モバイルアプリ広告で成果を出すために求められる新たな打ち手とは何か。アプリマーケター向けに開催されたイベント「爆速アプリマーケターに聞く アプリプロモーション最前線」のハイライトを紹介する。
AppleがiPhoneを発売した2007年に生まれた子どもは、いまティーンエージャーだ。文字通り「スマホネイティブ」である彼らはもちろん、その他の世代においても、もはやスマートフォンは日常活動の基盤となっている。これを企業の視点から見れば、スマホが最も重要な顧客接点の一つになっているということでもある。
ゲームなどはもちろん、その他のビジネスにおいても、モバイルアプリケーション(以下、アプリ)の活用は大きなテーマだ。スマホ画面の限られたスペースに自社のアプリのアイコンを置いてもらうため、マーケターは日々知恵を絞っている。新規ユーザーの獲得にデジタル広告の運用は欠かせない。しかし、他社と同じことをやっているだけでは厳しい競争環境を勝ち抜けない。効率的で継続的、しかもより高い価値をもたらしてくれるユーザーを獲得するための手法が日々、求められている。
そのためのヒントを探るべく、本稿では2023年4月にMolocoが開催したイベント「爆速アプリマーケターに聞く アプリプロモーション最前線」の内容をレポートする。
元Googleのエンジニアが米国で創業し、2019年に日本市場に参入したMolocoは、モバイルアプリ向けのDSP(Demand Side Platform)広告事業などを展開している。同社の強みは高い機械学習技術であり、社名もMachine Learning Company(機械学習の会社)の頭文字に由来する。
現在の主力サービスはモバイルアプリ事業者向けの広告プラットフォームである「Moloco Cloud DSP」だ。一般的なDSPやアドネットワークだとゲーム事業者の出稿が大半を占めるが、Molocoは非ゲームの割合も4割と高い。同社によると「2023年半ばには、日本においてゲームと非ゲームの売上比率が逆転しそうな勢い」だという。
Molocoの坂本達夫氏(日本事業責任者)は、冒頭のプレゼンテーションで「目指すのは“機械学習技術の民主化”です。オープンインターネットの世界でも機械学習の先進技術を活用できるようにすることで、モバイルアプリゲームはもちろん、より幅広い企業のビジネスの成長をサポートしたいと考えています」と語った。
Molocoの課題意識の背景にあるのは、広告業界の売り上げ構造とユーザーの可処分時間のアンバランスだ。今日、企業の広告支出の多くがGoogleやMetaなどの大手プラットフォームに集中している。だが、実際にユーザーは一日のうち大半の時間をそれら以外の場所、つまりオープンインターネットで費やしている。
企業のメディアプランニングが大手プラットフォームに集中しがちなのは、端的に言えば広告パフォーマンスが良いからだ。では大手プラットフォームのパフォーマンスがなぜ良いかといえば、潤沢な開発資金で機械学習に投資をし、精度を高めてきたことが大きな要因だ。ならば、ユーザーが可処分時間の多くを費やすオープンインターネットでも、GoogleやMetaに負けない成果を出せるようにしようというのが、Molocoの狙いだ。
今回のイベントに登壇したのは、そうした特徴に目をつけ、いち早くMolocoを導入した2社のマーケターだ。
エン・ジャパンは、総合転職サイト「エン転職」や、若手ハイキャリアのためのスカウト転職サービス「AMBI」、新卒スカウトサービス「iroots」、社員・バイトの求人サイト「エンゲージ」など、求人サービスのアプリを展開している。
エン・ジャパンのサービスのユーザーはアプリとWebを併用している場合があるため、1人のマーケターがアプリ広告とWeb広告の両方を管理している。KPIは求人への応募通数と応募会員数だ。どれだけ応募があるかはもちろん重要だが、1人が何通応募しても最終的に入社できるのは1社であるため、それだけでは不十分だ。応募会員数も見ているのは、ユーザーをアクティベートすることで、1社も応募しない休眠ユーザーを少なくしたいという考えからだ。
これまで使用した広告媒体は、GoogleやYahoo! JAPAN、Instagram、TikTok、LINE、Twitterなどの大手プラットフォームをメインとしてきたが、2022年12月にMolocoを加えた。Molocoを採用した理由について、エン・ジャパンの田中奏真氏(執行役員 デジタルマーケティング部長)は、「当社の競合は、広告予算の多くを大手プラットフォームに投資していました。理由を聞いたところ『手間をかけたくないし、他ではアドフラウド(広告不正)が心配だから』と返答がありました。その気持ちは理解できましたが、同じことをやっても予算での勝負になるので、ブルーオーシャンを探すことにしました。そして、成果が出せてアドフラウドに強そうなMolocoに行き着きました」と話した。
Molocoを活用した成果について、田中氏は「とても良かった」と評価している。「初月は様子見として100万円からスタートしましたが、翌月には1600万円にまで上がっていました。その翌月はさらに倍という形で、現在は月間数千万円の投資額になっています」(田中氏)。
実はエン・ジャパンは、2022年にアプリの広告をほとんど取りやめてプロダクトの改善に振り切っていた。そのことが、Molocoによって流入してきたユーザーのコンバージョン率を高めるのに役立った。2023年のスタートダッシュで成果が出たのは、媒体選択も含む総合的な戦略があってのこととも言えそうだ。
AppBrewは、コスメの「クチコミ」検索と通販ができるアプリ「LIPS」を運営している。マーケティングチームは3人で、そのうち1人がマネジメント、あとの2人が実務を担っている。
KPIには、「CPD7」(Cost Per Day7 active user)という指標を採用している。つまり、アプリを7日間継続するユーザーの1人当たりの獲得単価を見ているのだ。LIPSはメインの収益源が広告であり、アプリ継続率が広告収益に直結するというのが、その理由だ。
広告媒体としては、ほぼ全ての大手プラットフォームを使ってみた上で、現在はGoogleとFacebook、TikTok、そしてMolocoをメインで活用している。
AppBrewの一ノ瀬 駆氏(プロダクト部 マーケティングユニット)は、Molocoを前職の広告代理店で利用したことがあったため、その存在を知っていたという。LIPSは一時期、CPI(インストール単価)が上がるなど、アプリのインストールに苦戦していた。そこで、効率的にCLV(顧客生涯価値)の高いユーザーを獲得できると定評のあったMolocoの活用を検討し、採用に至った。
一ノ瀬氏も現状の成果には満足している。「CPIはトップレベルで、Googleよりも低いCPIで獲得ができています。継続率に関しても、平均と同じか少し上と、まずまず。先ほどお話したCPD7ではトップ層に入っているので、これからもメイン媒体として使わせていただきたいです」
モバイルアプリマーケティングの課題は厳しい競争環境だけではない。ユーザープライバシーへの配慮も忘れてはならないし、景況が悪化する中ではパフォーマンスに対する社内の目も厳しくなる。そして、無駄な投資を抑制するという点で言えばアドフラウドも重要な課題だ。
Molocoに関しては「アドフラウドも問題はない」と一ノ瀬氏は語る。田中氏も「当社は、アドフラウド対策ツールを導入していろいろな広告プロダクトを相対評価しているのですが、Molocoにおけるアドフラウド検知率は非常に低い。信頼できるコンバージョンの成果が見えていることに安心感があります」と話した。
アドフラウドはマーケターにとって悩ましい問題だ。アドフラウドの被害に遭わないために大手プラットフォームにだけ出稿していればいいかといえば、そう単純な話ではない。競合が成果を出している媒体への出稿機会を逃してしまうことになるし、そもそも大手プラットフォームを含め、全ての媒体でリスクをゼロにすることは不可能だ。
それでも、さまざまなステークホルダーが連携して、アドフラウドの根絶に向けた取り組みを続けることは重要で、Molocoもさまざまな対策を施している。機械学習技術の民主化を通じて幅広い企業に自社の提供価値を享受してほしいと願うMolocoにとって、高いパフォーマンスと信頼性の両立は、そのための大前提となるのだろう。
本記事に関連して「モバイルアプリ開発・運用」に関するアンケートを実施しています。アンケートにご回答いただいた方の中から、抽選で10名様にAmazonギフトカード3000円分、または抽選で10名様に2023/10/19-20開催のad:tech tokyo 2023 ビジターパスをプレゼントいたします。ぜひ下記アンケートフォームよりご回答ください。当選発表は発送をもって代えさせていただきます。
ログイン または 会員登録(無料)いただくとアンケートフォームが表示されます。オレンジ色の「アンケートに回答する」ボタンからアンケート回答をお願いいたします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:Moloco合同会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia マーケティング編集部/掲載内容有効期限:2023年12月25日