ビジネスの世界に必勝法はないが、「これはやったら絶対失敗する」というような“必敗法”はある。そして、それを学べば成功確率は上がるはず。優良通販企業のトップが失敗経験から得た学びとは?
売れるネット広告社は2023年6月15日、D2C(ネット通販)の事業主を対象としたイベント「『D2Cの会』フォーラム2023」を開催した。本連載ではキーノートセッション「D2C業界のしくじり先生」のハイライトを紹介する。登壇者はオルビス代表取締役社長の小林琢磨氏、北の達人コーポレーション代表取締役社長の木下勝寿氏、やずや代表取締役社長の矢頭徹氏。それぞれがD2Cビジネスにおける自身の失敗体験を披露しながら、そこから得た教訓や成功のノウハウを語った。
最初にマイクを取ったのは小林氏。紹介したしくじりエピソードは「データ分析に溺れる(データドリブンを合言葉に)」というものだ。小林氏は、同じポーラ・オルビスグループ内の社内ベンチャーで自ら立ち上げた敏感肌専門ブランドDECENCIAの社長を8年務めた後、2017年に現職に就任している。
当時、DECENCIAのSKU(品目数)は25程度で売上高は約50億円だったが、一方でオルビスのSKUは1000程度で売上高も400億円に達していた。年に1度以上購入するアクティブ顧客は250万人いたがDECENCIAでやってきたような定期購入の仕組みがなかったため、それを取り入れて収益を安定化させようというのが当時の課題だった。幸い、オルビスには膨大なデータがあり、それを分析するアナリストチームと優秀な人材もそろっていた。そこで「膨大なデータが宝の山に見えた。優秀なアナリストがいて、データを掘り続ければ活路は見いだせるはずと考えた」(小林氏)
そして、CPO(注文獲得単価)やLTV(顧客生涯価値)などの分析に没頭した。ところが一向に売り上げは向上しない。当時を振り返って小林氏は「どんなにデータを掘り続けても、しょせんデータは過去のもの。かつ相関関係しか分からない。『過去にこういうタイミングでこのセグメントにメールを打ったらこのくらいレスポンスが上がった』みたいなものの積み重ねなので、因果関係は見いだせない。そこに気付くのに時間がかかってしまった」と語る。
因果関係が見いだせないということは、顧客像が明確に見えていないということだ。「大切なのは顧客を理解すること。インサイトを基に仮説を立てて、それを検証するためにデータを分析するという順番でなくてはならない」と小林氏。現在では四半期に1回、顧客向けイベントを開催するなどして、直接顧客の声を聞き、仮説検証を徹底しているという。
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