AIを活用した新しいサービスが次々に登場している。中でも最近話題になっているのが、AIが応募者の面接をする「AI面接」だ。日程調整などが不要でいつでも面接できるため、企業にも応募者にもメリットがある。このAI面接領域で「カテゴリーキング」を目指すべく、マーケティング活動に力を入れる企業がPeopleXだ。同社は、認知拡大のためにGRANDの「エレベーターメディア」を使ったエレベーター広告を採用した。
オフィスビルのエレベーター内外でコンテンツを配信するGRANDのサービスは、B2B領域のサービスと相性が良い上に特定企業のビジネスパーソンに直接アプローチできるため、高い成果が期待できる。PeopleXも、指名検索数が飛躍的に上がって受注につながったという。エレベーター広告の成功ポイントについて、PeopleXの及川慧瑛氏、GRANDの斉藤佑亮氏、藤原直哉氏に聞いた。
「AI面接ならPeopleX」を市場に浸透させるには
PeopleXは、採用から入社後の活躍支援までHR領域の課題をAIで解決することを掲げるスタートアップ企業で、2024年4月に創業した。特に注力しているのが2025年4月にリリースした「PeopleX AI面接」だ。
PeopleX AI面接は文字通りAIが応募者の面接をするサービスで、24時間いつでも面接を設定できる。及川氏は「日程調整が不要でその場で面接できるので、企業と応募者、双方の負担を大幅に削減できます。応募者にとっても、AIによる公平な審査を受けられるため『自分の思いを客観的に評価してもらえる』というメリットがあります」と説明する。
こうしたAI面接のサービスは少しずつ増え始めており、検索数も増加傾向にある。PeopleXは、サービスリリース直後に顕在層を対象にしたリスティング広告を展開し、商談化率や受注率で確かな“手応え”を感じたという。
「当社のサービスは、AI面接領域の先発ではありません。しかし、リリース直後にリスティング広告を展開したところ競合に勝てるという手応えがありました。そこで今後は潜在層への認知拡大施策を展開して『AI面接ならPeopleX』という第一想起を取ることを目指しました」
テレビCMやタクシー広告ではなく、エレベーター広告に目を向けた理由
AI面接というB2Bカテゴリーの商材の認知を拡大するために有効な施策は何か。テレビCMや近年注目されているタクシー広告の展開も考えたが、及川氏はエレベーター広告に目を向けた。自身もエレベーター広告を何度か視聴した経験があり、「人目を引きやすい媒体だ」と感じていたという。
そうした経験を踏まえ、PeopleX AI面接のリリースから約1カ月後の2025年5月にエレベーター広告を使った認知施策の検討を開始した。及川氏から相談を受けた斉藤氏は「AI面接は、エレベーター広告と非常に相性が良いサービスだと感じました」と振り返る。
「及川さんに相談された当初、企業の採用担当者が『AI面接といえばPeopleX』と第一に想起してもらえるカテゴリーキングになりたいという目標を伺いました。その目標の達成と、エレベーター広告は相性が非常に良いと考えています。エレベーター広告を視聴する人の多くがそのオフィスビルで働いているため、広告を見て興味が湧いたらオフィスのPCで検索するという視聴後の動線がスムーズです。エレベーター広告がPeopleXさまの目標達成に役立つだろうと提案しました」
新しいサービスは注目されやすい上に、HRはどの企業にも存在する領域だ。そのため、オフィスビルで放映するエレベーター広告と親和性が高い。GRANDの端末は首都圏のオフィスビルを中心に6000台以上設置されており、これまでアプローチが難しかった大手企業を中心に、大規模ビルに入居する2万社以上のテナントにリーチできるというメリットがある。
藤原氏はエレベーター広告の特長について、「他の広告媒体と異なり『誰に届けられるか』を具体的かつ事前に把握できます。広告主にはバイネームのテナントリストをお渡ししているので、広告が商談や受注につながったかどうかという成果の検証も容易です」と説明する。
エレベーターは就業時間に必ず利用する上、特に前方(ドア)に視線が向きやすい。タクシー広告やテレビCMのようにスマートフォンを見ながら視聴することが少なく、情報を必要とする多くのビジネスパーソンに届けられる。とりわけオフィスで利用されるB2BツールやHR関連のサービス訴求には「非常に有効な手段です」と斉藤氏は強調する。
及川氏は、GRANDへの問い合わせと併せて、媒体理解を深めるために複数のオフィスビルのエレベーターに乗って利用者の視聴態度や視線の流れをチェックし、掲出位置による見え方の差まで確認した。さらに、エレベーター広告の出稿実績がある企業担当者に会って話を聞いて効果や運用のポイントを収集し、5月中に出稿を決めた。
エレベーター広告の特性に合わせたクリエイティブを制作
広告出稿期間は7月21日から8月3日までの2週間。この間、GRANDがエレベーター広告を展開しているビルでPeopleXの広告が流れた。
GRANDのエレベーターメディアは、さまざまな動画コンテンツを6分間1セットで流しており、うち4分を広告枠としている。広告動画の上限は15秒。広告枠は1週間単位で販売しており、全ての枠が埋まるとその週は放映できない。
エレベーター広告の出稿を決めた及川氏は、すぐに動画制作を開始した。こだわった点は、「AI面接とはどんなサービスで、どのようなメリットがあるか」を的確に伝えられる動画にすることと、「AI面接といえばPeopleX」を覚えてもらうことだ。
放映尺の15秒はテレビCMと同じだが、テレビCMとは異なり“エレベーターに乗っている時間=視聴時間”となる。広告の再生途中に乗り込む人もいれば、終わる前に降りる人もいる。「限られた時間内で効率良く訴求するためには、エレベーター広告ならではのポイントがあります」と斉藤氏は話す。
「エレベーター広告で流す動画には『L字形画面』という表示方法を推奨しています。エレベーターに乗ったり降りたりするタイミングによっては『動画の最初もしくは最後の5秒しか見られない』という場合も考えられます。L字部分に社名やサービス名を表示しておくことで、どのタイミングで乗降しても見てもらえます。ポイントは、パッと見て記憶に残ることです。PeopleXさまには、社名を『ピープルエックス』と片仮名表記にすることを提案しました。アルファベットに抵抗がある人や、短時間しか見られない状況でも記憶に残る効果が期待できます」(斉藤氏)
動画で訴求したテーマは、「AI面接なら日程調整が不要なので応募者数が自然と増える」というもの。人手不足で採用に悩む人事担当者の関心を引きやすい内容だ。
(提供:PeopleX)
PeopleXは、エレベーター広告の放映と同時に効果の検証方法やセールス部門との連携など社内のプロセスを整備した。GRANDから提供されたテナントリストを起点に対象企業への架電を実施して、「広告で視認して検索を経由する」という自然流入に積極的なアプローチを重ねて受注確度の引き上げを狙った。
出稿直後に大きな反響、指名検索数は“7倍”に
広告を出稿してすぐに成果が表れた。検索数も資料ダウンロード数も大幅に増えた。「資料ダウンロード時に認知経路をヒアリングしたところ、『エレベーター広告』という回答が目立つようになりました」と及川氏は笑顔を見せる。問い合わせ元もメインターゲットに据えていた大手企業が多かった。
藤原氏は「エレベーター広告の場合はあらゆる役職の方が繰り返し視聴することで、テナント企業の中で認知が形成されて問い合わせや検索につながります。放映した週の後半から翌週にかけて数字が上がるケースが多く、今回のように放映してすぐに成果が出ることは珍しいと感じます」と振り返る。
効果のピークを迎えたのは、広告出稿から2週間後のことだ。PeopleXの営業担当者が導入検討中の企業に出向くと、あちこちで「エレベーター広告を見ました」と声をかけられるようになった。及川氏は「届けたい層にエレベーター広告がしっかりリーチしていることを実感できて社内の評価も上がりました。社内で確認したところ、指名検索数はエレベーター広告の実施前後比で7倍近く増えました」と話す。エレベーター広告の視聴をきっかけにPeopleX AI面接の導入を決めた企業が複数社あるという。
B2B領域の認知拡大施策の最終兵器
今回の成功のポイントについて、及川氏は「媒体理解に務めたことが大きかったと思います」と振り返る。媒体の特性や“見られ方”まで研究して事前にエレベーター広告を展開した企業にヒアリングしたことも大きかった。こうした一次情報を持っておくと社内の説明にも役に立ち、その後の効果検証にもつなげやすい。
今回の結果を踏まえて、PeopleXは第2弾の出稿を前向きに検討している。GRANDは、東京、大阪、名古屋の主要なオフィスエリアを中心に放映できる端末の設置数を拡大しており、前回アプローチできなかった企業にも訴求できる可能性がある。
「エレベーターという特殊な環境だからこそ、これまでアプローチが難しかった層に訴求できるチャンスがあると自負しています。現場の担当者から決裁者まで、同じタイミングで同じ情報を訴求できる、部署や組織全体に認知を広げられるのがエレベーター広告の強みです。新しいアプローチを検討している企業はぜひ一度ご相談ください」(斉藤氏)
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提供:GRAND株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia マーケティング編集部/掲載内容有効期限:2025年11月19日