ドメイン変更によるSEOへの影響とは? メリットとリスクおよび失敗しない手順SEOタイムズ編集部が初心者向けにわかりやすく解説

ドメインはWebサイトの現住所を表し、それ自体がWebサイトの看板の役割も果たします。今回は、そんな重要なドメインの変更を不安なくできるよう、基礎知識を解説します。

» 2024年04月30日 09時00分 公開
[谷川祐一ITmedia マーケティング]

 ドメインはWebサイトの住所や顔の役割を果たします。SEO上の理由やWebサイト刷新、企業のブランドリニューアルといった理由で行う必要が出てくることもありますが、SEO上の影響もあるため、変更には慎重さが求められます。リスクを回避しながらドメイン変更を安心して進められるように、この記事をマニュアルとしてご活用いただければ幸いです。

ドメインの役割と種類

 インターネット上の膨大な情報群を大都市に例えて考えてみましょう。大都市の中から、特定の家(WebサイトやWebページ)を見つけるためには、住所を必要とします。この住所に当たるものが、ドメインです。具体的には以下のような役割を果たします。

  1. Webサイトの場所を特定:世界中の膨大なWebサイトの中から、特定のWebサイトを見つけるためのIDのような役割を果たします。
  2. Webサイトの看板となる名前:例えば、「amazon.com」や「yahoo.co.jp」など、ドメイン名自体が企業のブランド力を示す一助となっています。
  3. 信頼性を示す役割:企業のドメイン名は、その企業の公式なWebサイトであることを示します。

 ドメイン名は、ピリオド「.」で区切られた複数の部分で構成されています。

  • トップレベルドメイン:「.com」「.jp」「.org」など
  • セカンドレベルドメイン:「example.com」の「example」の部分

 トップレベルドメインは、Webサイトの種類を表します。トップレベルドメインで管理者の拠点となるエリアやどのような組織なのかが分かります。トップレベルドメインには、以下の例のようにいくつかの種類があります。

  • .com:商用サイト
  • .jp:日本国内のWebサイト
  • .org:非営利団体

 それに対してセカンドレベルドメインは、Webサイトの組織名・企業名、種類や用途、ブランドイメージを表します。例えば「google.com」であればトップレベルドメインが「.com」でセカンドレベルドメインが「google」なので、Google社が所有する商用サイトということになります。このように、トップレベルドメインとセカンドレベルドメインを組み合わせたものがドメインです。

ドメインのSEO上の位置付け

 検索エンジンがWebサイトを認識し、評価する際に、ドメインは以下の理由で重要な判断材料となります。

  1. 検索エンジンからの信頼性:長い歴史を持つドメイン名は、Webサイトの信頼性を示す指標の1つです。長期間・定期的・安定的に更新されている、過去にペナルティを受けていないWebサイトは、信頼できると判断されます。
  2. ブランド力:多くの人に知られている、顧客から支持されているブランド名が入っているドメインは検索エンジンからの評価も高くなります。
  3. 関連性:ドメイン名が検索キーワードと関連性がある場合、検索結果で上位表示されやすくなります。
  4. 権威性:他のWebサイトから被リンクが多いドメインは、権威性が高いと判断されます。

 ドメイン変更とは、Webサイトの住所(ドメイン名)を変更することです。実生活における引っ越しに例えると分かりやすいでしょう。

 例えば、引っ越し前の旧住所から引っ越し後の新住所に変更になるように、ドメイン変更後は旧ドメイン名からドメイン変更後の新ドメイン名に変わります。また、実生活の引っ越しでも手続きが必要なようにドメイン変更にも、転居届(URL変更通知)など各種設定変更の手続きが必要です。ドメイン変更は、SEOに大きな影響を与えるため、慎重に検討する必要があります。

ドメイン変更を検討したいシーン

 ドメイン変更は、Webサイト運営において重要な決断です。主なきっかけとしては、社名やサービス名の変更、リブランディング、M&Aや事業譲渡によりドメイン名を統一するため、グローバル展開を図るためといったものが挙げられます。また、以下のような場合もドメイン変更を検討すべき可能性があります。

  1. SEO対策:現在のドメイン名が検索されにくくSEO的に不利なので対策したいケース、アクセス数の少ない複数のWebサイトを統合したいケース。
  2. Webサイトのリニューアル:新しい機能を追加したりスマホ対応したりするに伴い、Webサイトのデザインや構造を大幅に変更したいケース。
  3. 技術的な理由:Webサイトの読み込み速度が遅いなど現在のサーバの性能や機能が不足

ドメイン変更によるSEOへの影響

 ドメイン変更がブランド力向上、キーワードとの関連性向上とアクセス数アップといった狙い通りの効果を発揮すればそれに越したことはありません。しかし、うまくやらなければSEOに大きな影響を与える可能性があります。必要以上に怖がらなくてもいいように、あらかじめ想定されるネガティブな影響について知っておきましょう。ドメイン変更には、具体的に以下のようなリスクがあります。

  • 検索エンジンからの評価リセット:ドメイン変更によって新しく生まれたばかりのWebサイトと評価され、これまで積み上げてきたSEO評価がリセットされることがあります。
  • 新しいドメインの評価獲得までのタイムラグ:検索エンジンからのインデックス情報が消失し、検索エンジンが新しいドメインを評価するまでに時間がかかるかもしれません。
  • アクセス数の減少と顧客離れ:ユーザーがブックマークしているURLが変更されたり、検索結果での順位が大きく変わることでアクセス数が減少したりする可能性があります。アクセス数の減少は、顧客離れにもつながる可能性があります。
  • 信頼性の低下:ドメイン変更によって、Webサイトの信頼性に対する評価が下方修正されることがあるかもしれません。
  • 利便性の低下:新WebサイトのUI/UXにユーザーが慣れるまでは、目的の情報を見つけにくくなる可能性も否めません。
  • 被リンクの減少:ドメイン変更によって、他のWebサイトからの被リンクが減る、無効になることがあります。
  • 技術的な問題:ドメイン変更作業時のヒューマンエラーによる問題も考えられます。

 このようなリスクが複合的に影響して、検索順位が一時的に下落する可能性があります。これらのリスクは、適切な対策を講じることで最小限に抑えることができますが、順位降下やアクセス数の減少は避けられない場合があります。ドメイン変更を行う前に、リスクを十分に理解した上で検討することが重要です。

 ドメイン変更は、事前準備が成功の鍵となります。まずは3つのポイントを準備段階でしっかり事前確認しましょう。

  1. 目的を明確にする:なぜドメイン変更を行うのか、具体的な目的を明確にします。
  2. リスクを理解する:ドメイン変更には、SEOへの影響などリスクがあります。メリットとデメリットを理解した上で、慎重に検討しましょう。
  3. スケジュールと予算を決める:ドメイン変更には、作業時間と費用がかかります。スケジュールと予算を事前に決め、計画的に進めましょう。

 ドメイン変更の作業自体は準備から実際の移管作業、変更後のリダイレクト設定まで含めて1週間〜2週間程度が目安です。リダイレクト設定の解除は1年経過後が目安となるでしょう。

移行後の確認は確認事項次第で継続的に必要になることもあります。

 気になる費用はドメイン取得に初期費用1000〜5000円。加えて年間更新費用がかかります。ドメイン移管の際も同様です。専門業者に依頼すれば、数万円程度でドメイン変更の作業を代行してもらえます。初心者のうちは専門業者に依頼するのも検討してみましょう。

 実際の作業手順は以下の通りです。

  1. ドメイン取得:まずは「お名前.com」「ムームードメイン」「Xserverドメイン」などのドメイン取得サービスを利用して、新しいWebサイトのドメインを取得します。
  2. 旧Webサイトの各Webページに対応する新WebサイトのURLをリスト化:どのページが対応するかマップ化しておくことで、SEO評価の低下を最小限に抑える、リダイレクト設定がスムーズになるといったメリットがあります。
  3. リダイレクト設定:リダイレクト設定は、旧ドメインのURLを新ドメインのURLに転送する設定です。ドメイン変更時は永久的な301リダイレクトを使用し、全てのURLをリダイレクトする必要があります。.htaccessファイルをサーバにアップロードする、WordPressのプラグインを使うなどの設定方法があります。
  4. Googleサーチコンソールでドメイン名変更:Googleサーチコンソールの設定メニューでアドレス名を変更します。
  5. 新旧WebサイトマップをGoogleサーチコンソールにアップロード:旧ドメインおよび新ドメインのXMLサイトマップをGoogleサーチコンソールからアップロードします。ドメイン変更後、インデックス登録されるまでには数日程度かかります。

 移行後の確認も重要です。ドメイン変更後、以下の項目を定期的に確認しましょう。

  • 検索エンジンへの登録状況:Googleサーチコンソールから登録に不備がないか確認
  • アクセス状況:アクセス解析ツールなどでアクセスを確認
  • エラーの発生:リダイレクト設定のミスなどによるエラーが発生していないか確認

 特に、ドメイン変更の目的が達成できているかどうかは、継続的な確認が必要です。


 SEO上の影響が大きいため、ドメイン変更には慎重さが求められます。しかし、むやみに怖がる必要はありません。Googleサーチコンソールから簡単にできる方法もありますので、事前準備をしっかり行い、変更後の確認をしっかり行うことで、失敗を回避することができます。どうしても難しかったり、リソース確保ができなかったりする場合は、専門業者への代行依頼も検討してみてください。

執筆者紹介

谷川祐一さん

谷川祐一

たにがわ・ゆういち GMOソリューションパートナー メディア運営チーム マネージャー。SEOに特化したサイト制作に従事。さまざまな経験を経て編集責任者(マネージャー)としてSEO初心者向けオウンドメディア『SEOタイムズ』とSNS運用代行サービスの立ち上げをおこなう。ランチェスター戦略をベースとしたSEO戦略の策定を得意としている。


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