連載
» 2018年02月08日 15時00分 公開

【連載】ワンイシューで語り下ろすデジタルマーケティング:インフルエンサーの強みはフォロワー数にあらず――高村彰典氏 (1/2)

SNSで影響力のある投稿者「インフルエンサー」の力を借りたマーケティング活動に高い関心が寄せられている。インフルエンサーが企業にもたらす価値とは何か。サイバー・バズ代表取締役社長の高村彰典氏が語る。

[野本纏花,ITmedia マーケティング]

 企業がマーケティング活動にUGC(ユーザーが生み出すコンテンツ)を取り入れようと考えるのは、今に始まったことではない。しかし、コンテンツの発信媒体がテキスト中心のブログからInstagramやYouTubeなどにシフトした現在、その担い手や期待される役割は様変わりしつつある。今日におけるインフルエンサーマーケティングの真価とは何か。

 デジタルマーケティング業界のトップランナーに、現在それぞれの専門分野が抱える課題と今後の展望を語り下ろしてもらうこの連載。第2回はポスト“インスタ映え”時代のインフルエンサーマーケティングの展望を、ソーシャルインフルエンサー事業のパイオニアとして知られるサイバー・バズの高村彰典氏が語る。

高村氏 高村彰典氏
サイバー・バズ代表取締役社長。青山学院大学を卒業後、1997年に興和へ入社。その後、1999年にサイバーエージェントへ入社。営業未経験ながらもインターネット広告代理店事業にてトップセールスを誇り、2005年には取締役に就任。2010年10月より現職。

ブロガーからインフルエンサーへ

 インフルエンサーマーケティングのコンセプト自体は、2000年代からあったものです。かつて口コミマーケティングと呼ばれたそれは、ブログを主な発信媒体としていました。当時、まず影響力を持ったのは、圧倒的な読者数を誇るタレントです。その後、次第にブログが個人の情報発信ツールへと変わっていく中で、影響力を持った個人ブロガーが台頭してきました。

 SNSが急速に普及するにつれ、表現の幅は大きく広がりました。コンテンツの中心がテキストから画像や動画中心にシフトしてきたのです。今ではブログを持たずにSNSしか使っていないインフルエンサーもたくさんいます。人によって幾つかのSNSをうまく使い分けているのが現状です。

マスマーケティングの代替ではない

 自社の商品を影響力のあるタレントやブロガーに紹介してもらうことがインフルエンサーマーケティングだと考えるなら、それは単に広告の出稿先として選択肢が1つ増えたという話にすぎません。

 「取りあえずフォロワー数の多いインフルエンサーをつかまえればいいだろう」と安直に考えると、本質を踏み外します。どんなに人気のあるインフルエンサーでも、リーチ数はマスメディアにかないません。単に多くの人の目にとまるのが目的であれば、マスマーケティングをやった方がはるかに効果が高いでしょう。

 また、「インフルエンサーマーケティングをやれば、すぐに売り上げが上がるはず」という考えも、違うと思います。そもそもブランド認知が低い商品をインフルエンサーがちょっと紹介したところで、急激な売り上げ増は期待できません。

 インフルエンサーマーケティングは、あくまでもマスマーケティングを補完するものであり、単体で成立するものではないと、私は考えています。「広く浅く」のマスマーケティングに対し、インフルエンサーマーケティングは「狭く深く」を追求します。ブランド認知から商品購買まで、マーケティングファネル全体の中で、選択肢の1つとしてインフルエンサーをうまく活用することが鍵となるでしょう。

情報過多の時代だからこそ

 インターネットに情報があふれ返っている今の時代、Googleで検索すれば膨大な検索結果が表示されるし、楽天市場やAmazon.comをのぞけば、チェックしきれないほどのたくさんのアイテムが出てきます。レビューを参考にしようにも、良い評価も悪い評価もあって、結局どれが自分にふさわしいのか選べません。

 そんなとき、自分と趣味・趣向が近く、信頼のおける人が商品を紹介していたら、「この人が使っているなら、自分も試してみようかな」という気になってきます。インフルエンサーマーケティングの強みは、まさにそのような形で消費者に直接情報を届けられることにあります。

 その意味で、インフルエンサーのキャスティングは非常に重要です。「なぜこの人がこの商品を推しているのか」という点に必然性がなければ、受け手にとってその人は残念ながらインフルエンサーにはなり得ません。ただフォロワーが多いからという理由だけで、商品と何の結び付きもない人をキャスティングしても、実際の購買に結び付けるのは難しいでしょう。

 コスメや旅行、グルメといった特定のコミュニティーにおいては、最近の傾向として、「マイクロインフルエンサー」と呼ばれる人たちの活動が目立つようになってきています。マイクロインフルエンサーは、数は多くなくても熱心なフォロワーを抱えています。エンドユーザーとの関係性が近い分、エンゲージメントは高いのです。

 当社サイバー・バズでは、インフルエンサー自身の愛用品を集めた「コレクションページ」を作成し、そこから誰でも商品を購入できる「to buy(トゥーバイ)」というメディアを2017年末から運営しています。ここには2018年2月現在で約200人のインフルエンサーが登録しています。カテゴリーごとに、それぞれの強みを持ったインフルエンサーがいますので、ユーザーはここで欲しいモノを探せるとともに、自分と価値観の合った信頼できるインフルエンサーに出会うことができます。

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