B2Bブランディングにおけるnote活用 「マクロミル」「ヤプリ」の事例を解説note活用で企業の「想い」を広げる【第3回】

企業のnote活用を目的別に考えるこの連載、今回のテーマは「B2Bブランディング」です。

» 2023年09月06日 06時00分 公開
[北村類希コムニコ]

 コムニコの北村です。第3回目となる今回は、noteでnote pro事業部長を務める半田美幸氏と共に、「B2Bブランディング」の目的でnoteを運用する企業の活用方法や、法人向けの高機能プランであるnote pro(※)を活用して成果を得られたマクロミルとヤプリの2社について紹介します(以下、文中敬称me略)。

note pro:法人向けの高機能プラン。デザインカスタマイズや分析機能などさまざまな機能を利用することができ、カスタマーサクセスチームによる運用サポートを受けることが可能になる。

B2B企業の認知度向上へ

北村 過去にnoteさんから、「B2Bのブランディングを目的として活用される企業が多い」と聞いたことがあります。ブランディングといってもいろいろあると思いますが、B2B企業だと、具体的にどのような課題をお持ちの方が多いのでしょうか。

半田 採用広報と似ているところがあるのですが、自社そして自社製品が一般的に知られていないので、認知度を上げたいという点があります。あとはリード獲得数を上げたい。この2つの課題ですね。

北村 これはnoteの良いところで、僕もよく目にする記事ですが、単に「うちはこういう製品を持っている、販売している会社ですよ」という話だけではなくて、「こういう想いを持って事業に取り組んでいます、製品を作っています」といった、色んな人の想いが詰まった記事が、読み応えがあると思っています。実際にそういうことをnoteを使って伝えようと試みる企業が多いでしょうか。

半田 そうですね。B2B企業は、企業間取引で成り立つ事業のため、ビジネスライクな関係、かつ論理的に製品を選ぶことを重視されがちですが、本来は一緒に仕事を進めるパートナーや仲間という関係です。自社にフィットした製品であるか、更にはお互いのミッションや価値観に共感し合えるかなど、同じ熱量でコミットしている会社同士でないと、お付き合いは長く続かないはずです。そういった深層部を知ってもらうために、noteは活用できると思います。企業間の関係性を良好にするという目的で、営業ツールの一つとして活用いただくことが、B2B企業にはありますね。

コンテンツは第2の営業パーソン

北村 noteのように、現場と連動した情報をスピーディーにストックできるプラットフォームは、実はB2B企業と相性が良いのかもしれないと思っていて。だからB2B企業の方からSNS関連の相談をいただくとき、僕はnoteを推奨することもあります。B2B企業のブランディングという領域で、noteを活用する強みや特徴ってありますか。

半田 私は、コンテンツは第2の営業パーソンだと考えています。

北村 なるほど。

半田 営業担当が1回の商談で届けられる内容って、どうしても限られてしまうと思うんです。そこで、ストックされているコンテンツがあれば、商談とは別の時間に読んでもらったり、メルマガと組み合わせて定期的に活用したりすることができます。コンテンツは無限にストックできるし、何度も繰り返し読んでもらえます。営業の人的リソースを補填してくれて、コスト削減にもつながるかもしれません。コンテンツマーケティングの話になりますが、費用対効果はいいんじゃないかと思っています。

北村 営業担当者は、商談をする30分や1時間といった限られた時間の中でしかコミュニケーションが取れないのに対して、「時間があるときにこの記事とこの記事を読んでみてください。」とお勧めすることができるし、「御社こういう情報持っていない?」と聞かれた際に、「ぜひこの記事を読んでください」とnoteの記事を案内できれば、お互い時間の短縮にもなりますね。「コンテンツは第2の営業パーソン」、ぜひ今後も使わせていただきたいです。

コロナ禍以降に変わった営業スタイルへの対応

北村 マクロミルさんはアンケートの調査結果や分析結果といった、営業先企業に紹介しやすいような記事を多く投稿されています。ヤプリさんも提供しているサービスのアップデート情報といったクライアント企業向けの情報を頻繁に投稿していて、いわゆる「営業」にか生かせるコンテンツのストックをされていますね。マクロミルさんは、現在note proを契約して運用されているとのことですが、どんな課題があってnote proを始められたのでしょうか。

半田 マクロミルさんは、ネットリサーチの会社というイメージが強いと思うのですが、実は他にもさまざまな事業をされているんです。同社にはこういう固定的なイメージを打破したいといった課題がありました。また、社内で持っているナレッジを外部にオープンにして、会社が持っている能力や手腕を知ってほしいと営業から依頼があったそうです。コロナ禍に入って、自社の営業手法を変えなければならないという課題感もあったのでしょう。コロナ禍以降、営業スタイルの変革を求められた企業は多いと思います。対面で営業をしていた時代は、会議の場で雑談、懇親会や飲み会などのコミュニケーションがあって、そういう時間に信頼関係を築いたり、自社サービスのアピールをしたりすることが普通にあったと思うんですよね。それがコロナ禍以降は、基本手法がオンラインの打ち合わせになって、雑談の機会も少なくなりました。そこを補填する役目を果たすのが、コンテンツやメディアなのかなと。

マクロミルのnoteアカウント(https://note.com/macromill/

北村 マクロミルさんの最初の投稿記事は、2020年の12月ですね。こう見ると、やはりコロナ禍で何か営業手法を変えなければいけないという意識があったのかもしれませんね。

半田 「noteは街」という表現をしているのですが、本当に多様な読者がいて、あらゆるステークホルダーに発信ができる点で評価をいただいています。あとは、メルマガと組み合わせてnote内にストックした情報を発信していくことができたり、いろいろな部署が発信する情報を組み合わせることができたり、会社全体を巻き込める点も、選ばれている理由かなと思います。実際にマクロミルさんは、マーケティング部から見込み客に、noteに投稿したノウハウ記事をメルマガで送付したところ、営業の成果につながったそうです。

マクロミルの「調査レポート」のマガジンページ

北村 当社コムニコも、昔から自社で、SNSのお役立ち情報を発信するブログ「We Love Social」(外部リンク)を運用していて、そのブログ記事をメルマガにして配信することをマーケティング活動の一環で行っています。そこからお問い合わせをいただいて、商談につなげる流れをつくるのですが、マクロミルさんはnote proの運用をマーケティング活動に活用されているということですね。簡単に運用ができる上に、営業にも活用できるので、これはぜひ多くの企業に実践していただきたいですね。

半田 そうですね。あとマクロミルさんは、note proを導入してくださった理由の一つに、高度なアナリティクス機能が使えるという点も挙げています。noteと比較してnote proの方が分析機能が充実していて、その点もnote活用において重視していました。note proだとGoogleアナリティクスとも連携でき、さまざまな数値を見ることができます。公開した記事に対する反応を分析して、PDCAサイクルを回して運用の成果につなげる。そういった点にメリットを感じて、note proを導入してくださる企業もいらっしゃいます。

「タイムリーな営業資料」として活用

北村 次はB2Bブランディングの事例として、ヤプリさんをご紹介します。ヤプリさんは、コーポレートサイト並みに幅広いジャンルの情報を発信されていて、発信目的が複数あるようにお見受けします。

半田 はい。おっしゃる通りで、B2B企業に限らず、複数目的で活用されている企業は多いです。主に、ブランディングと採用広報の2つの目的を置くことが多いですね。やはり採用広報という言葉の通り、採用活動もブランディングの一つだと考えられています。コンテンツの種類が多い場合は、マガジン機能という、記事をフォルダのようにまとめる機能を使って整理いただいています。

ヤプリのnoteアカウント(https://news.yappli.co.jp/

北村 ヤプリさんも早い段階からnote proを活用されているようですが、どんな課題をお持ちだったんでしょうか。

半田 ヤプリさんは、サービスや社名の認知度向上のために自社から発信することの重要性を感じていたそうです。頻繁に実施しているサービス改善、機能追加がお客さまに伝わっていなかったと感じることもあったようで。もともと別のブログシステムを使われていたのですが、運用コストが比較的高額だったこともあり、新たにシステムを探していました。note proだと、自社でのメンテナンス負担が無い点や、SNSとの連携がスムーズにできる点、分析機能が充実している点などを評価していただき、導入に至りました。

北村 他社とコンペになった際に、コンペの担当者からお客さまに「新機能紹介のマガジンがここにまとまっているので」とnoteに掲載している記事を紹介したところ、お客さまから「ヤプリのこの2年間の進化が素晴らしくて、ぜひお願いしたい。」と成長を感じてもらえて、さらに透明性がある会社として信頼を獲得し、選定いただけたとのことです。素晴らしい形で営業につながっていますね。

半田 営業先で画面を見せながらサービスの新機能紹介やアップデート情報を説明することで、タイムリーな営業資料として、活用することもできます。

ヤプリの「サービスアップデート」情報のマガジンページ

北村 もともとは自社サイトで情報更新をしていたけれど、ブログサービスからnote proに変えたことで、コストを下げつつ頻度が高い情報発信を実現させたのですね。その上、営業の成果にもなっているから、すごいです。

半田 サイト上で公開していた情報を、そのページを閉じるからといってオフラインの営業資料に転記するのも大変ですし、note proなら更新も簡単にできますからね。note proは、自社ブログをイチから構築するよりは比較的低コストで、高度な分析機能やカスタマイズができます。他ブログサービスから移行され客さまは多いです。

北村 なるほど。あらためて見ると、サービスのアップデート情報をマガジン機能でまとめると、みんなが情報を追いやすくなるので、すごくいいですね。あとは、トップページの色づかいや、トンマナが統一されており、とても見やすいです。本当にコーポレートサイトみたい。

半田 ヤプリさんは、「セミナーレポート」「お知らせ」「プレスリリース」など、マガジン機能で丁寧にまとめていて、使いこなしていますね。note proでは、ページのカスタム機能も充実しています。メニューバーのカスタマイズや、公式サイトへの導線など、さまざまな導線を簡単に設定することが可能ですので、豊富な情報量をうまくまとめることができます。

北村 まさに、クライアント企業、採用候補者、投資家などあらゆるステークホルダーを対象としたコンテンツマーケティングをnote上で実現させていますね。noteというプラットフォームの力を借りてスムーズに運用できるのは、いいですね。


 次回は、B2Cブランディング目的におけるnoteの活用について、企業の事例を交えながら、引き続きnoteの半田氏と共に解説します。

noteの半田氏(左)と著者(右)

この連載について

今、多くの企業がオウンドメディア運用に活用している「note」。noteは、2014年4月にサービスが開始され、2023年2月末時点で会員数は622万人に達している。当連載では、SNSマーケティングの総合代理店であるコムニコが、複数社の好事例の紹介も交えながら、企業が有効にnoteを活用する方法を解説する。


執筆者紹介

北村類希

北村類希さん

きたむら・るいき コムニコ ビジネスデベロップメント局 マーケティングチーム エバンジェリスト。2016年にコムニコへ入社。SNSコンサルタントとして大手飲料メーカー、食品メーカー、金融、地方自治体など、数多くの企業のSNSマーケティング支援に従事。 現在はエバンジェリストとして、社内外を問わずSNSマーケティングに関するセミナーや勉強会などに多数登壇。コムニコで培った知見を生かして一般社団法人SNSエキスパート協会の認定講師としても活動しており、SNSの正しい知識を持つ人材育成に注力する。


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