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» 2017年10月23日 05時00分 公開

データマーケティングの請負人が語る:横浜DeNAベイスターズが5年間で来場者数を76%増やすためにやったこと (1/2)

ホームゲームの観客動員数が急伸する横浜DeNAベイスターズ。長年の人気低迷期を乗り越えてここに至るまでのマーケティング戦略について担当者が語った。

[やまもとはるみ,ITmedia マーケティング]

 2017年9月12日、マーケター向けイベントである「b→dash Marker's Night」(主催:フロムスクラッチ)に、プロ野球球団横浜DeNAベイスターズ経営・IT戦略部部長木村洋太氏が登場。「スポーツマーケティング3.0〜データの力がスタジアムを満員にする〜横浜DeNAベイスターズのデータマーケティングの裏側にせまる」と題し、球団の経営改善の舞台裏をマーケティング視点で語った。本稿では、そのエッセンスを紹介する。

イベントでは、球団がこれまで行ってきたマーケティング戦略やその支えとなったデータ分析の勘所について、マーケティングプラットフォーム「b→dash」を提供するフロムスクラッチ執行役員兼本卓明氏(写真左)が木村氏(右)に聞いた《クリックで拡大》

まずは話題作りから

 横浜DeNAベイスターズは2011年12月に、前身である横浜ベイスターズをDeNAがTBSから譲渡され誕生した。当時のチームは万年最下位争いの常連。横浜という大都市を本拠地としながら、お世辞にも人気チームとはいえなかった。ホームグラウンドである横浜スタジアムの収容人数は約3万人。日本のプロ野球の球場としては最小規模だ。それでいてスタジアムの席は半分しか埋まらない状態が続き、2011年の年間観客動員数は約110万人にとどまっていたのだ。

 しかし、5年後となる2016年の観客動員数は約194万人。実に約76%の成長を遂げ、ホームゲームの4分の3は大入り満員を記録した。売り上げも2011年から2016年には倍増、営業利益もマイナスからプラスへと改善している。2005年以来ずっとBクラスに低迷し、5年連続最下位だったチームも、2016年と2017年は連続してAクラス入り。2017年にはクライマックスシリーズ ファイナルステージ進出を果たしている。

 ここに来るまでの道は決して平たんではなかった。コンサルティングファーム出身の木村氏がベイスターズに入社したのは2012年3月。マーケティングで会社を変えていこうと思っていたが、入社当時はそもそもデータが全くなく、なすすべがなかったと述懐する。

 とはいえ、手をこまねいているわけにはいかないので、まずは話題作りに着手した。さまざまな特典を付けた100万円のプレミアムチケットを売り出すなど、奇抜な企画はスポーツ新聞をはじめ多くのメディアで取り上げられた。これらの施策が即座に入場者増に結び付いたわけではないにせよ、革新的な取り組みをしていくという意思を球団内で共有する上で、起爆剤になったとはいえるだろう。

ターゲット像を具体化して全社員で共有する

 もちろん、それまでも社員たちは自分の担当する仕事に熱心に取り組んではいた。問題は戦略に一貫性がないことにあった。例えばグッズ担当は女性向けのかわいいグッズを開発し、演出担当は若者向けカッコいい雰囲気の演出をしていたという具合だ。そこで、全社共通の戦略ターゲットを定めることにした。横浜DeNAベイスターズはどういう人にファンになってもらうべきであり、自分たちはどういうブランドになりたいのかをまず明らかにしようと努めたのだ。

 本格的なデータ分析に着手したのは、1年分のデータが集まった2013年に入ってからだ。入場者の性別や年代といった基本属性を見ると、30代男性が最も多く、20代男性、40代男性がそれに続き、女性は少ないことが分かった。また、観戦者数だけでなく増加率も見た結果、30代と20代の男性を中心にするのが良さそうだということが分かってきた。

 定量的な分析に加え定性的な分析も行った。グループインタビューで「なぜ球場に来るようになったのか」などをヒアリングして、コアターゲットの具体的な絵を描いた。そして、「30代を中心としたアクティブサラリーマン。野球場は大きな居酒屋のような空間であり、野球観戦は居酒屋談義の延長線上。球場の雰囲気が好きで、勝敗だけにこだわるわけではない。自らもスポーツをし、スマホとSNSを使いこなすなど流行にも敏感」という人物像が浮かび上がった。

 さらに、「試合開始後に来場」「ユニフォームは着ない」「ビール1杯目は持ち込みだけどお酒にはお金をかける」「ビールの売り子やチアにも興味」など、キャラクターをかなり細かく設定した。これには理由がある。社内にはいろいろな職種の人がいる。共通言語を持ち、ターゲットをできるだけ具体的にすることで、各自が「自分の友達にこういうキャラの人がいる」とターゲットをイメージできるようになる。そこから、「あの人にならあんなサービスが喜ばれる」といった意見が活発に出るようになるのだ

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