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デジタルエージェンシーが真のパートナーになるために必要なビジネスモデル変革エキスパートが語り下ろすモダンマーケティングの論点(1/2 ページ)

デジタルエージェンシーがクライアントの成果に十分にコミットできていない原因の一つとして、報酬体系の在り方の問題を指摘する的場啓年氏。デジタル広告の世界の異端児が語る、次世代のビジネスモデルとは。

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 デジタルマーケティング業界のトップランナーに、現在それぞれの専門分野が抱える課題と今後の展望を語り下ろしてもらうこの連載。第5回は、iProspect Japanを経て2018年9月にEC特化型のデジタルエージェンシーであるSynclink(シンクリンク)を設立した的場啓年氏が、国内のデジタルエージェンシーと事業者が現状抱える課題と、新しい時代に合った選択肢について語った。

的場さんプロフィール
的場啓年
まとば・ひろとし Synclink創設者兼代表取締役社長。高校卒業後しばらくして個人事業主として飲食やECで創業。2008年から電通グループのサイバー・コミュニケーションズでメディアプランナーとして活躍した後、創業間もないフリークアウトに入社。その後、電通イージス・ネットワークの代表すべきブランドであるiProspect JapanでCCO(チーフクライアントオフィサー)として営業部門とオペレーション部門を管轄。2018年10月より現職。

「コミッション」「フィー」モデルの限界

 全ての広告は最終的には「商品が売れる」ことに結び付いていなければいけない――。これは多くの広告主が考えていることであり、広告主の支援に当たる広告代理店側の人間も同意するところでしょう。しかし、その「本気度」において、広告主と代理店には決定的な温度差があるのではないでしょうか。

 以前、私が担当していたあるクライアントの方から「僕らは必死にものを売っている。でもあなたたちには私たちほどの熱量がない。売り上げが増えなければ私たちは立場がなくなるが、あなたたち自身の売り上げには影響がないからね」という趣旨のことを面と向かって言われたことがあります。もちろん、私自身としては決してそのようなことはなく、反論したい気持ちもあったのですが、一方で、利益構造のギャップからそう思われてしまうのは仕方ないのかなと感じるようになりました。

 これまで、デジタルエージェンシーのほとんどは「コミッション(手数料)」か「フィー(作業報酬)」で利益を得ていました。これらのビジネスモデルでは、クライアントの商品が売れなくても、取りあえず広告を運用すればエージェンシーは利益を得られます。もちろん、ずっと成果が出なければいずれ契約を切られてしまうでしょうが、プロセスを回している間についていえば、その利益構造にクライアントの売り上げは全く関係ないということになります。この構造の違いに、ゆがみがあると考えました。

ゆがみを解消する「レベニューシェア」

 この構造は誰が仕組んだという話ではなく、過去から続く商習慣から生み出されたものです。つまり、枠売りというマス広告のメソッドをそのままデジタル広告にも適用してしまっているということです。

 マス広告においては全ての数値を追うことは不可能なので、売り上げと施策の関係性をシビアに見ようにも限界があります。一方で、デジタル広告の場合は全ての施策について容易に効果検証できます。それなのに広告効果とエージェンシーへの報酬が連動していないのはおかしな話です。

 そのような利益構造のゆがみを解消するために私は2018年10月、新しいエージェンシーであるSyncLinkを創業しました。当社では施策により生まれた利益をクライアントとシェアするという報酬体系を採用しています。いわゆるレベニューシェアモデルです。利益が生まれければ当社の取り分もゼロということになります。つまり、クライアントとエージェンシー側の利害関係が完全に一致し、利益構造のゆがみが解消されるわけです。

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