ポータブルゲーム機であり超小型PCでもあるという新機軸の製品「ROG Ally」を展開するに当たり、ASUS JAPANがオンラインプロモーションのためのパートナーとしてAmazonが提供する広告ソリューション「Amazon Ads」を選択したのは何故か。担当者に話を聞いた。
ASUS JAPANが2023年6月に発売した「ROG Ally」(アールオージー エイライ)はポータブルゲーム機であり、Windows 11を搭載したコンパクトなゲーミングノートPCでもあるというユニークなコンセプトのガジェットだ。多種多様なPCゲーム(Windows版)をプレイできる上、Webの閲覧やメールの送受信、動画視聴にWeb会議など、PCと同様の用途にも利用できる。
ASUSは台湾に本社を置くPCメーカーだ。もともと日本では、1990年代にマザーボードなどのPCパーツ領域で自作PC派のコアなユーザーに熱く支持されていた。「ROG」はこの時代から続く同社のゲーミングブランドの一つであり、今日でも高い人気がある。2000年代半ばになるとOSを組み込んだPCの販売を開始し、低価格ノートPCを取り扱うようになると知名度は一気に拡大した。現在のASUSは低価格ノートPCだけでなく、高機能で高額なプレミアム機の領域でも存在感を増している。
中でも大きく伸びているのがゲーミングノートPCだ。これまでデスクトップ機を使っていたコアなゲームファンの移行が進んだことで、ゲーミングノートPCの市場はここ5〜6年で大きく拡大した。他方で、これまでコンソール機でゲームを楽しんでいた人々がタイトルの豊富なPCゲームに関心を持つようになってきている。そこで今回、従来のゲーミングノートPCよりもさらに持ち運びやすく、かつコンソール機ユーザーにも親しみやすいフォルムを持った新ジャンルの製品として生み出されたのがROG Allyだ。
ASUS JAPAN コンシューマ事業本部 営業部 EC営業1課 マネージャーの山田圭雄氏は「これまでにない新しい製品なので、幅広い方にその魅力を知っていただきたいと考えていました。しかし、自社だけではどのようなプロモーションが効果的なのか判断できませんでした。私は特に、オンラインチャネルでの展開を担当しているので、オンラインという世界でどう打ち出していくかを模索していました」と、ROG Allyのリリース前に悩みがあったことを打ち明ける。
従来のように単純に他社製PCからの乗り換えを狙うのであれば、ASUSのブランドは自然と検討の対象となり得る。だが、ROG AllyをゲーミングノートPCと認識できない人もいる。逆に、コンソール機ユーザーはPC市場のこともASUSのこともよく知らない可能性が高い。
台湾の本社を含めたグローバルでの実績を基に効果的な訴求方法を模索していた山田氏は、自社のインサイトだけでは限界があると感じていた。「特に、ASUSをご存じない方やゲームは好きだがゲーミングノートPCを知らない方、ゲーミングノートPCでプレイしたことがない方といった新規のオーディエンスにどのようなアプローチをすればよいのか、自社だけではなかなか判断が困難でした」
リーチしたいオーディエンスに効率良く情報を届け、製品理解を深めてもらうためにASUS JAPANが選んだのが、Amazonの広告ソリューション「Amazon Ads」だ。理由は大きく分けて3つある。
第一に、オンラインストアとしてのAmazonは、ゲーミングPC分野において圧倒的な存在感があると認識していたこと。Amazon Adsは、毎日非常に多くの人がショッピングをするAmazonという購入に近い接点で広告を展開できる点が、まずとても魅力的であった。しかし、それだけではなく、実はAmazonの外にも、多様な広告タッチポイントがあって、動画をはじめさまざまな表現方法で新規のオーディエンスの認知を図り、効果的に興味喚起ができることが分かった。今回のような全く新しい商品を展開するようなプロモーションの場合そのような特徴は大きな強みになる。
第二に、Amazon Adsでは、Amazonに訪れる多くのオーディエンスのトランザクション情報から得たインサイトを豊富に活用できること。「Amazon Adsは当社を含め、ゲーミング市場に関するインサイトを基に、より広く提案や分析ができるので、どのようなプロモーションが効果的なのか、どのような訴求の仕方があるのかを相談できるという点もポイントでした」と山田氏は話す。課題としていたASUSやゲーミングノートPCについて知らない新規のオーディエンスへの訴求に関して、Amazon Adsが持つノウハウは強い味方となる。
第三に、これまでASUS JAPANがAmazon Adsで展開してきた広告キャンペーンで着実に結果が出ていたこと。同社は2022年のブラックフライデー期間に、Amazon Adsでスポンサーシップ広告というAmazon.co.jpのトップページや特設イベントページに掲載されるバナー広告を出稿して、高いパフォーマンスを挙げた。商品詳細ページの閲覧数を見ると、他の広告面に比べて約10倍の投資対効果が見られた。こうした経験から、今回のROG Ally発売プロモーションでも、施策の一つとしてAmazon Adsを採用するのが最善と判断した。
ASUS JAPANは、ROG Allyの発表時、発売時、発売後の3つのタイミングでAmazon Adsにおけるキャンペーンをスタートした。Amazon Adsにはさまざまな広告ソリューションがあるが、今回の施策のメインとして、「Twitch」の広告が選ばれた。
Twitchは、Amazonが提供するインタラクティブなライブ配信サービスである。Amazon Adsでは、このTwitchでも広告ソリューションを提供する。ここには毎日、世界中から何百万人もの視聴者が集まり、ゲームをはじめとして、音楽、アートなど、さまざまなジャンルの配信が行われている。また、日本の視聴者数がこの数年で劇的に増加しており、日本がアジア全体のTwitch視聴者数の成長をけん引している。さらに、視聴者の約7割が若年層であるというのも特徴だ。
Twitch広告に、山田氏は以前から強い関心を寄せていた。「ゲーミングPCに強いAmazonの中でどのようにシェアを伸ばしていくかを考えました。それにはやはり、新規のオーディエンスにアプローチする必要があります。そこで、Amazonというオンラインストアの“外”にいて、なおかつゲームに興味がある全くの新規の方々にリーチしたいと考えたのです」
視聴者の多くがゲームに高い関心を持つTwitchは、まさに最適な選択肢だった。ゲーム実況を行うインフルエンサーである配信者と視聴者の距離感が近く、ファンのコメントに配信者がすぐに反応するなど、和気あいあいとしたファンコミュニティーが形成されていることもポイントだった。「私がTwitchを選んだ背景の一つに、Twitchは、何か新しいことが生まれる場所、流行が生まれる場所というイメージがあった、ということもあります」
革新性の高い商品をTwitchという新しい場所で売り出すという野心的な試みに、慎重な声が社内に全くなかったわけではない。しかし「今後、ゲーミングノートPCを訴求する際の参考になるはず」と、未来志向で広告出稿を決断した。山田氏によると、Amazon Adsから「ROG AllyはゲーミングノートPCの中でも非常に新規性に富んだ製品なので、静止画広告だけでなく動画やインフルエンサー配信などで商品の特徴を訴求した方が伝わりやすい」など、具体的なアドバイスがあったという。
ROG Allyの広告キャンペーンは2023年6月から9月にかけて実施された。発売直前から6月14日の発売日までは「プレミアムインストリーム動画広告」を活用して30秒または60秒の動画広告を配信し、発売日は「ホームページヘッドライナー」と呼ばれる、Twitchトップページに大きく表示されるバナー広告を掲載。発売直前から発売後は「DSP広告」を通じてTwitchの広告面にディスプレイ広告を展開し、発売日以降の7月にはインフルエンサーによるライブ配信が行われた。
動画広告の総視聴時間は43万1017分、総再生回数は13万7028回に及んだ。ライブ配信の平均同時接続回数は3591回でチャット件数は4580回。ゴールである販売台数は目標値の146%に相当する台数を突破した。
大きな成果をもたらした要因は主に2つあると山田氏は考えている。一つは、製品発売前に事前認知を獲得できたこと。Amazon内のROG Allyに関係するキーワード検索とGoogleトレンドを比較すると、Twitch広告を開始した6月3週以降で検索数が継続的に伸長した。Googleトレンドとブランド指名検索を比較すると、1.22倍もの開きがあった。
もう一つは、発売当日にも認知を拡大できたこと。Googleトレンドで確認すると、ROG Ally関連のキーワード検索は発表週がピークだったがAmazon内では発売日がピークとなっており、製品が売り場に並ぶ当日に最大トレンドが作られたことが分かる。
山田氏は定性的な成果も実感している。特にインパクトがあったのはライブ配信だ。Twitchでは、広告であってもインフルエンサーである配信者が実際にROG Allyでゲームをプレイしている状態をそのまま視聴者に配信し、視聴者もさまざまなコメントを自由に書き込む。稼働中のハードから発生する熱についての質問が多かったが「1時間くらいプレイしているけど全然熱くならない」という素直な感想に称賛の声が上がった。
思わぬハプニングもあった。プレイ中に配信者がROG Allyを落としてしまったのだが、図らずもそれが筐体の頑丈さを証明することにつながり、視聴中の山田氏も胸をなで下ろしたという。そうした予想外の出来事を含め、ライブ配信で多くのインサイトを得ることができた。
「ハードの発熱具合を気にする方が多いことが分かったのは大きな収穫です。今後は訴求ポイントとして熱に関する情報をアピールした方が効果的かもしれません。開発チームも喜んでおり、稼働中の発熱のさらなる抑制を目指すと言っています」
Twitch広告を展開して、ROG Allyのプロモーションは満足のいく成果を収めることができた。しかし、新製品の投入はこれで終わりではない。
「2024年は、さらに大きな革新を起こすべく新製品の開発に取り組んでいます。今後も新しいプロダクトを市場に提供する際は、最初の認知から実際の購買に至る全てのプロセスで、お客さまにいかに分かりやすくアプローチするかという観点でプロモーションを進めます。世の中の進化は速いので、これまでと同じやり方をずっと続けていても勝てません。常にお客さまを見て、お客さまに合わせた最適なアプローチを追求したいと考えています。そのパートナーとして、一緒に考え、一緒に並走してくれるAmazon Adsとこれからも一緒に進んでいきたいと考えています」と山田氏は締めくくった。
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