はてながいま、「はてなブログ」を作る理由(1/2 ページ)

はてなが新サービス「はてなブログ」のβ版を公開した。Twitterなどが台頭する中、清々しいほどの直球の「ブログ」を開発する狙いを近藤社長と開発を担当したディレクターの大西さんに聞いた。

» 2011年11月25日 14時03分 公開
[榊原有希,ITmedia]

 はてなの新サービス「はてなブログ」のβ版が11月7日、公開された。現行の「はてなダイアリー」は、8年の歴史を持つ老舗ブログサービス。その間、SNSやTwitterなど新しいサービスが次々と登場してきた。しかし2011年、はてなが投入してきたのは清々しいほどの直球、「ブログ」だった。30代男性ユーザーが目立つダイアリーに対し、「子育てするお母さんにも使ってもらえるようなシンプルなブログ」を目指すという近藤淳也社長(36)と開発を担当したディレクター、大西康裕さん(36)。その真意を聞いてみた。

photo はてなの近藤淳也社長とはてなブログのディレクター、大西康裕さん

「絶対に必要な機能しかつけない」

 「僕には子供がいるのですが、保育園の集まりで『ブログサービスやってます』と自己紹介すると、お母さんたちに『難しそうですね』と言われてしまう。その時に、『ぜひ使ってください』と言いたいのですが、ダイアリーでは確かにちょっと難しくて」と笑う大西さん。

 ダイアリーは現在、100万件近いブログが開設されている老舗サービスだが、「はてな記法」と呼ばれる独自の記述方法があるなど、決して初心者向けとは言えない。対して、今回リリースされた「はてなブログ」は、リッチテキストエディタも採用されている。文字の大きさや色など、記事を書く段階でイメージが分かる「見たまま編集」が特徴のひとつだ。

photo シンプルになったはてなブログ

 開発は、今年8月から始まった。「基本的にはダイアリーを進化させるという目的があり、ダイアリーを新しくするか、全く別のサービスにするか、開発の初期では決まっていませんでした」と明かす大西さん。しかし、思い切って新サービスへと舵を切ることになった理由を、近藤社長はこう説明する。「ダイアリーは2003年から始まってもう8年経ち、設計が古くなってしまっていました。ちょっとずつバージョンアップをしてきたけれど、ちゃんと体制を作って取り組もうと思いました」

 8年間で、ブログの使われ方も変化していた。以前はコメント欄で友達とやり取りしたり、トラックバックを飛ばし合ったり、コミュニケーションツールでもあった。「今はTwitterやFacebookなどコミュニケーションを目的とした、より洗練された仕組みが出てきています。その中で、ブログはある程度、文章やコンテンツをまとめておく場所という位置付けがクリアになってきた。今なら、そこだけにフォーカスしてシンプルにできる。他社も含め、ブログの機能が増えてごちゃごちゃしてしまっていたので、絶対に必要な機能しかつけないという堅い決心をして作りました」

 例えば、「はてなブログ」にトラックバック機能は付けられていない。今のところ、ユーザーからの要望もクレームもほぼないという。「みんなトラックバックは標準機能だと思っていたのに、あれはもう終わっていたことが分かりました。動いているサービスから機能を取り除くことは難しいけれど、新しくシンプルなものを作れば、これからブログを始める人にも分かりやすい」

「オープンインターネットの中のわたし」

 そこには、近藤社長のブログ哲学がある。「ブログは自分の人格みたいなもの。ネット上でのホーム。Twitterはホームというより、『そこにいる』という感じ。Facebookはクローズドなので、『友達の中のわたし』。ネットを始めたから、いきなりブログを書いてと言われても書けないし、友達とのおしゃべりの方が始めやすいので、SNSからネットに入る人が増えている。一方で、友達とおしゃべりしているだけが人生ではない。そこから一歩進んで、社会に出て行った時の居場所としてのブログも必要だと思います。『オープンインターネットの中のわたし』が、そのポジションです」

 さらに、ブログには「出会い」や「気づき」があるという。「僕は大学のホームページに写真をアップしていたのですが、1日数十人しか見てなくて何のためにやっているか分からなかった。でも、ある日突然、尊敬する先生に『君の写真のファンだ』と言ってもらえた。すぐにはアクセスが増えなくて残念だったり、たまにきついことを言われて怖い思いをすることがあるかもしれないけれど、人のつながりが広がったりもする。予想外のことが起きるのがブログ」

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