日本版「FICOスコア」「芝麻信用」となるか? 新生銀行グループ会社が提供する「SXスコア」の可能性:信用スコアがマーケティングにもたらすインパクト(1/2 ページ)
海外では、金融業界で利用されてきた個人の信用を評価するスコアをオープンにして活用する動きが進む。日本でその先駆けとなりそうなのが、新生銀行グループのセカンドサイトが提供する「SXスコア」だ。
従来、金融業界で利用されてきた個人の信用を評価するスコアは、あくまでも金融機関の中に閉じた存在であった。だが、この信用スコアをよりオープンにし、個人が経済活動でより多くの恩恵を受けられるように活用する動きが海外を中心に活発化している。その代表例が、米国のアナリティクスソフトウェア企業であるFair Isaac(FICO)が算出ロジックを開発した「FICOスコア」である。また、最近は中国でも、Alibabaグループが提供する「芝麻信用(ジーマ信用/セサミクレジット)」やWeChatを提供しているTencentの「騰訊征信(テンセントクレジット)」のように、社会インフラとして信用スコアを整備しようとする動きが見られる。
この日本版ともいえるのが、人工知能(AI)を活用したFinTech企業であるセカンドサイトが2018年4月に提供開始した「SXスコア」だ。
日本版「FICOスコア」の開発を目指して
セカンドサイトは、新生銀行グループでコンシューマーファイナンス事業を展開する新生フィナンシャルとデータ解析およびコンサルティングを行うグリフィン・ストラテジック・パートナーズ(以下、グリフィン)の共同出資子会社だ。セカンドサイト設立のきっかけは、無担保カードローン事業を展開している新生フィナンシャルが、FinTechやAIのような次世代の金融ビジネスについてグリフィンに相談したことにさかのぼる。セカンドサイト取締役COO & CAOの高山博和氏によれば、両者が今後の可能性を探る中で、新生フィナンシャルの「個人の顧客データと解析技術のビジネスへの応用」、グリフィンの「データ解析での法人顧客の問題解決の実績」というお互いの強みを生かし、知見をためてソリューションを外部に幅広く展開しようとなったのだという。
法人同士が取引を行うときには、相手のことを知るため帝国データバンクや東京商工リサーチのような信用調査会社のデータを利用する。だが、企業対個人の取引では、それらのスコアに該当するものがない。このため、住宅や自動車のような高額商品の売買においては、取引の度に審査を行わなくてはならず、時間と手間がかかっていた。
データの量と種類の問題もある。メガバンクであれば口座や取引の数も多く、組織の中に多種多様なデータを蓄積しているが、地銀や一般企業は、そうはいかない。それぞれの組織ごとに審査をすると、保有データの差が結果の精度に直結することになってしまう。
高山氏は、SXスコアをリリースするに至った背景として「将来は日本でも米国のFICOスコアに相当するような共通スコアが必要になると考えた」と語る。
グループ内外の豊富なデータを活用
SXスコアは、機械学習に代表される最先端のAIテクノロジーを使った解析環境で算出したものだ。開発に費やした期間は半年程度。SXスコアのモデルは、2018年3月に新生銀行グループの顧客データベースとして開発した「YUIプラットフォーム」の中にも組み込まれており、新生銀行グループでは既にコンシューマーファイナンス業務の与信スコアやマーケティングストアとして活用している(関連記事:「新生銀行、グループ各社の顧客データを一元管理する統合顧客データベース『YUI Platform』を構築」)。とはいえ、SXスコアそのものは、セカンドサイトが最初から汎用的な信用スコアとして独自に開発したものであり、新生銀行グループのために開発した計量化モデルを水平展開しようとしているわけではない。
AIが学習のために使うデータは、新生銀行グループ内で利用許諾を得ているデータとオープンデータなどの外部データに大別される(図1)。算出に使うデータの種類と量の豊富さがSXスコアの特徴だ。
グループ内では、新生銀行の顧客、系列クレジットカード・信販会社のアプラス加盟店の顧客、新生フィナンシャルの利用者と、3社合わせて約1000万人のデータを活用している。新生銀行の店舗網自体は首都圏と関西圏が中心であるが、グループ会社が持つデータを合わせると、全国を満遍なくカバーできる格好だ。気になるプライバシーについても対策を施している。金融機関ではセンシティブな個人情報を扱う。分析のベースになるデータは外部に流出しないよう、基本的に匿名化した上で利用している。
外部のオープンデータも有効に活用する。例えば、ある個人の住所が分かるとすると、その人に関連する13万種類の政府統計データをひも付けることができるというのだ。その人が住む地点の半径数キロメートル以内に住む教師の数、犯罪の数、コンビニの数など、さまざまなデータを結び付け、ほぼ1人の個人を表現できるという。パブリックDMPのデータも複数社のものを使い、常に新しいデータを使いながらAIが個人に関する学習を続けている。
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