いつでもどこでも購入が可能な世界――顧客のインスピレーションとコンバージョンの距離が近づきつつある:「Future Focus 2018」を読む(1/2 ページ)
電通イージスグループのiProspectによる未来予測「Future Focus 2018」から、次世代のマーケターが向き合うべきテーマについて解説する。
モノを購入しようと実店舗まで行っていたおととい。アプリやWebサイトを開いて数クリックで購入できた昨日。 では今日なら? たった一言で良いでしょう。「Alexa、僕の好きなポテチを買って」。そして、明日はきっと、Alexaがこう言います。「毎週ポテチを買っているけど、今週はまだだから購入しようか?」
コマースを取り巻く状況は驚くほどのスピードで変化しています。テクノロジーの進化により、いつでも、どこにいても購入が可能で、かつ商品発見から購買までのプロセスを短くするための手法も出てきています。また消費者の生活を学習して、消費者の欲しいものを欲しいタイミングでレコメンドする技術も進化しています。
ただし、テクノロジーが進んでも、消費者がモノを購入するという行動は変わらず、消費者に自社商品を購入してもらうために活動をするという企業の本質も変わりません。
Future Focus 2018では、多岐にわたる消費者とのタッチポイントにおいて、消費者が商品と初接触(ディスカバリー)して何らかの刺激を受け(インスピレーション)、購買(コンバージョン)を促すための事例を記載しています。
ここでは、Future Focus 2018に記述できなかった「ディスカバリーからインスピレーションとコンバージョンの距離」を縮めた事例について記述します。
「FutureFocus 2018」とは
iProspectでは、マーケティングビジネスのトレンド予測レポートを毎年リリースしています。その2018年版である「Future Focus 2018」(注:外部リンク)においては、2017年末にグローバルのクライアント企業250社を対象に、2018年に彼らの事業が直面する重要課題と、急速に変化し大きな期待を集めるデジタルエコノミーで成長し続けるための優先事項について分析しました。本年度は、以下のトピックスを中心にまとめられています。
- AIと機械学習がマーケティングを変える
- いつでもどこでも購入が可能な世界
- デジタルアシスタントの台頭
- カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)の強化
CRO(コンバージョン率最適化)の原則
顧客の生活は毎日忙しさを極めています。企業のマーケターにとって、いかに最短距離で欲しいものを提供するかを考えることは重要です。
私がこれまでのキャリアで注力した分野にCRO(Conversion Rate Optimization:コンバージョン率最適化)があります。CROの原則の1つは、むだなプロセスを省くこと。コンバージョンへの道を短くできれば、自ずとCVRが上がることになります。
先述したように、テクノロジーの進化で購買までのプロセスを短くするためのさまざまな方法が市場に出てきていますが、一方でカスタマージャーニーはどんどん複雑化していっています。オフラインからオンラインと一方的に流れるだけではありません。オンライン/オフラインの行動は複雑にからみ合っています。さらにいえばオンラインだけでも、ブランドのWebサイトやアプリ、ソーシャルメディア、レビューや比較サイトなど、消費者のタッチポイントは多岐にわたります。
そうした中で、消費者を中心に置き、ユーザーの購買行動をうまく活用して、最短で消費者に欲しいものを提供しようと試みる必要があるのです。
ブランドよりもプラットフォーム
自社のブランドは顧客のロイヤルティーが高いと自負のある会社は、顧客の方から自社を探してやってきてくれると思っているでしょう。
しかし、2017年のマッキンゼーによる研究(外部リンク)では、30のビジネスカテゴリーのうち、ロイヤルティーで選ばれているのは、携帯電話事業者と自動車保険、投資の3カテゴリーだけでした。それ以外は、必ずしも同じブランド・企業の商品を継続して購買するということはなく、その時々で変わってしまう可能性が高いという傾向が見られました。
ブランドへのこだわりが強く表れると考えられるアパレルもその一つです。つまり、多くのビジネスカテゴリーで消費者は、複数の選択肢から欲しいものを選択して、購入するという行動を起こします。
この消費者ニーズをすくい上げているのが、Amazonや楽天といった第三者のイーコマースプラットフォームです。消費者は、これらのプラットフォームを利用することで、欲しいものを素早く見つけ、選択して、簡単に購入することができます。消費者にとっては最短距離で欲しいものを手に入れる有力な方法です。
企業側はこれらのプラットフォームをうまく活用できているでしょうか。爆発的に拡大しているAmazonを例にとって考えてみましょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 顧客企業のAmazonチャネルシフト支援サービスを強化:オプト、Amazon専門部署を設立
オプトは、企業のAmazonチャネルシフトを支援する専門部署「Amazon戦略部」を新設した。 - 「Future Focus 2018」を読む:Amazon Echoが切り開く未来にマーケターはどう対応すればいいのか
新時代を生き抜くマーケティングコミュニケーションとはどういうものか。iProspectの未来予測「Future Focus 2018」から考察する。 - 今日のリサーチ:「Amazon Prime Day」の期間、米国の大手EC売り上げが54%増加――アドビ調べ
アドビは、「デジタルドルレポート(Digital Dollar Report)」で、米国におけるオンラインショッピングのトレンドを公開しました。 - 今日のリサーチ(「調査のチカラ」より):10代はAmazonで20代はZOZOTOWN、全体では楽天――EC利用者の傾向をジャストシステムが調査
ジャストシステムの調査から、今どきのEC利用者の傾向を紹介します。