ディズニーのCTV戦略 「ショッパブル広告」と「アドバゲーム」は勝ち筋になるか?Marketing Dive

DisneyがCTV戦略を強化している。テレビのリモコンを使って制限時間内に課題をクリアするゲーム型広告のスポンサーになったのはTopgolf Internationalだ。

» 2024年07月10日 08時00分 公開
[Peter AdamsMarketing Dive]
Marketing Dive

 Walt Disney Company(以下、Disney)は、ゲームと「ショッパブル広告」(直接購入画面に遷移できる広告)を統合した新しい広告フォーマットで同社のコネクテッドTV(CTV:インターネットに接続されたテレビ)戦略を強化しようとしている。

 「アドバゲーム(advergaming)」と呼ばれるこの新しい広告フォーマットは、Disneyと広告サービス企業BrightLine Partnersとのパートナーシップの一環として、動画配信サービス「Hulu」とスポーツチャンネル「ESPN」で独占提供される。ローンチ時には「Quiz Show」と「Beat the Clock」という2種類のゲームが用意されており、後者の独占スポンサーとなったのは米国でゴルフエンターテインメント施設「Topgolf」を運営するTopgolf Internationalだ。

 Disneyはさらに、AI(人工知能)を活用した動画技術ベンダーのKERV Interactiveと協力して、「Sync」「L-Bar」「Impulse」と呼ばれる3つの広告フォーマットを開発した。それぞれ、動的QRコード(図柄を変更することなくリンク先URLを変更できるQRコード)、カスタマイズできるグラフィック、個別の製品のカルーセル(スライドショー)で、これらは視聴者の購買意欲を高める目的でCTV広告と組み合わせて用いられる。

新たな広告フォーマットの投入でCTV戦略を強化

Topgolf Internationalは、DisneyとBrightLine Partnersが共同開発したCTV向けの新しい広告フォーマット「アドバゲーム」(advergaming)の広告スポンサーだ(画像はDisney Advertisingのプレスリリースより)

 多くの企業がCTVで広告を打とうと殺到しているが、パブリッシャー側はいまだにCTVのデジタルならではの特徴をより有効活用するためのやり方を模索している最中だ。Disneyの新しい広告フォーマットは、ブランドメッセージをより双方向的にしようとする新しい試みだ。視聴者をより長時間画面に釘付けにし、QRコードなどの手法を使って別のサイトに誘導し、購入に導こうとしている。

 「Disneyに広告を出してくれているさまざまな企業が、視聴者に新しいユニークな広告体験を提供し、エンゲージメントを高め、視聴からシームレスに購入へとつながるようにしたいと考えている」と、Disneyのアドレサブルセールス担当シニアバイスプレジデントのジェイミー・パワー氏はプレスリリース(外部リンク/英語)の中で述べている。「当社はマーケターにショッパブル広告とアドバゲームを拡張し、提供する。より差別化できるダイナミックな方法で視聴者とつながれるだろう」(パワー氏)

 KERV Interactiveと共同開発した今回の広告フォーマットは、Disneyが2024年1月に発表したストリーミング専用のショッピングサービス「Gateway Shop」に続くものだ。Gateway ShopはUnileverなどがすでに採用している。コマース指向のこの広告フォーマットは、動画配信サービス「Disney+」やDisneyのマーケティング部門であるDisney Advertisingのプログラマティック広告マーケットプレイスなどで利用できる。

 TargetとNespressoはすでにImpulse広告を試験的に導入している。QRコードの上に商品画像を表示し、「スキャンして購入」というメッセージを表示して、スマートフォン経由での購入を視聴者に促す。この技術は、コメディアンのクリステン・ウィグがバラエティ番組「Saturday Night Live」の著名キャラクターを演じて、Targetの刷新された会員特典サービスを宣伝する春の広告キャンペーンにも使用された。Disneyはこの広告の具体的な成果については明らかにしていない。

 ショッパブル広告は、自社のサービスで広告キャンペーンを実施すれば販売に直接結びつくことを証明したいパブリッシャーの間で人気が高まっている。Amazon.comも2024年5月、同年初頭にCMの放映を開始した自社の動画配信サービス「Prime Video」向けにショッパブル広告を導入すると発表した。

 アドバゲームはより実験的な分野であり、DisneyとBrightLine Partnersは、今回の取り組みがCTV向けに初めて市場に投入されたものだと主張している。Quiz ShowはCM中に複数の形式のクイズを出すゲームで、Beat the Clockは制限時間内にブランドに関連したタイムチャレンジをクリアするゲームだ。TopgolfがInterpublic Group(IPG)傘下の広告代理店Mediahubと組んで出稿し、6月上旬に公開されたアドバゲームでは、テレビのリモコンのボタンを押してバーチャルゴルフコース上でパワフルなショットを打つことができる。

 「当社は、広告の可能性を広げることを信念としている。このインタラクティブなアドバゲーム体験は、新しくエキサイティングな形で視聴者を引きつける完璧な方法だと考えている」と、BrightLine Partnersのチーフアクセラレーターであるマイケル・ボローニャ氏はプレスリリースの中で述べている。

 Disneyは、配信サービス事業の収益性を高めるために、CTV戦略を強化している。このエンターテインメント業界の巨人は、アップフロントプレゼンテーション(広告主向けのラインアップ発表会)に合わせて、小売大手企業Walmartと提携し、同社のリテールメディア事業「Walmart Connect」を活用して、CTV広告キャンペーンのターゲティングと効果測定を改善しようとしている。

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