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月次報告180時間が「ゼロ」に パナソニック くらしアプライアンス社が挑んだVoC分析の改革年間3000万件のアクセスをExcelで処理していた(1/4 ページ)

パナソニック くらしアプライアンスのCX事業開発室 CS-DX推進部は、年間約250万件のVoCを効率的に分析・活用する仕組みを構築。月次報告作業にかかっていた180時間をゼロにするという劇的な効率化を実現した。

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 多くの企業が顧客の声(VoC)を収集・分析しているものの「膨大なデータの処理に時間を取られ、本来の分析業務に集中できない」「せっかく集めた声を商品開発に生かしきれていない」といった課題に直面している。

 そうした中、パナソニック くらしアプライアンスのCX事業開発室 CS-DX推進部は、年間約250万件のVoCを効率的に分析・活用する仕組みを構築。月次報告作業にかかっていた180時間をゼロにするという劇的な効率化を実現した。その結果、トライベックの「デジタルサポートランキング 家電分野」 で6年連続1位を獲得するなど、顧客満足度向上も達成している。パナソニック くらしアプライアンスのCS-DX推進部に所属する堀田西五氏(第一課 係長)に、業務変革の全貌を聞いた。


CS-DX推進部の堀田西五氏(第一課 係長)

年間3000万件のアクセスをExcelで処理していた

 パナソニック くらしアプライアンスのCX事業開発室は、顧客体験価値の向上を目的とした組織で、大きく3つの部門で構成されている。

 キッチンCX部では食のサブスクサービス「Foodable」や冷蔵庫AIカメラのサービスを提供し、サービス事業開発部では音声プッシュ通知技術を活用した家電と外部企業との連携サービスを開発している。

 堀田氏が所属するCS-DX推進部では、FAQ・Webサポート、SNS分析、IoT家電を活用したアクティブケア、遠隔診断といった取り組みを通じて、顧客の声を商品開発に活用する業務を担っている。

 「われわれのコンセプトは『困っても解決できる』『困らない商品開発への貢献』『困る前に解決する』という3つの軸でお客さまの声を生かすことです」(堀田氏)

 FAQ・Webサポートは製品使用時の困りごとを自己解決できるサービスで、SNS分析は困らない商品開発に貢献する取り組み、IoT家電や遠隔診断は困る前に事前に通知する取り組みと位置付けている。

 顧客の声の分析には、各媒体から収集したデータが必要だ。CS-DX推進部でもデータの収集・分析を行っているが、長年その膨大な量に頭を悩ませていたと振り返る。例えば、FAQだけでも年間約3000万件のアクセスがあるのだ。

 「1人のお客さまが複数のFAQを見て、それぞれに『(FAQが)役に立った・立たない』という評価やコメントを付けるため、蓄積されるデータ量はどうしても膨大になってしまいます」(堀田氏)

 この膨大なデータを、CX事業開発室では長年Excelで処理していたという。

 「セッションIDで紐付けをしてクロス集計する作業をExcelで行うと、まずExcelの約100万行という制限に直面します。100万行を超えるデータは複数のファイルに分割し、それぞれでクロス分析を行ってからデータを結合する必要がありました」(堀田氏)


CS-DX推進部の堀田西五氏(第一課 係長)

 そのデータ量から、集計するだけでも大変なのが伝わってくる。しかし、それで終わりではない。商品開発へ生かすには、「FAQを見た後の顧客の行動」が重要になってくる。そのため、「どんなコメントを入れて、どういう評価をしたか」まで追跡し、報告する必要があるのだ。

 当時は、4人の担当者が1週間をかけて、集計を行っていた。月約180時間はこの作業に時間をかけていた、と堀田氏は振り返る。時間がかかることにより、商品企画そのものにも影響が出ていた。

 「商品企画やマーケティング部門から『この商品について調べてほしい』という依頼が来ても、手作業のため分析には最低でも2週間ほどはかかってしまいます。しかし、その間に季節やトレンドが変わってしまって、やっと集計が終わった頃には『その情報はもう古い』と言われてしまう、ということも起こっていました」(堀田氏)

 こうした課題を解決するため、同社はどのような改善策に取り組んだのだろうか。

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