ファンケル、年50万件の問い合わせ「AIが分析」 コンタクトセンター業務はどう変わった?(2/2 ページ)

» 2026年10月29日 06時00分 公開
[濱川太一,ITmedia]
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通話の全文をAIで分析 記録業務は46%削減見込み

 こうした業務を効率化するために構築したのが、FANCL COE LINKだ。通話内容を自動でテキスト化し、オペレーターが手作業で要約しなくても、会話の記録をVOC分析に利用できるようにした。AIが要約や話題の抽出を行い、定期購入や応対への評価など、複数の観点からタグを付ける。

 佐野氏は、会話の全文を利用できるメリットについて「会話までたどっていけば、どこでつまずいているのか、画面のどこに問題がありそうなのかというところまで、具体的に把握できる」と話す。

 従来は、問い合わせのカテゴリー別の増減や、コンタクトセンターの現場で感じる「このことに関してクレームが多い」といった感覚を手掛かりに、担当者が個別に調べていた。新基盤ではAIによる分類や集計を活用し、データの整理に費やしていた時間を、内容の分析に振り向けることを目指す。

 導入したAI技術は具体的に3つある。

 音声認識AIは、通話の文字起こしと要約を担う。ファンケルは、通話後に行う記録業務の時間を約46%削減できると見込む。

 声分析AIは、会話のテキストと顧客属性や購買履歴などを連携し、顧客の声を分析する。年齢や性別、居住地域、購入回数、直近の購入時期などの情報を声のデータにひも付け、どのような顧客がどんな声を寄せているのかを把握する。個人情報そのものはVOC分析基盤に取り込まず、分析に必要な属性情報を連携する。

 応対品質評価AIは、オペレーターの応対品質の評価を支援する。これまでは評価担当者が通話音声を聞き、評価シートに記入していた。新基盤では、あらかじめ設定した評価基準に沿ってAIが評価点と根拠を生成する。これにより、評価のために通話を聞く作業をなくせるという。

音声分析にはモビルス(東京都品川区)の「MooA CommNavi」(ムーア コミュナビ)、声分析にはRightTouch(東京都品川区)の「QANT VoC」を、応対品質評価にはRightTouch(東京都品川区)の「QANT VoC」を活用(ファンケル提供)

 一方、評価後のフィードバックは引き続き人が担う。「空いた時間でよりトレーニングや教育に時間を振り向けたい」と佐野氏は話す。

「FANCL COE LINK」の活用イメージ。左:声分析AI 「QANT VoC」画面。右:音声認識AI「MooA CommNaviムーア(ムーア コミュナビ)」 を使用した応対中の様子(ファンケル提供)

仕組みとコミュニケーションの両立が大事

 AIによる分析には課題も残る。要約や話題の抽出は「精度が高くて、ほとんど直す必要がない形」になっているという。一方、VOCの分類やタグ付けでは、意図した分類にならなかったり、不要なタグが付いたりするケースがある。

 商品数の多さも難しさの一つだ。同社では化粧品や健康食品など多くの商品を扱う。会話に出てきた商品とは別の商品に分類されたり、該当商品の集計に反映されなかったりすることもある。現在はプロンプトを調整しながら、分析精度の向上を進めている。

 VOCは現在も、経営層への定期報告や、通販・店舗・卸売りなど関係部門との会議、社内イントラネットで共有し活用している。今後、各部門がテーマ別に顧客の声を確認できるダッシュボードの整備も進める方針だという。

 「仕組みだけ作ってもなかなか回っていかないので、コミュニケーションをしっかりと取っていく」と佐野氏は話す。各部門の予定に合わせて関連する声を届けるなど、分析結果を社内の改善につなげる仕組みづくりも課題となる。

 「お客さまの本音を理解し、そこをつかむところが、これから目指していく進化」。蓄積した情報を分析し、関連部門へ適切に還元する仕組みを整えながら、顧客理解とブランドへの信頼向上につなげていく。

ファンケルCXデザイン部長の佐野博一氏(筆者撮影)
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