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音声の時代に起きること――電通イージス・ネットワーク iProspectのエキスパートが語るモバイルファーストからボイスファーストへ(1/2 ページ)

ボイス事業の世界トレンドと今後の展望。

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 2019年5月31日、アマゾンジャパン協賛でAlexaエージェンシーと音声認識技術に関わる企業9社が共同で「VoiceUI Show 2019 Spring」を開催した。ここでは、企業におけるボイス(音声)によるユーザーインタフェース(以下、VUI)の活用事例やAmazon Alexaのスキル開発に関する気付き、そしてVUIが切り開く未来についての知見が共有された。

 本稿ではその中から、電通イージスグループのiProspectでボイス事業を担当するネイト・シュリラ氏(Global Director of Commerce & Voice)の講演内容を紹介する。

 シュリラ氏は日本在住歴8年、Webサイトの解析やコンバージョン率最適化などWebマーケティング業務に従事してきた。現職ではコマース事業の拡大を図る一方で、次の成長領域として期待の高まるVUIを軸にした取り組みにも深く関わっている。

 テキストとグラフィック中心のUIからVUIに代わると、マーケティングコミュニケーションの在り方は一変する。音声検索の順位向上(Voice SEO)や音声データのローカライズ、「Amazon Alexa」「Google Assistant」など各種デジタルアシスタントの最適化と、さまざまな対策が新たに求められることになる。

 現状、世界においてボイスはどこまで普及しているのか。日本ではこれからどうなるのか。


iProspectのネイト・シュリラ氏

VUIへのニーズは世界的な高まり

 iProspectは1996年に米国で創業。インターネット黎明期からSEM(サーチエンジンマーケティング)やSEO(サーチエンジン最適化)に着目して事業を拡大し、世界的なサーチエージェンシーとしてポジションを確立した。その後、業務内容も活動エリアも世界へ拡張し続け、2003年には日本法人であるアイプロスペクト・ジャパンも設立している。また、現在では電通の海外本社である電通イージス・ネットワークグループに名を連ねる。

 そんなiProspectが近年注力しているのがボイス事業だ。その背景には同社が毎年全世界の顧客1万人を対象に実施している調査から浮かび上がった課題がある。この調査で「重要視している課題」として2018年と2019年の2年連続で2位を占めているのがボイスなのだ。ちなみに調査結果の1位は、2018年度が「ビッグデータの活用」、2019年度が「巨大マーケットプレースへの対応」だ。

 iProspectがこの調査結果をベースにまとめた未来予測「Future Focus」によると、2020年までにサーチの半分は音声経由で行われるという。また、音声によるデジタルアシスタントへのアクセス手段を尋ねた米国の調査(2018年)では、スマートスピーカーの採用率は11歳未満と45歳以上で高くなっている。中でも11歳未満では98.9%となっており、スマートフォンの利用率が低い世代において普及が進んでいるのだ。他にも、読み書きが困難でPCやスマートフォンを活用しにくい人や、ネットの普及途上にある国や地域の人にとっては、初めてネットに触れるのがスマートスピーカー経由になることも十分にあり得る。

 「例えばインドネシアでは最近スマホの普及率が上りつつあるが、ボイスの利用率も同じぐらいの勢いでアップしている。現在の『モバイルファースト』マーケットは今後『ボイスファーストマーケット』になっていくだろう」とシュリラ氏は語る。

日本におけるボイスの現状

 日本における状況はどうだろうか。iProspectがAPAC6カ国(日本、中国、インド、シンガポール、オーストラリア、インドネシア)を対象に実施した調査によると、スマートフォンユーザーにおけるデジタルアシスタントの利用状況は以下の通りだ。

インド 82%
中国 77%
インドネシア 62%
オーストラリア 57%
シンガポール 55%
日本 40%

 上位3カ国はこの30年ほどで経済や市社会情勢が大きく変化した国であり、その変化の大きさから、新しい技術を受け入れやすい状況にある。一方の3カ国はすでにある程度の生活水準に達した中で新たに入ってくる技術を受け入れるのに時間がかかる。

 シュリラ氏はさらに、日本市場には以下のような特殊性があると指摘する。

  • 使う理由は利便性:VUIを使う理由として日本人で目立ったのが「ハンズフリー」と「手で入力するよりも速い」という機能面での利便性だった。
  • 初期の印象がよくない:日本人の多くは、初めてのVUIをAppleの「Siri」で経験している。Siriが登場した直後は、その精度は実用に耐えるレベルだったとはいえず、がっかりした人も多い。VUIの普及には、この初期の印象を払拭する必要がある。
  • プライベート空間での使用が重要:中国やインドでは、人前で音声入力を使いこなすことは全く違和感がないが、日本ではそうではない。公衆の場でスマートフォンに向かって話していると周囲に奇異な印象を与えると考える人が多い。例がありデート中にスマートフォンで「近くのおいしい店を教えて」と語りかけることは、他国ではスマートな印象で捉えられても、日本では違う。このような文化の違いを踏まえれば、日本ではまず自宅や車といったプライベート空間でVUIに慣れてもらい、利便性を分かってもらう必要がある。

海外ではボイス広告もスタート

 ボイスマーケットの今後の展望について、シュリラ氏は事業者と利用者、両方の視点から語った。

 まず事業者としては、「これからは、Alexaに選ばれることを意識したマーケティングが必要になってくる」という。例えば検索では、これからはボイスサーチへの対策が重要になってくる。また、魅力的なボイスアプリ(スキル)の開発や、普及・利用促進策を打つことも必要だ。

 海外では、ボイス広告も始まっている。ボイス広告は会話形式で利用者とのインタラクションを含む。商品やサービスを一方的に訴求するのではなく、興味の度合いや購買意向、その判断に至った理由も尋ねることができる。ちなみにボイス広告の実験ではCTR(クリック率)が10%台という高い数値も出ており、シュリラ氏もこの領域に大いに注目している。

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