マーケティングに疎かった巨大BtoB企業がソーシャルメディアで人気になった理由:古い企業体質も変わる?(2/2 ページ)
巨大コングロマリットであるマースクグループのコンテンツとして顕著な特徴がひとつある。それは、個々のグループ社員を通してビジネスやサービスを語っていることだ。
とはいえ、すぐにソーシャルメディアを使ったマーケティングが功を奏したわけではない。特に、社内の経営層から「ソーシャルメディア」自体に対する理解を得るのに、グラハム=バーン氏は大変苦労したそうだ。例えば「社内コラボレーション利用のために、LinkedInに登録して下さい」と社内通達を出す場合、「そんなことをしたら、全員退社してしまう」と反対するほど、ソーシャルメディアやデジタルツールの導入に懐疑的だったそうだ。マースクグループには、良くいえば「サービスやビジネスの品質を良くすれば、顧客は付いてくる」と考えている、やや頭の古い企業体質があった。
しかし一方で、一大コングロマリットならではの弊害が出てくる。例えばグループ同士横連携を取っていれば、ビジネス価値を高められるし、新規市場開拓の際のキーマンにもすぐコンタクトできる。提案できるソリューションの幅も広がる。そうしたシステム的にも事業的にも縦割りになっているため、そうした情報連携に課題があったようだ。実際、2011年にSharePointやPodio、Jiveといったコラボレーションツールやソーシャルビジネスソフトを利用し、グループ同士の情報共有を促進させたところ、大きな改善が見られた。またセールスフォース・ドットコムのChatter機能などを利用し、セールスチームのパフォーマンス底上げと情報共有も促進、「ソーシャルメディアソフトを利用し、営業のパフォーマンスを一気にグローバルレベルまで引上げました」とグラハム=バーン氏は語る。
今後の展開として、同氏は「グローバルレベルのコンテンツプロバイダーとなり、引き続き一貫して社員の声を届けていくことはもちろん、その地域に即したビジネス能力についてもアピールしていきたいと考えています」と答えている。旧態依然とした慣習が残る巨大BtoB企業でも、たった数年でソーシャルメディアを利用したマーケティングやビジネスパフォーマンスの向上を達成した。ソーシャルメディアソフトを利用し、マーケティングや営業を改善していくヒントは、社内に多数潜んでいるのかもしれない。
※本記事は、MIT Sloan Management ReviewのWebサイトに2013年7月16日に掲載された記事“Turning a “No Comment” Company into a Social Media Advocate”(「“沈黙の企業”がソーシャルメディアの提唱者に大変身」)を基に加筆/編集したものです。
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