2023年10月の酒税改正により、ビールカテゴリーでは「値下げになるビール」と「値上げになる新ジャンル」の売り上げ動向が注目されています。実売データに基づきビール類の情勢変化を見てみると……。
2023年10月の酒税改正により、ビールは350ml当たり約6.7円の減税となりました。一方、いわゆる「第3のビール」に相当する新ジャンルは350ml当たり約9.2円の増税となりました。
カタリナマーケティングジャパンは酒税改正後のビール類の情勢変化について実購買データを基に調査を行い、その結果を発表しました。実購買データは2022年8月1日から2023年10月22日までの64週間全てにわたってアルコールの取り扱いのあるカタリナネットワークの店舗(約4200店舗)から抽出しています。
今回の酒税改正でカタリナネットワーク内におけるビールの平均購入単価は約11円の値下げとなっていますが、9月最終週と10月最初週の売り上げは1.8%の増加と、目立った変化は見られませんでした。ちょうど1年前の2022年10月に14年ぶりの卸売り価格の値上げ(平均購入単価は7円増)があった際、値上げ直前の9月に買いだめが発生して売り上げ金額が増加し、その反動で10月に買い控えが発生して売り上げ金額が減少するなど大きな波があったのと対照的です。
一方、新ジャンルは、約6割減と大きく落ち込んだことが分かりました。ビールカテゴリと同様、新ジャンルカテゴリも2022年10月に卸売り価格の値上げがありました。その際の平均購入単価は約7円の値上げとなりましたが、今回の酒税改正では約13円の値上げとなっています。平均購入単価の上昇幅は今回の方が大きいにもかかわらわらず9月の買いだめは2022年の方が大きく、値上げの反動の買い控えは今回の方が強く出ています。また、2023年は買い控え後の需要の戻りが鈍く、売り上げが低いまま推移しています。
酒税改正でビールと新ジャンルの価格差が縮まり、新ジャンルからビールへのカテゴリスイッチが期待されましたが、今回の調査結果からはその傾向は見られません。わずかばかりの値下がりに消費を底上げするまでのパワーはなく、一方でより価格に敏感な消費者が好むカテゴリである新ジャンルの値上げは(2年連続ということもあって)消費者の購入意欲を下げてしまう結果になったと言えそうです。
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