顧客を知り、そのニーズに迅速に応えるためB2Bマーケティングへの取り組みが活発化している。だが、単にツールを入れただけでは分からないこともある。
B2Bの分野でもマーケティングデータの活用が課題となっている今日、マーケティングオートメーション(MA)ツールに期待する企業が増えている。だが、MAを導入したからといって直ちに売り上げや収益に結び付くとは限らない。実際、ツールは導入したものの思うように成果が出ないという声もしばしば聞こえてくる。一体何がいけないのか。その理由と、マーケティングにおける有用なデータ活用の在り方について、2人のエキスパートが語り合った(文中敬称略)。
松村 ここ数年、B2B/B2C問わずデジタルマーケティングが注目されています。私どものサイバーエリアリサーチは、特にB2Bマーケティングに主眼を置き、Webサイトを軸にしたマーケティング施策を支援すべく、企業のIPアドレス情報をデータベースとして提供しています。こうした事業を営む中、「B2Bマーケティングの分野でデジタルマーケティングをいかにして活用していくべきか?」ということを考える機会に度々直面しています。今回、B2Bマーケティングを専門とする尾花さんと、あらためてB2Bマーケティングの課題を考えてみたいと思っています。
尾花 ありがとうございます。松村さんは、具体的にB2Bマーケティングを支援する中で、どのような点に課題があると感じていらっしゃいますか?
松村 端的にいえば、「データ」と「施策」の間に乖離があるということです。私たちはデータベンダーなので、そのデータを生かす施策を直接的に提供しているわけではありません。デジタルマーケティングが注目される中、メディアなどは「万能の策だ」という取り上げ方をしますが、実際にはもっと複雑なものではないでしょうか。
IPアドレスをベースに「地域」「組織」「回線」などの情報を提供するデータベースを搭載したAPI。Google Analyticsと連係して利用する。初期費用は10万円、月額費用1万円(いずれも税別)。30日間の無料お試しも可能
尾花 実は私も最近、「デジタルマーケティング」という言葉が弊害になっていると感じています。かつて、マーケティング施策はオンラインとオフラインに分けて考えていましたが、今は「細かい情報を見たいからWebを見よう」「実際に話を聞きたいから、電話してみよう」など、ニーズによってデジタルとアナログを使い分けるのが当たり前です。そうした中、現在は「デジタル活用」に寄り過ぎているように思います。もちろん、分析や施策を考える上でデジタルデータの活用は不可欠です。ただ、動く金額が大きくアクションまでのプロセスが煩雑なB2Bにおいて、多くのケースで個別の折衝が避けられません。いつ、誰とその折衝をするのか。最適なタイミングでできるだけ多くの接点や接触した履歴情報も活用する必要があると考えています。
松村 最近はマーケティングオートメーション(MA)の導入熱が高まっているようですが、これもデジタルマーケティングと同じように、「使わなければ」という風潮によるものでしょうか。
尾花 MAについては、正直なところ、名前だけで期待感が先行している部分もあると思います。本来であれば「こういうことをやりたいからMAを入れたい」という目的が先にあるべきなのに、「MAを使えば、何かができるだろう」という期待が先行してしまっている企業も多い。企業によってはもしかすると、MAの導入よりもWebサイトの改善の方が優先すべき課題かもしれませんし、ショールームを刷新した方が有効かもしれません。そうしたことを差し置いて、「まずMA」となりがちなのが現状だと思います。
松村 実は当社自身、オンラインツールを販売していく中で、「顔の見えない顧客を見える化し、効率的に顧客を集めよう」という目的でMAを導入した経緯があります。これによって、クリアできる課題もありました。当然ながら、「見えている顧客」「見えていない顧客」に対するアプローチが異なります。この見えている/いないはとても重要で、見えるようになるには、自社サイトの分析を行ったり、行動履歴をモニタリングして反響を数値化したりすることが必要になります。MAは、こうした「見える化」にはとても有効です。しかし、それも相手のデータがあればこそ。見えてない相手に対してはなすすべがない。そこで、当社が提供する「どこどこJP」は、顧客が見えずに獲得しきれない企業に対しての有効な施策になると考えています。
尾花 どこどこJPは、IPアドレスにさまざまな情報を付加したデータベースですね。具体的に、どのような情報が付加されているのでしょうか。
松村 IPアドレスからは、まず企業名が取れる他、企業の規模や業種、上場区分、従業員数、売り上げ額や資本金が分かります。また、大分類/中分類/小分類での企業区分も取ることができます。
尾花 すると、どういうことができるのでしょうか。
松村 例えば、MAではユーザーがどのページを閲覧したのか、メールにどのように反応したかといったことを見るわけですが、それができるのも、その人がどういう人なのかある程度分かっていればこそですよね。名刺交換も会員登録もしていない、それどころか初めてサイトに訪問した人がWeb上でこれまでどのような行動を取ってきたかは知る手だてがありません。しかし、見えていないだけで、その人がターゲットとする業種や企業に勤めている可能性だってあるわけです。どこどこJPを使えば、自社サイトにアクセスしてきたIPアドレスから、どんな企業がサイトに訪れたかを見える化することができるのです。
尾花 Webアクセスに関しては、B2Bマーケティングの中で十分に活用しきれていないと思っています。電話や訪問の履歴をリポートしてCRMで情報を一元管理するということはデジタル化する以前から行われてきましたし、メールマーケティングも進んできて、人間が能動的に起こした行動は記録されるようになりましたが、実は最も接触頻度が高い部分が放置されてきたわけです。そこを見える化するという視点でいえば、どこどこJPは、これまでのマーケティングで見過ごされてきた部分や、MAが捉えきれない情報を補完するソリューションだと思います。
松村 どこどこJPをGoogleアナリティクスと連係することでGoogleアナリティクスをMAツール的に使うことも可能です。例えばGoogle Analyticsでは検索キーワードや閲覧ページ、離脱ページ、リピートの回数や頻度が分かりますが、これに組織名や業種区分、資本金や売り上げ額などのデータが付加されることで、「どんな企業から、いつ、何度自社サイトに訪問があり、どんなページが見られた」ということが把握できます。分析を積み上げていけば、クロージングの確度が高い企業の傾向も見えるようになっていきます。
尾花 確度を推察するに当たり、少なくとも企業名が確実に分かるというデータソースは、非常に重要ですよね。
松村 その通りです。実際、私どものお客さまの中には、Googleアナリティクスと「どこどこJP」を利用して独自のしきい値を設け、「そのしきい値を超えた場合、対象企業からアプローチがある」という黄金律を確立した企業もあります。そして、しきい値を超えてもアプローチがない場合には「決裁を迷っている」と判断して、Webでスペシャルオファーを提示し、直接的なアプローチをしていくことで成功しています。
尾花 今、松村さんがお話になったように、「しきい値を超えてもアプローチがないのは、どういう状態なのか」という仮説を考えることは、B2Bに限らず、マーケティングを行う上でとても重要なポイントです。そもそもプロセスをオートメーション化するためにも仮説が必要ですよね。そこでどれだけ想像力を働かせるか、それがマーケターの仕事でもあります。
松村 例えばオンラインで何をやってもほとんど反応がない場合には、オンラインでのマーケティング予算を削るという選択肢もあり得るわけです。実はお客さまはショールームでの情報収集に期待しているというような場合、オンラインに注力してもあまり効果はありません。一方で、反応はあるけれど、なぜかアプローチに結び付かないというケースもあります。そうした場合に、アクセスしてきた企業にコンテンツを最適化するなどの工夫が必要になるわけです。
尾花 どこどこJPがその判断材料を提供してくれるわけですね。このときに、自社のWebサイトに限らず広い視野で考えることが重要というのは、冒頭にお話しした通りです。どこを打つと最も響くのか。テレマーケティングやSNSなどの別チャネルを組み合わせて施策を展開するという選択肢もあり得ますからね。
松村 実際、そもそも自社サイトに対象とする企業や業界の方が訪れているかを検証するために使われているケースも多いです。
尾花 自社の顧客が「どこにいるか」を知ることはマーケティングではとても重要なことです。そう考えると、どこどこJPの真価は、見えない“何か”を可視化することにあると思います。
松村 見えない“何か”とは、大きくいえば「ターゲットの反応」ということだと思います。どこどこJPはこれまで見えなかった「企業」という軸を与えるソリューションであり、それに「個」という軸を与えるのがMAのようなツールなのではないでしょうか。どこどこJPと連係したGoogleアナリティクスにMAツールを組み合わせることで、その企業の誰がサイトに訪問しているのかということまでが見えてきます。さらに、分析結果がWebブラウザのクッキーとひも付くようになると、その企業から何人訪問したかも分かります。大企業であれば、決裁権を持つ人にたどり着くまで、何人もの検証を経る必要がありますが、規模が小さな企業であれば、キーパーソンは限られています。どこどこJPを使うことで、案件がどのようなステータスにあるのかという仮説も立てやすくなります。
尾花 何も見えなければ、仮説を立てることもできませんからね。顧客が見えないために適切な施策が打てなかった企業にとって、どこどこJPのようなツールの導入は状況を打開するきっかけになると思います。施策を自動化するツールであるMAは「こういう反応があったら、こういう行動を取る」と設定し、場合によっては担当者にアラートを出したり、適切なコンテンツやメールを配信したりします。しかし、自動化のためには仮説を立てることが必要で、仮説を立てるには、さまざまな施策の反応を見なければなりません。どこどこJPは、仮説を立てるためにデータを収集する入り口であり、これまで見える化できなかった企業にとってはもちろん、「見えていたと思っていたけど、実は見えていなかった」という企業に対しても有効なソリューションだと思います。
どこどこJPのデータをGoogleアナリティクスにどうやって取り込むのか。カスタムレポートをどうやって作るのかなど、事前準備から組織ターゲティングの実施方法まで解説したPDFを配布しています。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia マーケティング編集部/掲載内容有効期限:2015年7月31日