月次報告180時間が「ゼロ」に パナソニック くらしアプライアンス社が挑んだVoC分析の改革:年間3000万件のアクセスをExcelで処理していた(2/4 ページ)
パナソニック くらしアプライアンスのCX事業開発室 CS-DX推進部は、年間約250万件のVoCを効率的に分析・活用する仕組みを構築。月次報告作業にかかっていた180時間をゼロにするという劇的な効率化を実現した。
ダッシュボード化で作業時間が「ゼロ」に
同社は2017年にデータ活用プラットフォーム「Domo」を導入し、2022年からダッシュボード化を本格的に開始した。その効果は、まさに“劇的”だったと堀田氏は話す。
「システムにデータを投入することで自動処理され、即座にレビュー内容やECサイトの状況を確認できるようになりました」(堀田氏)
商品企画部門からの要望を受けてダッシュボード化しているため、急な分析依頼にも即座に対応できるようになった。何より大きく効果が表れたのは、“時間”だ。月間180時間かかっていた集計業務が、なんと「ゼロ」になったのだ。
「180時間というのは、データを集計するだけに要していた時間です。つまり、プラットフォームを導入するまでは、ほぼ集計業務しかできていない状況でした。それがゼロになったことで、分析業務に注力できるようになったのです」(堀田氏)
効果はそれだけではない。ダッシュボード化により、データを活用する商品企画部門やマーケティング部門が傾向だけでなく具体的な数値化も可能になり、「より説得力のある商品企画」をできるようになったのだ。
ダッシュボード化の効果は、まだある。データ集計時間がゼロになったことで、チャットボットや有人チャットなど、顧客との接点を拡大できた。
「従来はチャットボットを展開したいと考えても、集計工数が現状の2倍になることを踏まえると、現実的には不可能と判断していました。しかし、月に180時間ほどを要していた業務を自動化できたことで、チャットボットや有人チャットなどへの拡張も支障なく行えるようになったのです」(堀田氏)
これは、顧客満足度の向上にも大きく寄与している。トライベックが実施するデジタルサポートランキング2024では、家電分野で1位を獲得。今回で6年連続の1位となった。
「2017年時点では、ランキングの3位でした。危機感を持って取り組みを始めたことで、良い結果につながりました」(堀田氏)
日々のFAQ・Web改善活動により、FAQ訪問者数は毎年増加を続け、この10年間で電話相談件数の約30倍に達した。顧客の困りごとの種類に応じて適切な情報や窓口を案内することで、顧客自身が「自己解決できる」体験を提供したのが満足度向上につながっているのだろう。
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