デジタルマーケティングの到来で露見した日本企業の盲点Adobe Digital Marketing Summit 2012(1/2 ページ)

Adobeは同社の年次カンファレンスで、企業が顧客一人ひとりに最適化したマーケティング施策を行うための製品を相次いで発表した。企業がこれらの製品を有効活用するためには何が求められるのか――。

» 2012年03月29日 08時00分 公開
[本宮学,ITmedia]

 「いまや全ての人々がネット上でシグナルを出している。これは、人々が企業に対して“自分とは誰か”ということを知らせているということだ。企業側としては、これをどんどん使っていきたいと考えているはずだ」

photo ブラッド・レンチャー氏

 米Adobe Systemsのブラッド・レンチャー デジタルマーケティングビジネスユニット担当シニアバイスプレジデント兼GMは、同社の年次カンファレンス「Adobe Digital Marketing Summit 2012」で、日本の報道陣の取材に対してこのように語った。

 現在、ソーシャルメディアの普及に伴い、人々は自分の情報をネット上で露出するようになりつつある。一方で、企業は自社サイトにおけるユーザーの閲覧履歴や検索キーワードなどからも、顧客の興味の対象や性別・年齢などをある程度想定できる。

 そこで企業は、こうしてネット上に表現される“消費者のオンライン人格”を正確にとらえ、一人ひとりに最適化したWebコンテンツや広告を配信していくべき――というのが、Adobeが同カンファレンスで明確に示したデジタルマーケティングの進むべき道だった。

 カンファレンスではこの方向性を具体的に裏打ちする製品として、包括的なソーシャルメディアマーケティングツール「Adobe Social」、セッションをまたがった個人のWebサイト閲覧履歴を追跡、可視化する「Discover 3」、顧客のWebサイト内での行動履歴に基づき性別/年齢/居住地域などを想定し、最適なWebコンテンツを自動配信する「Adobe CQ 5.5」などがリリースされた

 これらの新製品で特徴的なのは、同社の既存製品の機能も統合して「1つの製品でできることを増やしている」という点だ。例えばAdobe Socialでは既存のソーシャルメディア解析ツール「Social Analytics」にキャンペーン管理製品「Efficient Frontier」のソーシャルメディアマーケティング機能を統合している。また、CQ 5.5でユーザーごとにサイト表示を最適化できるのは、その裏側でアクセス解析ツール「SiteCatalyst」などとの連携が図られているからだとしている。

 こうした中、これらの製品を導入してマーケティング活動を強化したい企業にとって課題になるのは、どの部署が導入を主導するかということだろう。Webコンテンツの管理やキャンペーンの効果測定などを別々の部署で行っている“縦割り体制”の企業の場合、導入のための社内稟議をどこの部署が行うかが問題になりそうだ。

 レンチャー氏は「米国などではCMO(Chief Marketing Officer)がまとめて製品を購入する場合が多い」と説明する。数年前までは社内アナリストが解析ツールを購入したり、コンテンツマネジャーがコンテンツ管理製品を購入したりするのが一般的だったが、今ではより高い立場の人(CMO)がまとめて購入する場合が多いとのことだ。

 だが、日本ではCMOに当たる役割を設けている企業がそう多くないのが実情ではないか。このことについて問われたレンチャー氏は「その質問はすっかり日本語で覚えてしまうほど何度も聞いた」というそぶりを見せつつ、日本におけるCMO不足の問題をこう話した。

 「日本では今CMOがほとんどいないが、いずれ企業内で各部署をまたがって意思決定をする立場が増えていくことになるだろう。デジタルについて理解している今の若い人が、CMOの役割を担っていくことになるはずだ」

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