TikTokは米国で約20時間のサービス停止を経て、再び利用可能になった。
数カ月にわたる上院公聴会、法的異議申し立て、そして同アプリに対する何年ものサイバーセキュリティ調査の末、米国でTikTokは禁止された。しかし、その決定は約20時間で覆された。
TikTokは2025年1月18日(米国時間)遅くに米国政府の売却法に従って遮断されたが、次期大統領のドナルド・トランプ氏が就任日に法律の適用を延期する大統領令を出す方針を表明したことを受け、米国で再び利用可能になった。
米国人がアプリを開くと、トランプ次期大統領をの尽力を称えるポップアップ通知が表示される。そこでトランプ氏は英雄として描かれている。トランプ氏はこれを間違いなく気に入るだろう。
しかし、明確にしておくと、TikTokは実際には完全に復活したわけではない。少なくとも、通常通りの運営には戻っていない。
1月18日から19日にかけて、次期トランプ政権は米国でTikTokを支援する企業(アプリストアやバックエンドプロバイダーなど)に対し、売却法案(外部リンク/英語)に違反してアプリのサポートを継続するよう圧力をかけてきた。
トランプ氏は自身が運営するTrump Media & Technology Groupのソーシャルメディア「Truth Social」において、次のように述べている(外部リンク/英語)
私は企業にTikTokを停止させないよう求めている。月曜日に大統領令を出し、法律の禁止事項が発効するまでの期間を延長する。これにより、国家安全保障を守るための取引ができるようになる。また、この命令では、私の命令の前にTikTokを停止させなかった企業に対する責任は問わないことを確認する。
トランプ氏の保証にもかかわらず、AppleとGoogleは法案の文言に反するリスクがあるため、TikTokをアプリストアに戻すことを拒否している。これは金銭的な罰則を受ける可能性があるためだ。
法案には次のように明記されている。
外国の敵対者が管理するアプリケーションを配布、維持、または更新すること(または配布、維持、更新を可能にすること)は違法とする。(a)項に違反した事業体は、ユーザー数に5000ドルを乗じた金額を超えない範囲で民事罰を支払わなければならない。
つまり、法案には、そのようなことを可能にするプロバイダーに民事罰を課すことが明確にされている。トランプ氏はこれを無視するよう求め、もしそうすれば保護すると言っているのだ。
トランプ氏の保証はアプリストアにとっては十分ではなかったが、TikTokのデータをホストし、アプリの日常的な機能をサポートしているOracleにとっては十分だったようだ。
結果、TikTokはすでにアプリをダウンロードしているほとんどの米国ユーザーにとって再び機能するようになったが、現状では新規にアプリをダウンロードすることはできないというわけだ。
従って、TikTokは完全復活したわけではない。だが、ほぼ復活したようなもので、人々は再び使用できるようになった。
ただし、これは後になって法的な地雷原となる可能性がある。次期大統領が実質的に自身の目的のためにこれらのプロバイダーに法律違反を助言しているからだ。トランプ氏は現時点ではまだ大統領ではない。故に、そのような保証を実際に提供することはできない。また、法案がすでに制定された後で、TikTokを米国の所有者に売却する期限を実際に延期できるのかという疑問もある。
これはトランプ次期政権および訴追からの救済をトランプに頼っているOracleにとって、大きな頭痛の種となる可能性がある。しかしトランプ氏は、法律の施行を回避し、より良い取引を行うことができると確信している。そしてTikTokが米国で利用可能なままとなり、外国の敵対者が管理するアプリケーション法で提起された懸念にも対処できる、と。
しかし、TikTokとその親会社である中国企業(Bytedance)は、トランプ氏の同アプリに関する議論(外部リンク/英語)の以下の部分にはあまり興奮しなかったかもしれない
私は、合弁事業において米国が50%の所有権を持つことを望んでいる。これによって、TikTokを救い、良い手に委ね、存続させることができる。米国の承認なしにはTikTokは存在しない。われわれの承認があれば、数千億ドル、もしかすると数兆ドルの価値がある。
つまり、トランプ氏はこれを安全性の懸念というよりも金銭的な取引と捉えているのだ。結果としてトランプ氏が承認する米国の受益者には利益をもたらす一方で、TikTokは国内収入のかなりの部分を失うことになるかもしれない。
そして、米国政府がこのような法案を制定すれば、他の国々も同様の法案を実施しようとするだろう。表向きは地域のユーザーデータを保護するためだが、直接的な金銭的利益と課税利益も得られるからだ。
TikTokの「復活」にはまだ道のりがあるようだ。しかし、どうやらTikTokユーザーが代替アプリを探す必要はなさそうだ。
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