「朝起きてまず、TwitterやFacebook、メールなどをチェックするという人はどれくらいいるか」という勝間氏の問いかけに、会場に集った人々の大多数が手を上げた。
ソーシャルメディアなどが普及する以前、人々が朝起きて真っ先にチェックするのはテレビだったと勝間氏は話す。だが、チェックする対象がテレビからソーシャルメディアに変わった今でも、これらの行為の目的は共通しているという。
「人々が朝テレビを見るのは、自分が情報を得て楽しむためではなく、学校の友人や会社の同僚などとコミュニケーションするための共通の話題を得ることが目的だった。今マスメディアが弱体化していると言われているのは、コミュニケーションのための“共通のコンテンツ”としての価値が薄れつつあるということが原因ではないか」(勝間氏)
共通のコンテンツによって、人々をつなぐ――それがソーシャルメディアのもたらす大きな価値だと勝間氏は言う。「運が良い、悪いといった言い方があるが、それは要するにどれだけ多くの良い出会いがあるかということだと思う。例えば良い師や良い環境、良い勉強などとの出会いの有無が、その人の幸せを大きく左右する。こうした意味で、ソーシャルメディアは“運を良くしてくれるツール”だと解釈している」
だが、ソーシャルメディアを利用して多くの人々とつながりを作っても、それだけで生まれる価値は「大したことはない」と勝間氏。「わたしはTwitterで53万人のフォロワーがいるが、そのうち自分の投稿にレスポンスを示してくれる人はせいぜい2〜5%程度。本当に情報を伝えたいならば、直接会って話をしないと何も伝わらない」という。
その上で、企業や個人がソーシャルメディアを使って生産性を向上させたり変革を起こしたりするためには、「ソーシャルメディアでつながりを持った人にどんどん会うことが大切」と勝間氏は強調する。「ネット上で興味を持った人に実際に会って話すことで、新たなきっかけが生まれる。ソーシャルメディアのインパクトは、イノベーションの入り口を拡大することだ」
ソーシャルメディアなどのプラットフォーム上で、出会いやイノベーションといった“偶然”を必然に近づけるためには「プラットフォーム上に一定のルールや制約を設けることが必要」と國領教授は話す。
「インターネットは本来誰とでもつながれる空間なのに、多くのソーシャルメディアはユーザーの友人同士でしかつながらない仕組みになっている。そのようにつながりの範囲を限定することで、逆にユーザー同士がつながりやすいような環境ができている」(國領教授)
このことについて勝間氏は「イノベーションを生み出すためには、非常にクローズドなグループの中で議論を重ねることが求められる」と意見を重ねた。その上で、「プラットフォームの中でリーダーシップを持ったモデレーターが、共通の目的のもとでグループを作っていくことが重要」(勝間氏)という。
「例えばファミリーレストランに人々が集まってただ会話していてもイノベーションは生まれない。FacebookやTwitterは非常に優秀なプラットフォームだと思うが、重要なのはそこで誰かが目的を持ってFacebookページを作ったり、ハッシュタグを使ったりしてグループを作っていくこと。イノベーションが創出される環境はプラットフォーム側が用意するものではなく、あくまでリーダーシップを持った個人が作り出していくものだ」(勝間氏)
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