GoogleがIABのプライバシーサンドボックス批判に猛反論 完全論破へ42ページのレポートを公開Marketing Dive

Googleは、米インタラクティブ広告協会から寄せられた批判について「多くの誤解と不正確さが見られる」と反論している。その詳細について、追加説明があった。

» 2024年02月29日 07時00分 公開
[Peter AdamsMarketing Dive]

 Googleは、米インタラクティブ広告協会(IAB)の研究機関であるIAB Tech Labが最近発表したレポートに対し、より長い反論を発表した。IAB Tech LabのレポートはGoogleがWebブラウザ「Chrome」でサードパーティーCookieを廃止する上で鍵となるはずのプライバシーサンドボックスを批判していた(編注:以下のカコミ参照)。

IAB Tech Labの指摘について

 IAB Tech Labは2024年2月6日、Googleのプライバシーサンドボックスに関する詳細な分析結果をレポート(外部リンク/英語)にまとめて公開した。同レポートは、アドテク企業のコスト負担の大きさと、ブランドや代理店のオペレーション、財務、法律上の課題を強調し、プライバシーサンドボックスがまだ"実行可能なビジネス基盤"を形成していないと主張した。これに対してGoogleは「IAB Tech Labのレポートには、基本的な誤りや不正確な情報、不完全な情報が数多く含まれている」と即座に声明を出していた。


Google「IABはプライバシーサンドボックスの幅広い目的を無視している」

 IAB Tech Labが行ったGoogleのプライバシーサンドボックスの評価は業界に衝撃を与えた。同レポートはプライバシーサンドボックスが実行不可能であると主張する。プライバシーサンドボックスへの移行はアドテク企業に過度のコスト負担を強いると同時に、ブランドや代理店、パブリッシャーにとっては運用上および法的な側面で頭痛の種となり、システムの再構築が必要になると述べた。IABの分析に対してGoogleのチームは即座に反応し、「数十の基本的な誤り、不正確な情報、不完全な情報が含まれている」と主張した。そしてこの度、42ページのレポート(外部リンク/英語)と開発者ブログで、より詳細な回答を発表した(外部リンク)。

 プライバシーサンドボックスをめぐるこの議論にはオンライン広告に関する多くの専門用語が飛び交うが、要するにGoogleはIAB Tech Labのメンバーがプライバシーサンドボックスに現実的な期待を寄せていないと考えている。Googleはプライバシーサンドボックスが単なるCookieの代替品ではなく、既存のデジタルマーケティング戦術の廃止を含め、現在のエコシステムに実質的な調整を必要とするものだと繰り返している。IAB Tech Labの分析は、同協会のプライバシーサンドボックスタスクフォースによる最初のもので、6カ月間にわたる業界のさまざまな領域を代表する65社との協議に基づいている。

 「全体として、このレポートは、効果的なデジタル広告を支援しながらユーザーのプライバシーを強化するというプライバシーサンドボックスの幅広い目的を無視しているようです」「この変更には投資、労力、協力が必要ですが、Googleはこれが必要であり、達成可能であると考えています」。Googleのプライバシーサンドボックスチームの投稿には、そう書かれている。

 Googleは主に技術評価セクションに重点を置き、IAB Tech Labのレポートのうち、プライバシーサンドボックスがオーディエンス管理、オークション、クリエイティブの配信、レポーティング、データの相互運用性といったプログラマティック広告の各カテゴリーに及ぼす潜在的な影響について解説した。例えば、IAB Tech Labが「インタレストグループはサイトをまたいで機能するがデバイス間では機能しない」と述べているのに対し、Googleは「それはCookieにも当てはまるとことだ」と指摘し、反論している。また、IAB Tech Labが「プライバシーサンドボックスはランタイムデータの損失を通じてブランドセーフティーを阻害する」可能性を示唆したことに対しては、「バイヤーは現在と同様に広告リクエストでページのURLを受け取り続ける」と述べた。

 Marketing DiveはIAB Tech Labの代表者にコメントを求め、返答があるまでこの記事の原文(外部リンク/英語)を更新する。2つの組織の応酬の全てが負け惜しみというわけではない。Googleはブログの中で、IAB Tech Labのメンバーが代替ソリューションを構築しようとする努力に勇気づけられ、継続的な協力関係を歓迎すると述べている。

 しかし、この論争はすでに長期化しているCookieの非推奨化にさらなるねじれをもたらした。Googleが最初にサードパーティーCookieによる広告ターゲティング手法を廃止する意向を発表したのは2020年だが、その後何度か期限を延期した。Cookieは2024年1月にようやく少数のChromeユーザーから消え始め、Googleは同年の後半に段階的廃止を拡大する予定であることを再確認した。Googleは、プライバシーサンドボックスが小規模なデジタル広告事業者に不利に働く可能性があると考えている規制当局である英国の競争・市場庁(CMA)とも事態を調整している最中である。

Googleは、プライバシーサンドボックスの取り組み状況を批判するIAB Tech Labの報告書に反発している(出典:iStock.com/Ekaterina79)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.