日本マイクロソフトは日本での広告事業「Microsoft 広告」を開始した。コロナ禍で人々のワークライフスタイルが変わりつつある中、同社の広告はどう強みを発揮するのか。日本で事業拡大を目指すためにどのような人材を求めているのか。
2022年5月31日、日本マイクロソフトは日本市場において広告事業「Microsoft 広告」を開始したことを発表した。これによって日本国内のあらゆる広告主および広告代理店は、検索エンジン「Microsoft Bing」における検索連動型広告とポータルサイト「MSN」や「Microsoft Edge」(以下、Edge)におけるディスプレイ広告やネイティブ広告を利用できるようになった。
近年は「Microsoft Azure」などクラウド領域で存在感を示す同社だが、広告事業においてもその歴史は古い。しかし日本ではこれまで事業運営を他社に委託しており、国内に拠点を設けてはいなかった。それがなぜ今、日本市場で広告事業を本格展開し始めたのか。マイクロソフトオーストラリアで、日本を含むアジア太平洋地域の広告事業を統括するニック・セックオールド氏(広告事業本部 アジア太平洋地域 本部長)は、今回の発表に合わせて来日し、その理由を次のように語る。
「メディア環境が著しく変化する中、他社経由での広告販売だけでは、ビジネスチャンスが限定されてしまいます。Microsoft 広告は積極的にグローバル展開を進めており、すでに約100カ国で利用可能です。2022年9月には150以上の国に展開する予定です。そうした動きに合わせ、今こそ再度日本市場へ投資をし、他の地域で成功を収めている質の高いさまざまなプロダクトを直接提供したいと考えたのです」
マイクロソフトが日本の広告市場の可能性を評価しているのには理由がある。1つは、日本国内におけるマイクロソフト関連製品、サービスのシェアの高さだ。
「特にEdgeは他国と比べても日本ユーザーの使用が圧倒的に多く、仕事やプライベート含めて日常的に使われています。日本国内でEdgeをダウンロードしているデバイス数は7000万〜8000万台といわれており、ユーザー数もほぼ同じ規模だと考えられます」とニック氏は語る。
Edgeの利用率が高いということは必然的に、検索エンジンにMicrosoft Bingを使っているユーザーも多いことになる。また、マイクロソフト製品という観点で言えば、ユーザー層はさらに広がる。仕事でWindows OSを始めマイクロソフト製品を使っていない人を探す方が難しいのではないだろうか。
製品に日常的に触れている人が多いという事実は、広告ビジネスにとって何を意味するのか。日本マイクロソフトの光井朋子氏(広告事業本部 グローバル広告ビジネスチーム アジア太平洋地域 プリンシパルプログラムマネージャー)は次のように説明する。
「Microsoft 広告における日本のオーディエンスの特徴として、16〜24歳の若いユーザー層と45歳以上の購買力のあるユーザー層が多いことが挙げられます。特に45歳以上のユーザー層は仕事用のWindows PCを初期設定のまま使用される傾向があり、その流れでEdgeも積極的にご利用いただいています。広告に関しても自然に受け入れてくださるので、購買力が高い分、興味のある製品やサービスが案内されたら勤務時間帯でも購入につながりやすい傾向もあります」
調査会社Forrester Researchが世界11市場で実施した調査によると、コロナ禍で在宅と出社を合わせたハイブリッド型勤務形態が進み、PCの利用時間はコロナ前より増加傾向にある。その結果、プライベートと仕事の融合が進み、仕事をしながら買い物をしたりサービスを享受したりする「ワークデイ コンシューマー」(Workday Consumer)の割合も増加している。
中でも日本は、オンラインショッピングにPCを利用する層がグローバルと比べて4倍以上と高い比率であり、51%のユーザーが勤務時間中に商品やサービスを定期的に検索し、37%は実際に購入している。
光井氏は「勤務中に業務で使っているマイクロソフト関連製品、サービスで広告に触れ、プライベートでクルージング旅行など高額なサービスを買う傾向が高いオーディエンスにリーチできることもMicrosoft 広告の特徴と言えます」と付け加える。
Microsoft 広告が提供する広告商品は「テキスト広告」「ショッピング広告」「ネイティブ広告」の3種類だ。配信面は「Microsoft Bingの検索結果ページ」「MSN」「Edgeのスタートページ/タブページ」「Microsoft Outlook」と幅広い。また、マイクロソフトは、Webブラウザや検索エンジンはもちろん、OS、メールソフトウェアの他、ゲーミングプラットフォームも提供しており、これらのオーディエンスに横断的にアクセスできる。これは他社にはないMicrosoft 広告の強みといえる。「Microsoft オーディエンスネットワーク」を通じてさらに配信先を拡張することもできる。
Microsoft 広告のオーディエンスは、小売業、旅行、金融、人材サービス、電気通信、不動産に興味を持つユーザーが多いが、検索プラットフォームの特性上、特定の業種に絞られることなく、多種多様な検索意図を持ったユーザーにリーチできる。
もちろん、幅広いユーザーにリーチできるプラットフォームは他社も提供している。すでに他社で広告を出稿している企業がそれらを全てMicrosoft 広告に乗り換えるというのは現実的でないかもしれない。そこでニック氏は「エコシステム全体で考えること」を提案する。
一般消費者は1つのプラットフォームに依存しているわけではない。Googleが提供しているサービスを使うこともあれば、Yahoo! JAPANにアクセスすることもある。もちろんMSNやMicrosoft Bingも使うだろう。そこに表示される広告商品同士、提供する内容そのものは似たようなものに見えるかもしれない。だが、検索エンジンが異なれば検索広告の結果も異なるように、広告主から見れば実際には選択肢が増えることになる。既存のプラットフォームとMicrosoft 広告の両方を活用することでより大きな成果を得られる。
Microsoft 広告には「Googleインポート」「Facebookインポート」という機能がある。他のプラットフォームのアカウントにサインインするだけで、簡単にデータをインポートできる機能であり、これを使うことで「総合的に成果を見ながら運用する」といった柔軟な対応もできるようになる。すでに日本でもこのインポート機能を利用してMicrosoft 広告を始めている広告主が多数いる。光井氏は「最初は他のプラットフォームと併用する形からスタートし、徐々にMicrosoft 広告ならではの広告プロダクトにシフトするといった戦略も可能です」と説明する。
昨今のデジタル広告においては、ユーザーのプライバシー保護と高いパフォーマンスの両立、そしてブランドセーフティーが重要な課題になっている。これらに関しても、Microsoft 広告はもちろん考慮している。
前者について、広告主はマイクロソフトがユーザーの許諾を得た上で収集したファーストパーティーデータをオーディエンスグラフとして活用できる。データは完全匿名化してプライバシーにも配慮している。収集したデータは、世界的に見ても高いセキュリティ水準を誇るマイクロソフトのプラットフォームでしか利用せず、運営もマイクロソフト自身が行っている。そのため「安心・安全に精度の高いターゲティングができる」とニック氏は自信をのぞかせる。
後者に関しても、MSNのコンテンツ提供元やアドネットワークの提携先パブリッシャーについてマイクロソフトは独自に精査を行っているので、ブランド毀損(きそん)のリスクは低い。
Microsoft 広告事業拡大に向け、日本マイクロソフトは人材採用を積極的に進めている。この半年で採用した人はすでに20人を超える。現在のチームは検索に関する知識が豊富な人、ディスプレイ広告の企画立案や戦略マーケティングに長(た)けている人など、多様な強みを持つメンバーで構成されている。
「日本におけるMicrosoft 広告事業はチャレンジャーの立場だと自覚しています。これまで採用した人は全員ハングリー精神と起業家精神に優れ、高い成長マインドを持っています。ポジションやレベルに応じて役割も仕事の内容も異なりますが、広告分野におけるこれまでの実績や強みを生かして存分にパフォーマンスを発揮したいと考える方を歓迎します」とニック氏は言う。
採用条件として同氏は3つのポイントを挙げる。1つ目は「Microsoft 広告事業だけでなく、マイクロソフトの企業風土や文化に合う人材であること」だ。現在マイクロソフトは「ダイバーシティー&インクルージョン」(多様性を重視し、個々の特性が生かされている状態であること)を最優先事項に位置付けている。広告事業にもこの考え方を組み込んでおり「互いの多様性や違いをリスペクトして内包する姿勢は、仕事を進める上でも重要な価値基準の1つです」(ニック氏)。2つ目は「データで意思決定するスキルやマインドがあること」。個人の主観や判断で物事を進めるのではなく、データドリブンのアプローチができる人は貴重な存在だ。3つ目は「広告主の利益拡大に向けてデジタル広告だけでなく、テレビなど他媒体のキャンペーンなども含めて総合的な視点で戦略を立てられるスキルがあること」だ。そのためにはデータ分析や管理のスキルはもちろん、テクノロジーの知識や営業の能力も求められる。
「どこか1つのプラットフォームに依存していると、広告主は別のところにある大きなチャンスを逃してしまうかもしれない。これを踏まえ、他のプラットフォームも含めた“人が集まっている場所”にしっかりリーチし、広告主のマーケティングROI拡大のためのお手伝いをすることが私たちの大事な役割です。そのためのスキルや提案力を持ち、互いに多様性を認め合うマインドをお持ちの方であれば特にMicrosoft 広告で大いに活躍いただけると思います。共にチャレンジャーとして事業を盛り上げていきましょう」(ニック氏)
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia マーケティング編集部/掲載内容有効期限:2022年7月24日