インタビュー
» 2016年11月25日 07時00分 UPDATE

リード研所長が聞く:B2BとB2Cでマーケティングはどう違うのか? ABMの伝道師に素朴な疑問をぶつけてみた――中東孝夫氏(KDDI) (1/3)

アカウントベースドマーケティング(ABM)が注目されている。日本においてそれをいち早く実践し、成果を上げてきたエキスパートに話を聞いた。

[野本纏花,ITmedia マーケティング]

リード研究所とは

小柴所長イラスト

 マーケティング×ITの最先端の動向をB2B中心にお伝えしているITmedia マーケティングですが、発行元である当社アイティメディア自体もまた、「TechTargetジャパン」「キーマンズネット」といったメディアを核にした「リードジェネレーション」を事業とするB2B向けデジタルマーケティングカンパニーとしての一面を持っています。

 具体的には、コンテンツを閲覧した会員のプロファイル情報を、関連商品に興味関心を抱くリード(見込み客)情報として、本人のパーミッション(同意)を得た上でスポンサー企業に提供しています。

 そこでサービスの企画開発とコンサルティングを担う社内シンクタンク的存在が「リード研究所」なのです。


 この連載では、日々クライアント企業の課題と向き合いながらメディアの新たなビジネスモデルを模索し続けるアイティメディア リード研究所所長の小柴 豊が、B2Bマーケティングの領域におけるソートリーダーと語らいます。

 第3回となる今回は、大手外資系ITベンダーで長くキャリアを積んだB2Bマーケティングの第一人者であり、アカウントベースドマーケティング(ABM)の伝道師として知られる中東孝夫氏をゲストに迎えてお届けします。現場のリアリティを熟知し机上の空論には舌鋒鋭く切り込むことで、B2Bマーケティングの世界ではよく知られる中東氏ですが、2016年7月にKDDIに電撃移籍し、その動向が注目されています。

 今回は中東氏のマーケティング観の源泉にさかのぼりつつ、現代のマーケターが共有する全般的な課題から中東氏自身が今後新天地で担う役割に至るまで語ってもらいました。

B2BとB2Cではターゲティングの粒度が違うから

小柴 中東さんといえば、B2Bマーケティング一筋というイメージが強いですが、実はマーケターとしてキャリアをスタートされたのはB2C企業だったのですよね。一方で、メディアでの寄稿やSNSなどでのご発言を見るとB2Cのマーケターに対して少々辛口であるように思われます(笑)。なぜB2Cマーケティングが嫌いなんでしょう。

中東孝夫
なかひがし・たかお KDDI ソリューション事業本部 ソリューションマーケティング部 副部長。消費財メーカーの宣伝部にてテレビCMやブランドマネジメントを経験後、B2Bのマーケターとして外資系IT企業にて広告やイベントなどを担当。2001年からリードジェネレーションに携わり、顧客DBの構築や、インサイドセールスを含むB2Bマーケティングの立ち上げを経験。2016年8月よりKDDIにおいて法人マーケティング部門を率いる。

中東 いや、嫌ってませんから(笑)。おっしゃるように私はもともと某製紙メーカーに入社して、テレビCMやパッケージデザイン、店頭販促物の制作に関わる仕事をやっていたわけです。自分で志願してその道に進んだこともあり、広告の仕事へのリスペクトはずっと変わりません。

小柴 B2Cだから嫌いということではないと。では何が嫌なんでしょうか。

中東 B2Bマーケティングの議論にB2Cのロジックを深く考えずに持ち込まれることですかね。STP、つまりセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングを根本とするという意味では、B2BマーケティングもB2Cのそれも似ているところは多いのですが、ターゲティングの粒度が全く違うんですね。それを無視して、両者を同じように語られると「いやいや、それは違うよね」と言いたくなってしまうんです。

小柴 最初の会社から外資系IT企業に転職され、以後はB2Bマーケティングに取り組まれているわけですが、こちら側の世界に移られたいきさつはどういうものだったのでしょう。

中東 昔からPCが大好きでIT系が得意だったというのはあります。最初に勤めたメーカーでも、宣伝部でCMを作りながらデータベースソフトで稟議(りんぎ)システムや発注管理システムを自作したりしていました。マーケティングや広告の仕事は好きでずっとやっていたかったのですが、日本の企業ではジョブローテーションがありますからね。スペシャリストを目指すには職を変えるしかないと思っていたところで、ご縁があってあるソフトウェアベンダーのマーケティング職に移りました。

小柴 そこではどのような仕事をしていたのでしょう。

中東 イベントやセミナーの企画をして、リストを作って営業に渡すということを2年半やっていました。今思い返すとあまり役にも立っていなかったような気もしますが(笑)。渡したリストを営業が追いかけてくれないといった悩みも当時はありました。

小柴 そのころの経験が後にデータドリブンなセグメントやインサイドセールスのマネジメントといった考えにつながってくるのでしょうか。

中東 それは次に移ったPCの直販メーカーでダイレクトマーケティングを担当したころですね。普通の企業はKPIをマンスリーやウィークリーで見ていると思うのですが、そこではデイリーどころかアワリーでしたからね。時間単位で目標を達成していないと営業本部長から電話がかかってくるんです(笑)。

小柴 それはすごい(笑)

中東 ただ、KPIを細かくチェックすることによって早めにリカバリープランが組めるということを学びましたね。3カ月に1回のレビューだと修正するのには1年かかる。デイリーでチェックしていれば予実にズレがあっても1〜2週間で修正できる。スピード感を持ってPDCAを回せると、小さく、早く、たくさん失敗ができますよね。

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