生成AIが主流になるこれからの検索で企業にはどのような姿勢が求められるのでしょうか。
2022年11月にChatGPTがリリースされてから2年以上が経過し、生成AIのビジネス活用が急速に拡大しています。本記事では生成AI検索が2025年時点で企業の売り上げにどれだけ寄与しているか、その現在地について解説します。
Statistaとsemrush.Trendsのレポート(外部リンク/英語)によると、生成AI市場は2024年に670億ドル規模に達し、2030年までに年平均24.4%の成長が予測されています。
さらに注目すべきは、ChatGPTのクエリの70%が従来の検索エンジンにない新しい検索意図を含んでいる点です。これは、生成AIが単なる効率化ツールを超え、ユーザーの情報探索行動を根本的に変革していることを示唆しています。野村総合研究所の調査(外部リンク)によると、日本におけるChatGPTの認知率は72.2%、利用率は20.4%に達しており、特に企業での活用が進んでいます。この急速な普及は、生成AIが今後のビジネス戦略に不可欠な要素となることを示しています。
ChatGPT検索の登場は、デジタルマーケティングに大きな変革をもたらしています。Semrushの8000万件のクリックストリームデータ分析(外部リンク/英語)によると、ChatGPTがWebトラフィックを送客する役割が急速に拡大しており、2024年11月には1日当たり3万以上のユニークドメインにトラフィックを送っています。
注目すべきはChatGPTの利用方法です。ChatGPTには検索機能のON/OFFの設定があり、OFFの場合はChatGPTの内部知識のみ、ONにするとリアルタイムのWebデータを活用するといった違いがあります。調査の結果、54%の検索クエリが検索機能OFFで処理され、46%が検索機能ONで利用されています。さらに、検索クエリの長さにも顕著な違いが見られ、検索機能OFF時は平均23単語、ON時は平均4.2単語となっています。
この傾向は、ユーザーの検索行動が従来のSEO戦略とは異なる方向に進化していることを示唆しています。これらの変化に対応するため、デジタルマーケターは従来のキーワード最適化だけでなく、質問と回答の形式を意識したコンテンツ設計や、文脈を考慮した情報提供など、新しいアプローチが求められています。AI時代のSEO戦略には、自然な会話調の文章作成や検索ユーザーのインサイトに基づいたコンテンツ設計が不可欠となるでしょう。
AI検索の台頭により、特定の業界で売り上げが伸びる可能性が高まっています。ChatGPTを介したWebトラフィック分析によると、オンラインサービス、教育・遠隔学習、情報技術・ソフトウェア開発の分野が特に恩恵を受けています。これらの業界では、それぞれ1000万以上、900万以上、780万のセッションを記録しました。
小売、金融、ヘルスケアも、それぞれ190万、160万、150万のセッションを獲得し、AI検索による影響が顕著です。特に教育・研究・技術関連のサイトでは高いトラフィック増加が見られ、ChatGPTが知識探索ツールとして活用されている傾向が強く見られます。
Semrush Trendsデータによると、2024年12月時点でのユーザー数はGoogleが65億人、ChatGPTが5億6600万人となっています。GoogleのシェアはまだChatGPTを大きく上回っていますが、ChatGPTの利用者数は着実に増加しています。特に、技術志向や教育関連のユーザーがChatGPTを好む傾向にあります。
これらのデータから、AI検索を活用したマーケティング戦略を展開することで、特にテクノロジー、教育、オンラインサービス業界において売り上げ増加が期待できると言えるでしょう。
さらに生成AI検索の利用者拡大の要因となりうるトピックとして、2025年2月よりMicrosoftは検索エンジンBingにおいて、新機能「AI Search」(AI検索)の試験運用を開始しました。AI Searchでは従来の青いリンクによる検索結果を、AIによる要約回答へと置き換えることを目指しています。
AI Searchは、ChatGPTのような会話型AIと従来の検索エンジンの間のギャップを埋めるMicrosoftの戦略の一環です。GoogleのAI OverviewやChatGPT Searchと同様に、AIが複数のWebサイトの情報を統合し、概要と関連リンクを提示する仕組みとなっています。
しかし、現時点では競合サービスとの違いがあまりなく、新規性に乏しい印象もあります。今後は、提供される情報の詳細さや信頼性が競争のカギを握るでしょう。特に、最新の正確な情報をどれだけ提供できるかが、差別化のポイントとなりそうです。
ここまで生成AI検索の普及による検索市場の伸びや最新の生成AI検索を紹介してきましたが、結論として生成AI検索で企業の売り上げはプラスになっていくことが予測されます。
従来の検索と比べ、生成AI検索は利用者の敷居が低く、希望する情報やサイトに容易にアクセスできます。音声検索との相性が良く、会話型インターフェースにより頻繁な利用が見込まれ、ユーザーの情報アクセスが容易になり、企業にとっては顧客接点の増加や業務効率の向上につながる可能性が高いでしょう。
そこでこのような変化に対応するため、企業にはSEO対策の新たな戦略的転換が求められます。AIが正確に理解できる一貫性のあるコンテンツ作成が重要で、E-E-A-T(経験、専門性、権威性、信頼性)の原則に基づく発信者の権威性向上も必要です。また、生成AI検索は従来のSEO以上に頻繁に仕様が変更されるため、継続的な対応が不可欠です。
また、生成AIの多様な検索パターンに対応するには、膨大なデータ分析とAI・機械学習・自然言語処理などの専門知識が必要となります。よって、SEO代理店には高度な専門性が求められ、企業にとっても適切な外部リソースの選定や高度な知識を持つ人材の採用が今後の課題として考えられます。
生成AIには、AIの誤解によるブランドイメージ毀損リスクや広告収益の変動が問題として挙げられますが、適切に活用すれば検索時間の大幅な短縮や広告効果の向上など、競争力強化に直結する効果が得られます。今後企業として生成AI検索を「顧客の代理人」と位置付け、継続的なコンテンツ最適化と技術トレンドの監視がビジネス成功の成否を分けるでしょう。
田中雄太
たなか・ゆうた デジタルアイデンティティ SEOエヴァンジェリスト、コンサルタント。SEO集客からの売り上げ・問い合わせ増加など、セールスファネル全体のコンサルティングが可能。『薬機法管理者』の資格を有し、表現の規制が厳しい薬機法関連分野のマーケティングにも精通。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.