マスク氏が言う「最も正確な指標」で測ると、やはりXのユーザー一人当たり平均滞在時間は減少している件Social Media Today

Xが公開した最新トラフィック数に関するデータから読み取れることとは何か。

» 2024年01月10日 07時00分 公開
[Andrew HutchinsonSocial Media Today]
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 「総ユーザー秒数」は誤解を招きやすい統計であり、多くの開発者は、それがDAU(デイリーアクティブユーザー数)のような一般的な数値ほど示唆的でもなければ価値があるものでもないと見なしている。

 それにもかかわらず、Xのオーナーであるイーロン・マスク氏は、これがエンゲージメントを最も正確に表す指標であると確信している。2024年1月5日、マスク氏はXのアクティブユーザー秒数に関する最新のアップデートを共有し、アプリの人気が大幅に向上していると主張した。

「総ユーザー秒数」が1日3607億秒って本当にすごいことなの?

 では、この数字が実際に何を意味するのか、人々がよく知っている利用統計の文脈の中で掘り下げてみよう。

 まず、総ユーザー秒数で見ると、Xの直近1週間の平均は1日当たり3607億秒だ。これはユーザーがXに費やした全時間であり、一見すると信じられないほどの膨大である。

 しかし、これを分解すると、3607億ユーザー秒は1日当たり6.01億分に相当する。Xは直近の発表で2億5300万のデイリーユーザーを有していると主張しているので、総時間を総ユーザー数で割ると、ユーザー1人当たりがXに費やす時間は1日平均23.8分だ。

 これは、Xが2023年10月に報告した1日平均32分という数字に遠く及ばず、旧Twitter時代よりも低い。3607億ユーザー秒と言うと印象的に聞こえるが、実際にはユーザー1人当たりの利用時間は、マスク氏が主張するように増加しているのではなく、むしろ減少しているのではないだろうか。

 平均ユーザー秒数は増加し続けているというのなら、逆に総ユーザー数が減少しているに違いない。ユーザーがアプリに1日当たり32分を費やしているというXの報告はもしかすると正しいかもしれないが、そうであれば、Xは現在1日当たり1億8500万人のユーザーにしかサービスを提供しておらず、6800万人もユーザーが減少していることを意味する。

 つまり、ユーザー当たりの使用量がXの主張よりも少ないか、Xが全体的に少ないユーザーしかサービスを提供していないか、どちらかだ。

 これらの統計を見る際にはWebとモバイルアプリユーザーの割合にも注目すべきだ。Xユーザーの88.55%はモバイルデバイス経由でログインしており、おそらくほとんどがアプリ経由でXにアクセスしていると推測される。

 ということは、マスクが何度もシェアしているこの統計はほとんど何の意味もないことになる。

 なぜならば、このグラフはWebトラフィックのみ(デスクトップとモバイル)に基づいており、アプリの使用状況は含まれていないからだ。当然のことながらGoogleにインデックスされるXの投稿は、Googleのクローラーが限定的にしか入ってこられないInstagramのコンテンツよりも多くの検索流入を獲得できる。

 このグラフの本質は、Xの総トラフィックの約11%をInstagram全体の利用数のほんのごく一部と比較したものということになる。InstagramもXと同様に、ユーザーのほとんどはモバイルアプリを利用しており、Webでログインする人はごくわずかだ。そのため、このグラフをもってXがInstagramの利用を上回っていると主張するのは飛躍しており、全くの誤りである。

 マスク氏がわざとだますようなことを言っているのか、それとも目の前の数字を本当に理解していないのかは分からないが、これらのグラフはどちらもXにとってあまり良い指標ではない。2つ目のグラフに至っては、どういうわけかこれまでInstagramがWebトラフィックでXを上回り、今も比較的接近していることさえ示している。前述のようにInstagramの投稿はGoogleに完全にインデックスされていないにもかかわらずだ。

 最初のグラフはXがアクティブユーザーを失っているか、あるいは利用時間が短くなっていることを示していると述べたが、これは、Xが発表した別の統計にも当てはまる。Xは毎日150万人の新規アカウント登録があるというが、もしそれが本当だとしても、全体的な利用者数は増加していないのだから、彼らは全く定着していないということだ。

 Xが共有している数字は、マスク氏が示唆しようとていることとは一致していないし、いずれにせよ公式の監視がない以上、これらの数字はあまり信頼できない。

 マーケティングの観点から見たプラットフォームの価値は、結局のところオーディエンスおよび彼らがどこで活動しているかにかかっている。もし彼らがまだXを積極的に使っているのであれば、それはおそらく考慮すべきことだ。しかし、もしできるだけ大きなリーチを求めているのであれば、これらの数字はマスク氏が言っているようなXの能力の拡大を示すものではないことには留意すべきだ。

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