第5回 (前編)パタゴニアの店舗は「地域のギフト」――ただモノを売るだけでは終わらない:【連載】ブランド戦略としての「学びのコミュニティ」
東京丸の内に期間限定ストアをオープンしたパタゴニア。“Don’t Buy This Jacket”キャンペーンに代表されるように、アウトドアスポーツの魅力のみならず、自然環境の大切さや大量消費経済への警鐘をメッセージとして発信する人気ブランドだ。そんな同社が積極的に展開する“ストアイベント”の狙いを、同社 日本支社長 辻井隆行氏に聞いた。
廣部 先日、丸の内店で開催された2つの“ストアイベント”に参加させていただきました。1つは、ランイベント(現在も月2回開催)です。朝7時に仲通りの丸の内店に集合して、皇居周りをゆっくり走ったのですが、リフレッシュできました。
辻井 北の丸公園にも行かれました?
廣部 はい。都会のオアシス的な北の丸公園を紅葉の時期に散策して、季節を感じられたのは非常に良かったです。実は、個人的にも皇居ランは実施しています。ただ、ランイベントで行なったような寄り道はなく、ランイベント当日はパタゴニアらしい遊び心を強く感じました。
辻井 おそらく、当日は、私たちのスタッフがお話していたかと思いますが、あのランイベントは『大都会でのアウトドアの楽しみ方』をテーマにしています。
廣部 丸の内から少し歩けば緑がたくさんありますよね。素直に感激しました。
辻井 実は、丸の内は以前からずっと出店したい場所でした。私たちのミッションである“地球環境に最小限の負荷で、最高品質のアウトドアウェアをご提供したい。そしてビジネスを使って環境危機を解決したい”という想いを、日本のビジネスシーンをリードする方々にコミュニケートできる場所が必要だと感じていました。丸の内には、金融、商社などの会社員の方で、スポーツをコアに継続なさっている方が多くいます。今まで丸の内で気軽にアウトドアウェアを手に取ることができる場所がなかったので、その役割を担いたいと考えています。
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