「誰も知らない」わが社のビジネス、どうすればターゲットに知ってもらえるか【連載】電通デジタルが考えるB2Bマーケティングにおける広告アプローチ 第2回(1/2 ページ)

広告を中心とする認知獲得の方法をお伝えする本連載。第2回目では、広告において何をどのように伝えるべきかを解説します。

» 2017年07月18日 05時00分 公開
[増田 健電通デジタル]

関連キーワード

B2B | マーケティング | 広告 | 電通


 前回「『B2Bに広告は不要』って本当でしょうか?」では、ターゲットに自社の商材やサービスについて知らせることの重要性について説明しました。知名度抜群の大企業であっても、その中の一事業部門として持っているB2Bのソリューションブランドは全く知られていないといったことはよくあります。一体どうすれば、リーチしたいターゲットに自社の製品やサービスを知ってもらえるのでしょうか。

 マーケティングの基本とは、誰を(Who)ターゲットに、何を(What)伝えるのか、それをいつ(When)、どこで(Where)、どのように(How)見せていくかにあると前回述べました。今回は何を(What)、どのように(How)伝えるのかという点に絞って、説明します。

重要なのは「顧客にとってのベネフィット」をきちんと示すこと

 まずは、Whatについて解説しましょう。コミュニケーションにおいてはまず、受け手である顧客の抱える意識を把握することが何よりも重要です。これはB2BであれB2Cであれ同様ですが、自社の製品やサービスのユニークネスを強調するために難しい技術用語を並べ立てて「どうだ、すごいだろう」と伝えるだけでは、独りよがりな一方通行のコミュニケーションになってしまいます。

 当たり前のことですが、企業が伝えたいことと顧客が知りたいことは、多くの場合イコールではありません。そのため、広告を展開する上で最も重要なことは、コミュニケーションの受け手である顧客にとってのベネフィットをきちんと示すことです。B2Bにおける広告キャンペーンでは、この基本的なポイントをおろそかにしているケースが多く見られます。

 ターゲットがどのような企業に勤めていて、どのような役職で、どのような課題を持っているのか。いわゆる「ペルソナ」を作ることは、顧客理解を図り、顧客にとってのベネフィットを提示するために有効な取り組みです。

 もちろん、ペルソナを描くこと自体は、別に新しい手法ではありません。しかし、B2Bにおけるペルソナ設定においては、強調しておきたいことが2点あります。

ペルソナを“特定の個人”レベルにまで落とし込む

 まず第1に、B2BにおけるペルソナはB2Cにおけるそれとは粒度がまるで違うということです。B2Bにおいてペルソナとは「ある種の傾向を持った不特定多数の集合体を代替する象徴的な顧客像」であることを超え、「特定の個人」レベルにまで落とし込む必要があります。

 その理由は、日本企業で特に良く見られる「組織的購買」という習慣にあります。B2B商材の購入における意思決定プロセスでは、複数の部署をまたいで多くの人が関与します。例えば、商材を現場で使用する技術部門にとっては、製品スペックはもちろん、導入事例や導入後のサポート体制、他社製品との比較情報が必要です。一方で、ビジネス戦略を考える部門では、導入すべき理由と併せて市場動向などのマクロな情報を把握しておく必要があるでしょう。特に日本では、現場の課長やリーダーレベルの人物が製品の必要性を上申することが多く、意思決定におけるキーパーソンの理解を徹底的に図ることが重要になっています。

 同じ企業に勤めていても部署や役職が違えば抱えているミッションも課題も全く異なります。現場が必要としている情報を役員やマネジャークラスに伝えても無駄であることは想像に難くありません。何らかの課題が顕在化し、自社の製品が導入を検討されてから稟議書に印鑑が押されるまでに、どの部門のどの役職の人が関わるのか。そして彼らはそれぞれどんな情報をどんなタイミングで必要としているのか。衝動的な購買が起こりにくいB2Bにおいては、このようなターゲットの理解と、組織的購買プロセスを考慮したアプローチの設計がマーケティングにおける鍵となります。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.