Domino’sのケイト・トランブル氏と同社の指定広告代理店であるWorkInProgressの共同創設者であるマット・タルボット氏が、2024年のマーケティング活動がどのようにして2025年に向けたチェーンの構築につながったかを語った。
大半の消費者にとって、夕食の調理に失敗することは災難だ。しかし、Domino’s(ドミノ・ピザ)にとっては「エマージェンシーピザ」を提供するチャンスである。2023年に導入されたこの企画は、同社のロイヤルティープログラムの特典だ。パンデミック後の勢いを加速させるための施策として設計されたこのプロモーションは、初年度に200万人の新規顧客をロイヤルティープログラムに呼び込み、その後の3四半期連続で成長を記録するきっかけとなった。
エマージェンシーピザは、Domino’sのリワード会員が1回購入すると1回限りピザを無料で提供するサービスで、ゲームや美容、動画配信サービスなどとのコラボで2024年に復活した。同年12月には3000万人規模を誇るファンタジーフットボール(※)コミュニティーに参入し、オールプロにも選出されたワイドレシーバーのステフォン・ディッグス選手(膝前十字靱帯断裂でシーズン途中から欠場)を自分のチームに指名したファンに100万ドル相当のエマージェンシーピザを無料で提供した。
※編注:実在するプレーヤーから好きな選手を選んでチームを編成し、チームの成績を競い合うゲーム。
Domino’sの指定代理店WorkInProgress共同設立者兼最高クリエイティブ責任者のマット・タルボット氏は「もしケガのようなアクシデントを逆手に取って、ファンが喜ぶ何かに変えられるなら、エマージェンシーピザがそのきっかけになるかもしれません。それは本当に特別でユニークなことだと感じましたし、Domino’sもそのことをすぐに理解してくれました」と語る。
2024年12月16日に開始されたこのキャンペーンの最新版は、ディッグス選手がソファで記者会見を行う動画広告(外部リンク/英語)はデジタルとソーシャルメディア、テレビで1月6日まで展開される。
Marketing Diveは、タルボット氏とDomino’sのエグゼクティブ・バイスプレジデント兼グローバルCMOであるケイト・トランブル氏に、エマージェンシーピザの舞台裏とこのキャンペーンがデータドリブンマーケティングにもたらす好循環、そして同社の2025年に向けた計画について話を聞いた。
以下のインタビューは、内容を明確かつ簡潔に伝えるため、編集を施している。
――ファンタジーフットボールを軸にエマージェンシーピザのキャンペーンを実施した背景には、どのような考えがあったのでしょうか。
タルボット 私たちは2回目のエマージェンシーピザキャンペーンを実施するに当たり、これまで以上に規模を大きくし、さまざまな層にリーチしたいと考えていました。そこで、最初のキャンペーンで示したコアなユースケース(夕食時に食べるものがないという非常事態)以外の手段で興味を引こうとしたのです。
私たちはさまざまなアイデアを出し合っていたのですが、今回の企画はかなり早い段階で「これだ」と思えました。ファンタジーフットボールの人気が急上昇していること、そしてもちろんNFLの影響力の大きさを考えると、テレビ視聴者に向けて少しインパクトのある企画ができるんじゃないかと。そういった要素が組み合わさって、このアイデアが生まれたのです。
トランブル 私たちはさまざまな視聴者にアプローチしようとしています。ゲーム愛好者にリーチするためにAmazon-TwitchのThe Glitchを制作していますし、(ネイルケアブランドの)Olive & Juneと提携してで美容分野にも進出しました(※)。ステフォン・ディッグス選手との提携は、驚異的な数の(ファンタジーフットボールに関心のある)オーディエンスにリーチするためのものでした。シーズンがかなり進んできたので、これを実際に実現するにはちょうどいいタイミングだと感じました。
※編注:ピザにインスパイアされた限定版マニキュアキットを発売した(外部リンク/英語)。
――このキャンペーンでは、100万ドル相当のエマージェンシーピザを無料で提供すると約束しています。会社とフランチャイズ加盟店に対して、それをどのように正当化しますか。
トランブル 私たちは、あらゆることをフランチャイズ加盟店と連携して行っています。フランチャイズ委員会を巻き込むことで、このメッセージの重要性を理解してもらっています。2023年第4四半期に初めてエマージェンシーピザキャンペーンを実施した際には、好結果を残しました。既存店売上高はプラスとなり、メディア露出を多数獲得しました。私たちは加盟店のところへ行き、「新しいオーディエンスに本当にクリエイティブな方法でアプローチしたい」と言いました。加盟店もその可能性を感じてくれたと思います。今回のキャンペーンでは3億を超えるメディア露出を獲得するなど、話題が広がっています。率直に言って、私たちは活気のある四半期を過ごしています。
――Domino’sは2022年にNetflixの「ストレンジャー・シングス」とコラボしたプロモーションで話題を呼びました。最近の「イカゲーム2」とのコラボについても教えてください。
トランブル 「イカゲーム」では、象徴的なゲーム(カルメ焼きの型抜きや「だるまさんがころんだ」など)に注目しました。
私たちは(映画監督の)テッド・メルフィー氏と提携しました。彼はこの企画を見事に実現してくれました。そして、Domino’sの従業員が「イカゲーム」の参加者たちにエマージェンシーピザを届けるという予想外のシーンを加えるなど、驚きの瞬間を演出しました。マットと彼のチームは素晴らしい仕事をしてくれました。特に「イカゲーム」がダークな作品であることを考えると、本当に素晴らしかった。
タルボット 私たちにとって問題だったのは、この作品の雰囲気をそのままにうまくいくアイデアとはどういうものなのかということでした。つまり、どうやってこれらの要素を調和させるかということです。しかし、窮地を救うことができるというエマージェンシーピザの設定が、作品の暗さを和らげ、むしろユーモアを引き出すことにつながりました。これが予想外にコメディー的な要素となり、非常にポジティブな反応を引き出す要因になりました。
(続く)
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