Metaの「イーロン・マスク化」が広告ビジネスに及ぼす影響Social Media Today

Metaがモデレーションルールを緩和し、ファクトチェックを廃止することを決定した。これにより、結果的にFacebookとInstagramのブランドセーフティーが低下することが懸念される。

» 2025年01月09日 10時00分 公開
[Andrew HutchinsonSocial Media Today]
Social Media Today

 Metaはモデレーション方針を緩和し、ファクトチェックを廃止するという決定を下した。この変更によりFacebookやInstagramのブランドセーフティーが低下する結果となるのだろうか。

 イーロン・マスク氏はTwitter(現在のX)で社内のコンテンツモデレーション担当スタッフを削減し、ユーザー主導の「コミュニティノート」に頼る方針を採用した。その結果、同プラットフォームがブランドメッセージを表示する安全な場ではなくなったとする報告や調査が相次いでいる。これらの動きに伴い、Xの広告収入は約60%減少した。

 業界の意見では、Metaでも同様の状況が生じる可能性が指摘されている。しかし、MetaとXには、重要な違いがある。

マスク氏にあってザッカーバーグ氏になさそうなリスク

 まず、Xにおける問題の一因はマスク氏自身にあるということだ。Xのオーナーであるマスク氏は最も多くのフォロワーを持つXユーザーでもある。発信力はマスク氏の強みであり、その発言は大きな話題を呼ぶ。マスク氏は歩く広告塔のようなものであり、Xが広告費を使わないで済むのは彼のおかげである。

 しかし、マスク氏の物議を醸す姿勢はXのプラットフォームとしての評判を損ねている。マスク氏のいないMetaが今回、X同様の変更(外部リンク/英語)を決めたからといって、同じ影響が及ぶ可能性は低い。

 とはいえ、Metaの方針変更も早速議論を呼んでおり、アプリ内で有害なコンテンツが増加する可能性は否定できない。例えば、Metaの最新の「差別的行為に関するポリシー」(外部リンク/英語)では以下のような内容が示されている。

  • 人種、民族、性自認などの「保護される特性」に基づいて人々を攻撃するために使用される侮辱的な言葉の全面的な禁止を撤廃した。
  • 性別やジェンダーに関する用語が政治的または宗教的な議論、例えばトランスジェンダーの権利や移民、性的指向に関する議論で侮辱的に使われる場合でも、その使用を許容するようになった。
  • ルールの簡素化や侮辱的な用語の使用に対する寛容性の拡大が図られた。COVID-19の拡散を指摘するコメントへの制限も解除された(ただし現在では時代遅れの議題となっている)
  • 移民やジェンダーに関する議論といった政治的なテーマについて、これまで以上に「干渉しない」方針を採用した。

 つまり、Metaは発言の自由を広げる方向へルールを緩和した。内部モデレーションや外部ファクトチェックスタッフの削減も相まって、より多くの攻撃的・有害な投稿がFacebookやInstagram内で拡散されることになるだろう。このことは、ザッカーバーグ自身も認めており、今回のポリシー変更の概要説明(外部リンク/英語)では次のように述べている。

現実的には、これはトレードオフです。害のある投稿を見逃す可能性は増えますが、同時に誤って削除してしまう無実の投稿やアカウントの数も減るでしょう。

 Metaが30億人以上のデイリーアクティブユーザーを抱えていることを考えると、より多くの有害な投稿が通過することによる潜在的な影響はXよりもはるかに大きい。

 従って、FacebookやInstagramにおける広告出稿を見直すべき理由は十分にある。ただし、Xのケースと同様の反発が起こるかどうかは疑問だ。

 Facebookとinstagramは非常に広範なリーチと巨大なオーディエンスを持っている。そのため、多くのブランドにとってその潜在的な影響力は無視できないものである。Xに対しては比較的容易に道徳的な立場を取ることができても、Metaで同様の行動を取る気にはならないだろう。

 しかし、理想的には、MetaにもX同様の対応がなされるべきである。なぜなら、FacebookとInstagramの影響範囲を考えれば、相対的な被害ははるかに大きいからだ。

 結論として、今回の変更に伴いソーシャルメディア広告戦略を見直すべきかどうかと問われれば、答えは「イエス」だ。しかし、今回のことでMetaに対する世間の道義的な反発がXと同じレベルに達する可能性は低いだろう。

© Industry Dive. All rights reserved.

関連メディア