メディア接触行動が多様化する若年層に向けたキャンペーンはプランニングに工夫が必要だ。パーティーシーズンにPinterestの新しい広告商品「プレミア スポットライト」を活用したサントリーのスパークリングワイン「フレシネ イタリアン ロゼ」の事例を紹介する。【訂正あり】
サントリーが販売する「フレシネ」は、スペインのワイナリーFreixenetによるスパークリングワイン(スペインでは「カヴァ」という)のブランドだ。黒ボトルでおなじみの「フレシネ コルドン ネグロ」をはじめ、さまざまな商品をそろえているが、近年海外で非常に人気が高いのが、美しく輝くダイヤモンドカットのボトルが印象的な「フレシネ イタリアン ロゼ」だ。2023年末にそのプロモーションキャンペーンを担ったサントリーホールディングス宣伝部の牧原侑美氏に話を聞いた。
2023年3月に日本市場へ同商品を投入したサントリーだが、大々的なプロモーションは今回が初めてだった。キャンペーンの狙いと背景にあった課題について、牧原氏は次のように語る。
「目指したのは20〜30代の女性への訴求です。年末のパーティーシーズンに向けて、お店に飲み物を買いに来た人たちが『このスパークリングワイン、よく見かけるな』という状況を実現したいと思いました。従来、スパークリングワインは他の酒類ほど指名買いされることがありませんでしたが、輝くボトルが印象的なフレシネ イタリアン ロゼであれば、若い女性に対して非常に強い引きがあると考えました」(牧原氏)
スパークリングワイン市場のメインターゲットは40〜50代であり、若い顧客層の開拓はブランド全体の課題でもあった。新しいラインアップで新しいターゲットにアプローチするためには、新しい攻め方が必要になる。
よく言われることだが、若い世代の生活スタイルは多様化している。認知拡大のためにテレビCMを打っても、そもそもテレビを見る習慣がない人には届かない。若年層の多様化するメディア接触行動に対応するためには複数のプラットフォームを横断して一斉にキャンペーン施策を走らせるのが有効だ。
今回、サントリーはテレビではターゲット層が見るような音楽番組を選んでCMを流し、デジタルチャネルでは主要ソーシャルメディアに加えてPinterestにも広告を出稿した。ビジュアル探索プラットフォームとして知られるPinterestは、パーティーのアイデアを探す人々のニーズに合致している。また、Pinterestのメインユーザー層はフレシネ イタリアン ロゼのターゲット層と近い。
今回のキャンペーンでは、Pinterest アドで最も一般的な運用型広告「スタンダード」に加え、2023年10月にサービス開始されたばかりの予約型広告「プレミアスポットライト」も活用した。
スタンダードでは、スマホの画面をフルに使う縦長のクリエイティブを8種類制作した。フィードの中でオーガニック投稿(ピン)と並んで自然な形で広告が表示される。ユーザーは気に入ったものをオーガニックピン同様に保存できる。今回は、ボトルを大きく目立たせたものと、女性が乾杯しているシーンのクリエイティブの反応が良かったという。
プレミアスポットライトでは、Pinterestのプラットフォーム上で優先的に表示される場所(具体的には検索ページとホームフィード)に動画広告を1日24時間1社限定で出稿できる。検索ページでは画面の約50%を占める大きなサイズで広告が表示される。サントリーは、最初に静止画を表示してボトルを認知させ、その後パーティシーンの動画が再生されるクリエイティブを出稿した。
「通常、Pinterestでは飲料はレシピ系のボードにピンされることが多いのですが、今回は“おしゃれ”や“かわいい”というボードなどにたくさんピンされました。おしゃれなものを漠然と探していた人にフレシネを知ってもらうという効果は、他のプラットフォームでは難しいかもしれません」(牧原氏)
今回プレミアスポットライトに出稿したことで、動画視聴率が事前に想定した数値の1.6倍、クリック率が1.36倍に上昇した。また、広告想起リフトは約1.4倍、ブランドの認知リフトは約8.2倍、利用意向リフト(検討・購入意向)は約1.6倍になるなど、狙い通りブランド認知に高い効果を上げた。
ブランド目線で見たPinterestという媒体の特徴について牧原氏は「OOH(屋外広告)とSNSの間を埋めるもの」と捉えている。
「OOHは偶然通りがかった人に認知させ、SNSは誰がどう評価をしているかを知りたい人が検索するツールという性格があります。Pinterestはその間に位置するプラットフォームだと感じました。何となくパーティーをしたいけれどまだアイデアが固まっていない人というのは、スマホ上の行動だけで捕捉するのが難しい。そうした人に網羅的に広告を見せられるのは、他の媒体にない価値だと思います」(牧原氏)
実際、Pinterstにおける検索は97%が非指名検索だとされる。つまり、明確なインテント(購入の意図)は持っていないもののそのジャンルに関心を持ってPinterestを眺めている人が、ブランドと自然な形で出合える場所ということになる。
「ほとんどのターゲティングは、ユーザーが普段閲覧しているものに基づいています。逆に言うと、頭の中だけで考えていることは捕捉しづらい。セレンディピティーが起こるのは優れたユーザー体験と言えます」(牧原氏)
今回は商材の利用シーンがPinterestの世界観と特にうまくマッチしたことも功を奏した形だが、ハレの日需要との親和性の高い媒体を発見できたことは、さまざまな飲料ブランドを持つサントリーにとって大きな収穫だ。また、今回の施策は認知拡大が主目的だったが、Pinterest アドはクリック率も高く購入に結びつきやすいという特徴もある。牧原氏は、今後も記念日や季節に合わせたキャンペーンにPinterestを活用していきたい考えを示した。
【訂正】:2024年3月11日午後5時 商品名をサントリー公式の表記に変更しました。
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