「広告主のX離れ」は続く? IBM、アップル、ディズニーもマスク氏の言動にドン引きSocial Media Today

Xにおける反ユダヤ主義論争が巻き起こる中、Xへの広告出稿を停止する大手広告主が続出した。今後も起こり得るこの問題にXとイーロン・マスク氏は対処できるのか。

» 2023年11月29日 12時00分 公開
[Andrew HutchinsonSocial Media Today]
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 イーロン・マスク氏とXのCEOであるリンダ・ヤッカリーノ氏は、Xのプロジェクトについて「退屈させない」と、繰り返し称賛している。だが、ホリデーシーズン目前に起こった幾つかの出来事によって、比較的退屈な時期が訪れて2人ともホッとするのではないだろうか。

 Xはこの2023年11月半ばに多くの新たな試練に見舞われたが、そのほとんどはマスク氏自身の発言やさまざまな問題に対する公的スタンスに起因するものだった。

Xの誤報取り締まりの努力は「不十分」

 最近起きたことをまとめると、次のようになる。

  • ヘイトスピーチ監視団体CCDH(Center for Countering Digital Hate)による新たな分析報告書は、Xがイスラエルとハマスの戦争にまつわる誤った情報に対して十分な対策を取っていないことを示唆した。このことはいみじくもX自身が示した数字によって裏付けられている(※)。
  • この報告や他の報道に基づいて2023年11月17日、欧州委員会は「偽情報の拡散に関する広範な懸念」を理由に、Xへの広告掲載を停止すると発表した。
  • 翌日、IBMはXが親ナチスのコンテンツと並行して有料プロモーションをインストリームに掲載していることを示した。Media Mattersの新たなレポート(外部リンク/英語)を受けて、Xにおける全ての広告を停止すると発表した。
  • 同じ日にマスク氏は、長年にわたるユダヤ人に対するさまざまな攻撃に関連してきたXに関する反ユダヤ主義的な主張を拡散し、支持を表明した。
  • マスク氏の投稿を受けて、AppleやDisneyなど、幾つかの大手広告主もX広告キャンペーンを一時停止すると発表した。この新たなボイコットに参加する広告主のリストは刻々と増加している。
  • 連邦裁判所は、FTCによる1億5000万ドルの罰金(以前のTwitter管理下での行為に起因するもの)を取り消しを求めるXの提訴を棄却した。
  • 別件として、FTCに対してはある業界監視機関がXの新しい広告フォーマットを調査するよう求めている。その内容は今のところあまり明らかにされていないものの、これにより場合によってはXの広告慣行に対する新たな調査が行われる可能性がある。

※編注:イスラエルとハマスの戦争にまつわる誤報取り締まりについて、例えばTikTokは2024年10月の削除件数が165万5000件に上ったと発表している(外部リンク/英語)。これに対して同月のXの削除件数は32万5000件(外部リンク/英語)と、はるかに少ない。

 マスク氏とXの経営陣にとっては散々な日々だったろう。しかし、「言論の自由」に配慮した新生Xはモデレーションという重要なタスク管理の多くを「コミュニティノート」を通じたクラウドソーシングに依存している。しかし、数々の調査結果を見る限り、それに十分な対処能力があるとは言えないのは明らかだ。

 もちろんそれが最大の懸念事項というわけではないが、2023年11月第3週におけるXのビジネス上の中心的な問題はマスク氏の発言であった。

 マスク氏はこの点に関しては以前から反抗的で、たとえそれが結果として損失を出すことになろうとも、Xの中では自分の言いたいことを言うと、繰り返し述べてきた。

 そして、彼は自分の発言の代償がいかに高くつくかを知りつつあるようだ。念のため言っておくと、Xの広告収入はすでに前年比で少なくとも50%減少している。そのため、主要なブランドパートナーを失うことは、事業継続の観点で大きな意味を持つことになる。

 というのも、マスク氏は既に従業員の80%を削減し、データセンターを閉鎖し、旧Twitterブランドにまつわるアイテムをオークションで売却するなどして、大幅なコスト削減を行っている。やれるだけのことをやってなお、採算ラインにギリギリのところにいるのが、今のXなのだ。

 最近のインタビューでヤッカリーノ氏は、Xは2024年の初めに黒字化に近づく可能性があると述べたが、その主張はアプリの上位100社の広告主の90%がここ数カ月でXに戻ってきた事実に基づいている。

 今、彼らの多くが再び去っていこうとしている。そして、AppleがX広告を停止する決定を発表して大きな声明を発表したことで、さらに多くの有名企業が追随することが予想される。

 この間もMetaのX代替リアルタイムアプリ「Threads」は着々と成長を続け、特にマスク氏が嘲笑し続けているジャーナリストたちの間で、より大きなニュース議論の場として使われるようになっている。

 これは、Xの業績回復への努力に悪影響を及ぼす新たな要素となるかもしれない。マスク氏はIBMがXの広告を停止する決定を下したことをやゆする投稿を取り上げ、いつものように「レガシーメディア」攻撃している。レガシーメディアが広告費をめぐってXと競合するため、マスク氏を阻止し、彼の言論の自由を破壊するために結託しているというのはお決まりのストーリーだが、誰も彼の言うことを本気で問題視していない。

 それはシンプルに言って事実ではないし、根拠がないし、どのような形でも実現可能な話でもない。実際、Appleをはじめ多くの有名ブランドは、マスク氏がおかしな行動を続けていてもなお、これまでXにとどまり続けてきた。しかし今、彼らを当酒用としているのはマスク氏の発言とスタンスだ。これはメディアの描いたシナリオでもなければ、"本当の真実 "を封じ込めようとする陰謀でもない。Xの問題の責任を負う唯一の人物はマスク氏自身なのだ。

 前述したようにマスク氏は自由な発言のためならお金を失っても構わないと言っている。しかし、広告主が減少している今、ヤッカリーノ氏らによるダメージコントロールの努力が(広告主離脱の)大波を食い止めることができなければ、それは直ちにXの存続を脅かす可能性がある。

 そして、今回はまさにその大波が来ており、多くの人が限界まであと一歩と見ているように感じる。実際、Teslaの主要な投資家の中にも、マスク氏の最新のコメントは行き過ぎだと宣言し、顧客に彼のプロジェクトから撤退するようアドバイスしている人もいる。

 マスクとXにとって、これは大きな転機となるのだろうか。そしてXの真のライバルとしてThreadsの台頭に拍車をかけることになるのだろうか。

 ある意味ではすでにそうなっているが、マスク氏は彼なりの頑固なやり方で、自分のコメントが不快感を与えた可能性があることをしぶしぶ認めているようだ(外部リンク/英語)。

 彼は謝罪していないし、後退もしていない。しかし、おそらくこの次のステップに進むことが、現段階では混乱から抜け出す唯一の方法だろう。

 実際、マスク氏にそれができるだろうか。一歩前に出て、自分が間違っていたことを認め、状況を是正する措置を取ることを彼のエゴが許すだろうか。また、それができたとして、広告収入を取り戻すのに十分だろうか。

 一年で最大の広告費支出期を前にして、マスク氏の数々の発言はどこから見てもひどいものだ。もしかして、それらはXの終わりの始まりなのだろうか。

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