「Gemini時代」のGoogleの広告ビジネスはどう変わる? ピチャイCEOが語ったことMarketing Dive

テック業界の巨人の第1四半期決算発表で議論の中心となったのは、生成AIおよび「YouTube ショート」の収益化の進展だ。

» 2024年05月08日 12時00分 公開
[Peter AdamsITmedia マーケティング]

 Googleの持株会社であるAlphabetの決算報告によると、同社のQ1の収入は前年比15%増の805億4000万ドルとなった。 この結果はアナリストの予想を上回るものだ。

 総広告収入は、前年比13%増の616億6000万ドル。Google最大のセグメントである「検索・その他」は前年比14%増の461億6000万ドルとなった。一方でYouTubeは引き続き勢いを増し、前年比21%増の80億9000万ドルとなった。 ネットワーク収入は前年比で1%減少した。

 CEOのスンダー・ピチャイ氏は、検索などの根本を変える可能性のある新興分野で競争力を維持するためにGoogleが多額の投資を行っている生成AIソフトウェアに言及し、同社が「Gemini時代」に突入したと述べた。

Google検索とYouTubeのこれから

(出典:iStock.com/Ekaterina79)

 Googleは2024年4月25日(米国時間)、デジタル業界の同業他社に続いて広告面での好調な四半期を報告し、業界が好調であることをさらに裏付けた。検索の増加は小売業によってけん引され、YouTube事業はTikTokに似たショート動画の「YouTube ショート」やテレビストリーミングサービスの「YouTube TV」に支えられ、広告主の需要が堅調に推移した。YouTube TVは最近、一時停止広告などの新しい広告フォーマットを試験的に導入し、ゴールデンタイムに「NFL Sunday Ticket」などの人気番組を確保した。2年前に広告掲載を開始したショート動画の収益はいまだ非公表だが、経営幹部によれば、インストリーム広告と比較して収益化率は高いという。

 eMarketerのシニアアナリストを務めるエブリン・ミッチェル=ウルフ氏は、「特にYouTubeは、ライブスポーツ投資、広告ブロッキングの取り締まり、YouTube ショートの収益改善から利益を得ているようで、その結果、過去2年間で最も高い成長率を記録した」と、メールでコメントしている。

 ライバル企業と同様に、Google は議論の大半を、同社最大の収益源を変革する位置にある生成 AIの進歩を大々的に宣伝することに費やした。過去 1 年間、Google は生成 AI を活用した Search Generative Experience (SGE) の実験を行っており、従来の検索にさらに多くの AI 機能を実装する取り組みを進めているGoogleは過去1年間、生成AIで動くSearch Generative Experience(SGE)の実験を行っており、従来の検索により多くのAI機能を実装することに取り組んでいる。

 ピチャイ氏は投資家との業績報告の電話会議で「私たちはこれまでも、Webからモバイルへ、さらには音声技術へと、技術のシフトを経験してきた。それぞれのシフトは、人々が検索でできることを拡大し、新たな成長をもたらした。私たちは現在、生成AIで同様のシフトが起こっていることを目の当たりにしている」と述べた。

 AIはGoogleの広告ビジネスにおいても、より大きな役割を果たすようになっている。 2023年12月に発表されたGoogleの“最も高性能な”AIモデルである「Gemini」は最近、アセット生成を補助するためにP-MAX(Performance Max)キャンペーンに組み込まれた。 イメージとテキストの自動化に注力したこのツールを使用した広告主は、「『高い』から『非常に高い』の広告効果」を持つキャンペーンを公開する可能性が63%高くなる、と最高ビジネス責任者のフィリップ・シンドラーは述べた。3年前に広告主向けに広く利用可能になったP-MAXキャンペーンは、自動化に向けたシフトの中でGoogleの焦点となっている。

 AIの任務は、マーケティングパートナーシップにも及んでいる。 Googleは、自社のGeminiモデルとエージェンシーネットワークのOpenオペレーティングシステムを組み合わせるために、WPPと協力している。 WPPは生成AIをいち早く採用しているThe Coca-Cola Companyをはじめとするトップブランドのクライアントと協力している(関連リンク:「コカ・コーラが考える生成AIとブランドの未来」)。

 しかし、Googleの生成AI戦略に問題がなかったわけではない。Webメディア「The Verge」は、Geminiが奇妙で非歴史的な画像を生成し、たちまち論争に巻き込まれたことを報じている(外部リンク/英語)。 また、検索時にユーザーが訪問するページ数が削減されるため、SGEのような製品が収益化に影響を及ぼすかどうかについても疑問が呈されている。Google経営陣はAIによる検索の調整が引き続きトップパブリッシャーやマーチャントサイトへのトラフィックを増大させるだろうと述べているが、潜在的な収入への影響に対する不安は依然として高い。

 その他にもGoogleには頭痛の種がある。ChromeでサードパーティーCookieを段階的に廃止しようとしている件だ。デジタル広告のエコシステムを再定義すると約束したこの長期プロジェクトは、これまでに3回延期されている。 今回の電話会議で投資家たちはCookieの計画については尋ねなかった。

 規制面では、同社は反トラスト法の取り締まりに直面しており、それがQ2で頂点に達する可能性がある。前出のミッチェル=ウルフ氏は、Googleのコアビジネスである検索の未来が「保証されていない」と指摘した。 「米司法省の反トラスト法裁判では、来四半期にも評決が下される見込みだ。そして、AIが生成したコンポーネントをGoogleのの主要な検索インタフェースに組み込むことは、間違いなく検索広告市場の創設以来最大の変化となるだろう」(ミッチェル=ウルフ氏)

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