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» 2017年07月13日 06時00分 UPDATE

すぐ分かるオムニチャネル 後編:B2Bや自治体でも「オムニチャネル」、業界別の展開例を知る (1/2)

オムニチャネルは小売業だけのものではありません。その他の業界でも展開することができます。今回はさまざまな業界におけるオムニチャネル事例を紹介します。

[河原崎 剛,SAP ジャパン]

 前編「5分で分かるオムニチャネル、『マルチチャネル』『クロスチャネル』との違いは?」では、「オムニチャネル」の定義やこの考え方が生まれた背景、類似概念との違いについて俯瞰的に解説しました。

 さて、オムニチャネルというと「ECと実店舗の誘導」というように、暗黙のうちに小売業を前提とした話になることが多いのですが、オムニチャネルは小売業だけのものではありません。その他の業界でも展開することができます。以下では、幾つかの業界における事例を紹介してみましょう。

保険会社のオムニチャネル例

 保険会社には代理店販売や直接販売などの販売形態があります。昔は「保険のおばさん」と呼ばれた方がいて、お客さまはその女性に相談して、保険を購入していました。しかし、現在では保険の比較サイトや街中にある代理店窓口など、接点が多様化しています。

 ここにオムニチャネルの考えを当てはめると、Webや電話で問い合わせのあったお客さまを近くの代理店に誘導すると同時に、代理店では契約内容と問い合わせ内容を事前に把握することで、来訪した顧客へのサービスの向上につなげることができます。また、自動車保険であれば、お客さまが乗っている自動車自体も1つのチャネルとして考えられます。例えば、カーナビについているGPS機能を使って、走行距離や走行スピード、車種などを取得して、個別に最適な保険メニューを提案することができるかもしれません。

 ある保険会社におけるオムニチャネル基盤の活用事例を紹介します。その会社ではポータルサイトを通じて保険商品の販売や契約者サービスを提供しています。自社のWebチャネルを活用することで、人が対面で直接サポートする時間を減らし、業務の効率化を実現しているのです。また、生命保険だけではなく旅行保険の販売やライフイベントに合わせた保険商品の提案もWeb上で行っており、契約者との継続的な関係を築いています。

 とはいえ、同社はネット専業の保険会社ではありません。全国に複数の支店が存在し、担当者がお客さまと直接会ってサポートする場面も数多くあります。しかし、その場合でも、従業員はお客さまそれぞれのWeb行動履歴やコールセンターでの問い合わせ情報を把握しており、お客さまの個別の課題に合わせたサポートを提供することができています。このため、高い顧客満足度を維持し、市場シェアの拡大に成功しています。

 この他、イギリスのある保険商品比較販売サイトでは、複数の代理店や保険会社と連携し、20以上のチャネルを統合したWebサイトを提供しています。同サイトでは各社のシステムを統合して商品情報管理と販売の仕組みとしてのオムニチャネル基盤を構築することにより、多様な保険商品の構成と複雑な契約の組み合わせに対応。1万を超える保険商品の販売を実現しています。

 同社のような総合サイトには不特定多数の利用者がアクセスすることから、操作しやすいUI、さまざまな条件を指定した高度な検索、高速なレスポンスなど、バックシステムに対する要求度が高くなります。また、連携対象であるチャネルが多様でシステム自体が複雑になりやすいため、それらを包括的にサポートできるオムニチャネル基盤が不可欠となります。

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