。
同時に、マスク氏は、Grokのハイパワーバージョンが近いうちにプレミアムプラスユーザーに提供される可能性を示唆している。これは新たな売りなり、パッケージの価値を高める可能性もある。
いずれにせよ、Xにはより多くの加入者が必要であり、Grokをより広く利用できるようにすることは、この点で助けになるだろう。
2022年後半に旧Twitterを買収したとき、マスク氏は収益を増やすために有料会員を重要視する計画を説明した。そのメリットは2つ。事業により多くの資金をもたらすことと、広告収入への依存度を下げ、モデレーションに関しての束縛をより少なくすることだ。
マスク氏の野心的な初期計画では、サブスクリプションと全体的なプラットフォームの使用に関するいくつかの重要な成長目標が示されていた。
しかし、Xがこれらの目標を達成するには、まだ長い道のりがある。
現在、Xプレミアムの購読者数は約70万人と推定されており、普及の勢いは限られている。だがXは最近、2022年11月と同じ2億5000万のデイリーアクティブユーザーをまだ維持していると報告している。
これはマスク氏の計画に大きな障害を引き起こし、広告収入も以前のレベルから約50%減少している。そのため、スタッフの80%削減などのコスト削減が行われていても、会社の見通しはあまり良くない。
Grokの開発にも費用がかかっており、Xはできるだけ多くを回収する必要があるが、同時により広範な成長目標と一致させる必要がある。
Grokのアクセス拡大は理にかなってはいる。ただし、ユーザーが実際にチャットbotに価値を見出すかどうか、およびそれがより多くの購読者を引き付けるのに役立つかどうかは、まだ分からない。
現時点では大きな魅力とは思えない。だが、より多くの人々がGrokを使用することで、その利点がより多く報道され、より多くの関心を集める可能性はある。
もしそうでなければ、Xは他のAI企業にデータを転売することも検討できるし、それが新たな収益ドライバーの手段となるかもしれない。
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