データの少ない若い企業が「データドリブン」への変革を遂げるには?――住信SBIネット銀行の事例:「Teradata PARTNERS Conference 2017」レポート(1/2 ページ)
ネット専業銀行としては比較的若い住信SBIネット銀行が、十分なデータの蓄積を持たない中でデータドリブンな企業に変革できたポイントとは何か。担当者が語った。
本稿では、米国アナハイムで10月25日(現地時間)に開かれた「Teradata PARTNERS Conference 2017」のブレイクアウトセッション「How Did a Japanese Digital Only Bank Evolve into a Data Driven Company?」の内容から、設立から比較的若いネット専業銀行がどのように顧客データをそろえ、AIをマーケティングに活用しているかを紹介したい。講演は、住信SBIネット銀行 マーケティング部 デジタルマーケティンググループ 兼 ビッグデータ部 マネージャー 吉田直樹氏が行った。
提携先であるFinTech企業のデータに注目
住信SBIネット銀行は、2007年に創業したネット専業銀行であるが、メガバンクと同様のサービスを提供することを重視しているという特色がある。特に力を入れているサービスは住宅ローンであり、2017年9月末の貸出残高は3兆7787億円に上る。
店舗を持たず、Webやアプリのデジタルだけが顧客接点になることから、同行は先進性の追求に重きを置いている。SBI証券との口座連携や、家計簿アプリを提供するマネーフォワードとのコラボレーションなどの新しい取り組みは、その代表例といえよう。
2000年がネット銀行の設立ラッシュであったことを踏まえると、同行は比較的後発に当たる。吉田氏は、「アナリティクスという観点から見れば、若い銀行は伝統的な銀行と比べてデータの蓄積度が少なく、店舗を持つ銀行のようにお客さまの生の声を直接拾うことも難しい」と話す。もちろん時系列データは時間の経過と共に増えてきているが、自社が持つデータだけでは十分でない。
住信SBIネット銀行がFinTech企業とコラボレーションする狙いはズバリ、各サービスのユーザーデータを集めることだ。
FinTech企業とひと口に言っても、マネーフォワードのような「パーソナルファイナンス」に限らず、「融資」「支払い」「送金」など、さまざまな分野のサービスを提供するベンダーが、グローバルで2000社程度存在する。これらの企業が持つデータは膨大である。そこで、提携を進めて外部データと自社のデータを合わせて自由に分析できるようなプラットフォームを構築しようと考えたのだ。
2016年中頃にはTeradataのデータウェアハウス(DWH)を導入した。現在、DWHにはFinTech企業のデータをはじめとするサードパーティーデータが集められている。
顧客理解を深めるためのコラボレーション
自行の顧客を理解するためのデータを提供してもらうからには、顧客にもインセンティブを提供し、相互に利をもたらすようにしたいというのが住信SBIネット銀行の考えだ。
同行が顧客へのインセンティブ提供のために提供しているのが、「スマートプログラム」である。ここでは、口座預金残高や、提供している金融商品の利用頻度、取引金額などの条件に応じて「ランク」を判定し、顧客は毎月のATM利用手数料を無料にするなどの優遇が受けられる仕組みを提供している。また、サービスを使うとポイントが得られ、ポイントを現金化して口座に入れることも可能だ。
顧客からデータをもらうにも、手間と費用がかからないように、いかにシームレスにやるかが問われる。例えば、資産運用を自動化する「ロボットアドバイザー」の利用者データは、本人認証用のAPIを用意している。また、家計簿サービスのマネーフォワードでもAPI連携で複数口座の統合管理ができるようにしている。
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