「ビジネスライフをブログで救われた」 アジャイルメディア徳力基彦氏が情報発信を勧める理由チャレンジするマーケター(1/2 ページ)

B2Bマーケター注目のイベント「Bigbeat LIVE」が2019年8月2日に開催される。そこに登壇する気鋭のマーケターへのインタビューをお届けする。

» 2019年07月17日 18時00分 公開
[濱口 豊ビッグビート]

この連載について

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 ビッグビートの濱口 豊です。私は広告業界で30年、一貫してB2B企業(とりわけIT企業)のマーケティングを支援しています。外資系クライアントとのお付き合いの中、マーケティングの強力なパワーを間近で感じ、日本企業がこの機能をうまく使いこなせば日本の将来に大きなインパクトを与えることができるはずだと考えるようになりました。

 チャレンジするマーケターを応援し続けているビッグビートの根底にあるのは、「マーケティングが変われば経営が変わり、未来がよくなる」という思いです。

 この連載では、そんな「チャレンジするマーケター」たちのキャリアや考え方、生の姿を私とビッグビートのスタッフがご紹介し、マーケターの方々の悩みを解決するヒントや、楽しく仕事をするコツを感じて行動を変えるきっかけを見つけていただきます。


 今回は、アジャイルメディア・ネットワークでアンバサダー/ブロガーとして活躍する徳力基彦氏の元へうかがった。

 徳力氏が持つ顔はさまざまだ。ある人は「有名ブロガーの徳力さん」というかもしれない。別の人にとっては「アジャイルメディア・ネットワーク(以下、アジャイルメディア)の徳力さん」かもしれない。徳力氏はブロガーという個人軸でも活躍しつつ、アジャイルメディアというマザーズ上場企業で、過去に社長や取締役を担ってきた。2019年6月30日にはアジャイルメディアの取締役CMOを退任し、現在は同社のアンバサダー/ブロガーとして活動している。

 徳力氏がブロガーとなり、ブロガーマーケティングと関わるようになったきっかけや今後の活動について聞いた。

徳力さんと濱口さん アジャイルメディアの徳力基彦氏(左)と筆者(右)

ブログがなかったらビジネス人生が終わりだった?

 徳力氏がブログを始めたのは2003年、アリエル・ネットワーク(以下アリエル)にプロダクトマネジメント担当として勤務していたときまでさかのぼる。徳力氏は当時、「やること成すこと全てがうまくいかず、閉塞感があった」と語る。

 新卒で入社したNTTでは法人営業を3年、その後本社のIR担当として持株会社で3年勤務した。安定した企業だったが、巨大企業の中で壁にぶつかり、30歳を手前に「若気の至り」で退職してしまう。その頃、社会人大学院でマーケティングを学んだ。当時を徳力氏は「たまたま評価されて、“自分はマーケティングができる”と過信してしまった」と振り返っている。

 そしてITコンサルティングファームに1年勤務し、アリエルにマーケティング担当として入社した。だが、マーケティング実務経験がなかったため、思うように仕事が回らない日々が続いたという。

 「一番辛かったのは、せっかく優秀なエンジニアがそろっているのに、ビジネス拡大のチャンスとなる業務提携の話がどこからも来なかったこと。私自身は裏方として、優秀なエンジニアやトップを表に立たせることに注力し、自分は社内に閉じこもっていました。秀でた技術力があれば、誰かが声をかけてくれると思っていたのです。しかし、実際にはビジネスは人と人とのつながりで動くもの。社内に閉じこもっていた私にはそれが見えていませんでした」(徳力氏)

 その結果、マーケティング経験者が採用されることになり、徳力氏はマーケティング担当からしりぞくことになる。ブログに出合ったのはそんなときだ。ちょうど「mixi」や「GREE」などのSNSが流行し始めた頃でもあり、徳力氏も友人の招待でGREEに参加する。

「入ってみると、いろんな人同士がつながっていることに気が付きました。今考えれば当たり前ですが、NTT時代には考えもしなかったことです。また、ブログを通じて社外の人とつながり、知識も得られるようになりました。『こうしてネットワークを広げることで、仕事が回っていくこともあるんだ』と気が付いたのです。ブログがなければ、本当に人生が終わっていたかもしれません」(徳力氏)

ブロガーとしての立場からマーケティングを考える

こうして徳力氏のブロガーとしての活動や社外におけるネットワーク活動は広がっていった。徳力氏自身は「私はブロガーとして有名というわけではなく、有名ブロガーをウォッチしているブロガーでした」と評しているが、ブロガー界で知られる存在となり、2006年にアジャイルメディアの立ち上げのプロジェクトに参加した。

当時は数百円で大量のブロガーに記事を書かせる手法が話題となり、一部でブログやブロガーに対して“うさんくさい”見方がされるようになっていた。

 「でも、普通のブロガーの立場から言わせてもらえば、小銭をもらって記事を書くよりも、本当に面白い、興味がある、これを伝えたいという思いがある記事を書く方が楽しいんですよね。そういう思いがあって、コミュニケーションが広がっていく。自分はそんなブログに人生を救ってもらったからこそ、ブログを安易な『広告』とせず、コミュニケーションという軸で、企業とブロガーの良い関係を築けると良いなと考えていました。」(徳力氏)

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