「巣ごもり消費」で選ばれるブランドになる「シャンパンタワー型コミュニケーション戦略」のすすめ統合型PRと広報効果測定のデータ活用【前編】(1/2 ページ)

「巣ごもり消費」はPRをどう変えたのか。コロナ禍における需要喚起に有効なB2C向けの統合型PRと、DXが進む広報効果測定に関する基本知識とメソッドをご紹介します。

» 2021年10月21日 08時00分 公開
[長沢美香ビルコム]

 皆さん、こんにちは。ビルコムの長沢美香です。当社は複数のメディアを横断して生活者と企業をつなぐ「統合型PR」に強みを持つPRエージェンシーです。また、広報業務のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を促す効果測定SaaSツール「PR Analyzer」を提供しており、PRを科学することを目指しています。

 2020年4月以降、コロナ禍で人々の消費行動は大きく変わりました。商品やサービスを選択する生活者の目が一層厳しくなる中、外出自粛の影響で注目を集めるようになったのが「巣ごもり消費」と呼ばれるトレンドです。目まぐるしく変化する市場に対して、マーケターの皆さまも潜在ニーズの掘り起こしに向けて試行錯誤を続けているはず。正解が見えない状況が続く中で、当社でも巣ごもり需要を狙った市場創造のためにPRセミナーを開催し、多くのマーケターの方々に参加いただいています。

 本稿では「統合型PR」の観点から、コロナ収束後まで見据えた消費の需要喚起策ならびに購買行動を後押しする施策、広報効果測定の重要性について、2回に分けて解説します。

企業と生活者をつなぐ「市場創造記号」

 情報やモノがあふれている現代は、商品やサービスがコモディティ化しています。そのため、機能性や価格などを訴求するだけでは差別化が難しく、生活者に響きにくくなっているのが現状です。

 この傾向は以前からありましたが、コロナ禍でさらに加速しました。原因の一つは、買い物時間の短縮と頻度の低下です。コロナ禍では、スーパーや店舗への長時間滞在を避け、より短い時間で買い物を済ませるという購買行動に変わりました。その結果、常に定番商品が選ばれ、新しい商品との出合いがなくなってしまう傾向があります。

 差別化が難しくなっているもう一つの原因が情報洪水です。情報があふれる中で一つ一つの商品やサービスの魅力が生活者に伝わらず、スルーされてしまうケースがとても多いのです。

 マーケターの皆さんは、このシビアな状況下で、自社商品の価値を生活者に届ける方法を模索していることでしょうが、一方の生活者は多種多様な品物の中から一つの商品を選ばなければなりません。選ぶためには理由が必要です。例えば「このメーカーは食品ロスに力を入れているから買う」「この家電なら年間○○%省エネになる」などの大義名分を見つけて、商品を選ぶようになっているのです。

 商品・サービスの差別化をしたい企業と、買う理由を探す生活者。この双方をつなぐのが「市場創造記号」です。これは当社の造語で、商品やサービスと生活者の接点づくりを意味しています。市場創造記号を使ってコミュニケーションすることで、既存商品に新たな顧客提供価値が生まれ、これまでとは異なる市場を創造することができるのです。

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