あなたの会社は顧客志向の変化に追いついているか?Maker’s Voice

いまだ多くの企業はソーシャルメディアに未対応で、顧客の声を無視し続けていると米Genesysは指摘する。

» 2012年03月08日 13時00分 公開
[聞き手:伏見学,ITmedia]

 長年にわたり仏Alcatel-Lucentの傘下にあったコンタクトセンター製品ベンダーの米Genesysは、投資ファンドを新たな資本提供元として再出発した。今後のビジネス展望などについて、同社 グローバルセールス担当バイスプレジデントのTom Eggemeier氏と、製品マネジメント担当バイスプレジデントのMerijn te Booij氏に聞いた。

Tom Eggemeier氏(左)とMerijn te Booij氏 Tom Eggemeier氏(左)とMerijn te Booij氏

Alcatelは今後も重要なパートナー

──このたび経営体制が大きく変わりました。

Eggemeier 当社Genesysの親会社だったAlcatel-Lucentが投資ファンドの英Permiraと米Technology Crossover Ventures(TCV)に15億ドルで事業売却したことにより、2012年2月1日から独立企業として再スタートしました。

 この投資会社はともに成長分野に注力しており、Permira傘下の企業は年率平均20%程度で成長しています。TCVも、米Facebook、米Groupon、米Netflixなど高成長を遂げている企業に投資しています。

 Alcatel-Lucentは10年以上にわたり素晴らしいオーナー企業でしたが、同社は年間収益150億ドル規模の企業であり、さまざまな分野に興味が分散していました。新しくオーナーとなった2社は、特に高成長企業やソフトウェア関連企業を関心の対象としているので、経営に対して的確なアドバイスを示してくれます。また、これまでGenesysはM&A(企業の合併、買収)に対して積極的に取り組んできませんでしたが、今後は成長の機会を拡大するためにM&Aやイノベーションへの投資が増えていくでしょう。

 事業の体制が変更しても、技術や戦略は変わりません。経営陣メンバーもほぼ変化ありませんが、Genesysの経営に専念できるようになったため、注力すべき点は大きく変わりました。例えば、私はこれまでPBX関連やデータネットワーキング関連などさまざまなビジネス分野を担当しており、仕事全体の25%しかGenesysの事業に割いていませんでした。今は完全にGenesysの専任として経営に当たっています。ほかの経営陣も同様です。

──今後、製品開発などにおいてAlcatel Lucentによる技術はどう補っていくのでしょうか。

Booij Genesysはこれまでもエンタープライズ製品に注力してきたし、その中でイノベーションも行ってきました。Alcatelとは今後も大きなパートナー関係であることは変わりないと考えています。グローバルでもパートナーシップを強化していけるはずです。

Twitterでの問い合わせを“無視”

──“新生Genesys”が注力する分野や戦略の方向性について教えてください。

Eggemeier 「悪い顧客サービスからユーザーを救う」ことをモットーに、我々は技術だけではなく、ビジネスプロセスや人材も含めて包括的にサービスを提供しています。Genesysにいる1800人の社員は、ユーザー企業のビジネス状況を踏まえて、専門的な見地から顧客満足度を高めるための施策を提案できます。

 私は5年間フランスに在住していましたが、日本人や米国人にとって、フランスは顧客サービスが悪いという印象を持つでしょう。実際にその通りだと思います。ただ、2年ほど住んでいると、地元のパン屋や肉屋などは私の顔を覚えてくれて、馴染みの顧客には最高のサービスを提供してくれるのです。これは個人的な関係性が顧客と店との間にあるから実現するわけですが、Genesysはまさにこのようにパーソナル化された顧客サービスを可能にする技術を持っています。

Booij 顧客の行動は日々変わっていくので、顧客サービスも変化していかなければなりません。ソーシャルメディアやスマートフォンなどの新しいトレンドに対し、Genesysは業界の先頭に立ってソリューションを提供しています。

 特にソーシャルメディアの重要性を企業は認識すべきでしょう。昨晩、サンフランシスコから東京に来る際にある航空会社を利用したのですが、座席をアップグレードしようとしても何らかの理由でアップグレードされませんでした。不満に感じてTwitterでツイートしました。こうした顧客への対応について、まずは航空会社がソーシャルメディアをモニタリングしていることが必要です。モニタリングしていれば顧客状況を把握できるのですが、それだけでは顧客エンゲージメントとはいえません。ソーシャルメディア上のさまざまな書き込みをデータマイニングすることで、顧客が満足か不満か、中立かといったことは分かりますが、不十分です。ソーシャルメディアを顧客サービスの1つのチャネルとして活用すべきなのです。

 これまで顧客と企業は1対1の関係でしたが、現在は多くの顧客がいろいろなチャネルを使って企業とやり取りするようになっています。例えば、不平不満を言うにしても、電話やメールで企業に直接伝えることもあれば、TwitterやFacebook、ブログで批判することもあります。企業側は異なるチャネルをすべて取り込んで、顧客の声を吸い上げていかなければなりません。

Eggemeier ところがどうでしょう。現在、顧客がFacebookやtwitterで意見を述べても、ほとんどの企業は何の反応もしていません。もし顧客が不満を電話やメールで連絡してきたら、無視するということはありえないことですよね。我々はそこにビジネスチャンスがあると考えています。

 ソーシャルメディアをマーケティングの観点からモニタリングするだけではなく、メールや電話で顧客個人から問い合わせがあったのと同じようにきちんと反応するのが、真の顧客サービスです。例えばTwitterだと、1対1という閉ざされた空間ではなくパブリックの場で顧客は意見表明しているわけですから、実は企業はこちらの意見に対してより素早く対応しなければならないのです。

パーソナル化した顧客サービスに不可欠なリアルタイム性

──「ビッグデータ」への対応について、Genesysの取り組みをお聞かせください。

Booij コンタクトセンターはデータを大量に生成する立場にあるため、我々はビックデータに深くかかわっているといえるでしょう。現在、膨大なデータが企業の中にあるものの、ほとんどの人がデータの内容を理解していないし、使いこなせていません。次のバージョンとなるコンタクトセンター向けパッケージ製品「Genesys9」では、例えば企業に散在するあらゆるデータを可視化できる機能など、ビッグデータへの対応を積極的に進めていく予定です。

Eggemeier もはやCIO(最高情報責任者)だけでなく、顧客サービスの責任者であるCMO(最高マーケティング責任者)やCEOにとってもビッグデータは大きな関心事です。今までは事業計画のサイクルを1年間というスパンで考えていた企業も、今後はリアルタイムでビジネス戦略を立案し、リアルタイムで適宜調整していかなければなりません。顧客に関するさまざまなデータをリアルタイムで生かしていくことが、よりパーソナル化した顧客サービスにつながっていくのです。

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